福本勤先生からの12/26付けメールを先生の許可を得て掲載します。
内容は、前回(14)に続き、被災地の汚染瓦礫処理方法についてで、広域処理を批判、現地に高効率発電設備付き焼却炉を作って処理すべきと、今年最後の総括をされています。
福本先生に感謝。
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差出人: 福本勤件名: 汚染瓦礫は被災地雇用、交付金受理潤い、電力補充、PRECの為に被災地で処理すべき。拙文シリーズ(15)
日時: 2011年12月26日 9:15:18:JST
セシウム 137Cs等の放射性物質で汚染された可燃性廃棄物の焼却排ガスの処理について(15)
災害可燃廃棄物は、① PREC(≡資源・エネルギー、環境の保全・保護<CO2発生量最小化>、コストの最小化)、② 雇用、③ 交付金受理(被災地潤い)、④ 不足電力補充、⑤ 43都道府県住民受け入れ反対 の上から、 被災地で高効率発電焼却処理 すべき
今年は、3.11以来、大変な年でした。災害廃棄物の処理に関して、政府関係者、有識者検討会(① 災害廃棄物安全評価検討会、② 環境回復検討会)委員、専門家のみならず、一般の方々をも対象にと思って(従って些かクドクドと成るべく平易丁寧に)、いろいろ愚見を述べてきました。
今年の最後として、瓦礫受け入れ反対都民府民が大変多い中、一見人聞きの良い、人気取りの「被災地支援、痛みの分かち合い」と発言しての、瓦礫の43都道府県処理依頼 ➔ 受け入れでなく、被災地での処理こそ被災地潤い、復旧復興に繋がることを含めて、総括的に記したいと思います。
強度、放射線遮蔽効果等が、セメントコンクリートよりも優れていて、より安価で、製造時のCO2発生量極小の硫黄コンクリート(弊社で製法開発済み)の実証試験が資金不足で遅れていましたが、新春早々には目途がつきそうです。硫黄コンは、「137Cs等の放射性物資汚染災害廃棄物」や「Bq/kg数が8,000(埋立作業員の健康に影響が出ない数字)以上の焼却灰」の安全保管に、セメコンよりもズット適しています。
① 福島、岩手、宮城の被災3県で発生した瓦礫・災害廃棄物量は2,300万トン、そのうち福島県内で処理される同県発生量分を除く約2,000万トン、② 災害廃棄物のうち可燃性災害廃棄物の占める割 合を35%としま すと、可燃性災害廃棄物の量は被災3県で805万トン、被災岩手、宮城2県で700万トンになります。
可燃性災害廃棄物の量は805万トンを、そのまま長期貯蔵・保管(仮置き場 ➔ 中間貯蔵施設 ➔ 最終処分場)するのは 非現実的である以上、減量せざるを得ません。
大幅減量の方法として考えられるのは、焼却です。「焼却反対、反対」の声の大きい著名なご婦人は多いのですが、かと言って これら「焼却反対」の方々からは大幅減量の代案は出てきません(出てくるのは精々リサイクルですが、災害廃棄物のリサイクル品に137Cs等の放射性物質が どこまでも くっついて回る恐れがあります。風評被害に会わないとも限りません)。「焼却反対」の主な理由は、「燃焼排ガス中に137Cs等の放射性物資が存在して、それを十分捕集・捕捉できずに、煙突から大気中に排出されるのではないか」でしたし、一部の専門家(?) や 焼却反対者の反対理由は、「137Cs等は、燃焼排ガス中にガス状で存在していて、バグフィルター等排ガス処理装置で捕捉されず、大気中に排出される」でした。
そこで、拙文シリーズ「セシウム 137Cs等の放射性物質で汚染された可燃性廃棄物の焼却排ガスの処理について(1)~(14)」では、主題の一つとしてCsのガス状での存在の可否について論じました。 若しもガス状で存在するとした場合の137Cs等の除去方法としては、① 137Cs等を含む焼却排ガスのバグフィツター通過後、ゼオライトなどの吸着塔で吸着する方法、② 同焼却排ガスは、バグフィルターを通さずに、例えば充填塔などスクラバーに通して 137Cs等の放射性物質を水に溶解してゼオライトなどの吸着塔で吸着除去する方法、について論じました。
そうした中、この問題を基礎理論的に解明し、拙文シリーズ(12)[&(13)] で「焼却排ガス中に137Cs化合物等はガス状では存在しない」を報告しました。
これが高岡らの実証試験でほぼ裏付けられた旨、即ち、「微粒子状137Cs等の放射性物質は、バグフィルターで99.84~100%捕捉される」を拙文シリーズ(14)で報告しました。現在の分析技術の限界から、残念ながら、捕捉効率は99.84%(高岡らのデータ)~100%の間の 何%になるかを確認することは出来ません。安全、万一の観点から、99.84%になっていまが、99.9%以上と思われます。
仮に300Bq/ kg の137Cs等の放射性物質を含む災害廃棄物全部(805万トン)を全部焼却したとした場合に、(100-99.9)%=0.1%の137Cs等の放射性物質が煙突から排出されるとすると、燃焼計算も含めた計算から、177万 Bq の137Cs等の放射性物質が排出されることになります。
177万Bqは、放射能暫定基準値が300Bq/kg =30万Bq / tである牛用の牧草5.9トンのBq数に相当します。
177万Bqは、郡山市 富久山クリーンセンターの2011年9月8日~11日の
ごみ(3,730Bq/kg= 373万Bq/t)の0.47トンのBq数に相当します。
従って、137Cs等を含む災害廃棄物全部(805万トン)を全部焼却したとしても、煙突から排出される137Cs等のBq数は、富久山CCの去る9月8~11日のごみ(373万Bq/t)0.47トンの持つBq数に相当する程度のBq数に過ぎないことになります。
これは、除染後の生活環境内の土壌等々の持つ周辺総Bq数よりも遥かに小さい微少Bq数で、人の健康に影響を及ぼす数値ではないと思います。
但し、これは「災害廃棄物焼却施設が、毎日真面に運転(排ガス中のダイオキシン類[DXNs]濃度が基準値0.1ng-TEQ/Nm3未満になるような運転)される」という条件下での話です。毎日、常時、真面に運転される為には、簡易DXNs濃度連続測定記録監視装置を設置する必要があります。 これについても、この拙文シリーズ(1)~(14)の中で再三詳しく述べています。或いは、完全な第3者による抜き打ちDXNs濃度測定を屡実施しなければなりません。施設の周辺住民が分析業者を選定監視するのも よいかもしれなせん(分析費用は国負担)。
東日本大震災で発生した災害廃棄物を大阪府が受け入れ、大阪府内での処理を、前橋本徹知事(現大阪市長)が去る5月に表明し、松井一郎知事も「被災地を大阪府も支え協力する。被災者の為に受け入れるべき」としています。
東日本大震災で発生した災害廃棄物を大阪府がは 受け入れ・大阪府内でする際の指針を検討する「大阪府災害廃棄物の処理指針に係る検討会議」(座長:山本孝夫大阪大学大学院教授)は、137Cs等の放射性物質の影響を心配して反対する傍聴者の質問が相次ぎましたが、座長らは真面な回答ができず、紛糾した為、座長は会議を1時間で中止にしてしまいました。 松井知事は「会議の進行を妨げるのは問題」と不快感を示しましが、不快感を示すことにこそ問題があります。
一方、政府は岩手、宮城両県の瓦礫の受入れ・処理を43都道府県に、被災地支援・広域処理名目で11年4月に依頼し、4月には572の 市町村・組合が受入れる旨 回答していましたが、住民らの放射能汚染への不安から 11月には 1割未満に激減し、東京都だけは「被災地助け」と称し、都民の猛反対を押し切って、50万トン受入れを決め、12月3日に受入れを開始しました。
筆者はその様子を聞いていて、山本座長ら専門家が、傍聴者の質問にキチンと丁寧に答えようとしない、答えられないことにこそ問題があるように思えました。
あのような質問が出るのは当然であり、筆者なら質問一つ一つに 納得のいくよう丁寧にお答え出来るのに と思いました。専門家の選定に問題があったようです。御用学者を選んだのかもしれません。 これが会議紛糾の原因のように思えます。 山本座長は「痛みを分かち合う」と言っています。普通・一般的には これでよいのですが、この場合 適切な考え・発言とは言えません。座長らは物事の本質・全貌を把握できておらず、技術レベルが低いので、このようなことしか言えないのでしょう。
そもそも、災害廃棄物は 被災地で処理するのが、「遠方への運送に消費する資源・エネルギー、環境の保全(CO2発生量最小化)、コストの最小化、電力不足の被災地での焼却発電、多額交付金確実受け取り、失業者雇用、汚染物質の43都道府県出回り防止等々の点」から、ベストであるのに、「人(被災3県)助け」、「被災地支援」、「痛みの分かち合い」と称して、東京都や大阪府が受け入れるのには(政府は43都道府県の受け入れ希望)大変な憂うべき問題があります。但し、東京都や大阪府にとっては、充分な交付金を確実に受け取れるのでよい という一メリットはあります。
「大阪府災害廃棄物の処理指針に係る検討会議」での議論の処理指針としては、「大阪府は、137Cs等の濃度が200Bq/kg以下の災害廃棄物(瓦礫)の山を被災地で選別後、破砕 ➔ コンテナに密閉 ➔ 大阪へ輸送 ➔ 更なる選別・破砕 ➔ 市町村や民間業者の焼却施設へ運搬 ➔ 137Cs等の濃度が 国の基準(埋立作業員の健康に影響が出ない8000Bq/kg)の1/4以下の焼却灰の埋立」という案が示されています。しかし、被災地での処理の場合よりも相当多くの資源・エネルギー、費用を使って、CO2を発生しながら、遥々大阪にまで運んで処理するのは、資源/エネ・環境保護、コストの上でも、137Cs等汚染範囲拡大の恐れの上などでも問題です。
拙文シリーズ(14)で述べましたように、福島、岩手、宮城の被災3県で発生した瓦礫・災害廃棄物は2,300万トン、そのうち可燃性災害廃棄物の占める割合を35%としますと、可燃性災害廃棄物の量は805万トンになります。
805万トンを、規模が比較的に大きい600t/日[又は1,200t/日]の発電焼却施設で、年間稼働日数が大きい目の300日間 焼却処理しますと、1施設で 夫々
8,050,000t/[(600t/日)( 300日/365日)]=16,324日=44.72年 [1,200t/日の場合22.36年]
かかることになります。
(44.72年/8=5.59 年 38.89年/8=4.861年 22.36年/4=5.59年 19.44年/4=4.86年)
つまり、600t/日[1,200 t/日]の発電焼却施設で焼却処理するとしますと、44.72年 [22.36年]かかることになり、8施設設置すれば、5.59 [2.795] 年で全部の処理を完了出来ることになります。15施設設置すれば、2.98 [1.49] 年、で全部の処理を完了出来ることになります。
発電焼却施設の処理能力が、
600t/日であれば、8施設で 5.59年、15施設で2.98年
1,200 t/日であれば、8施設で2.795年、15施設で1.49年
かかります。
●即ち、600t/日の発電焼却施設であれば、15施設によって3年で、1,200 t/日の同施設であれば、8施設によって2年10ヶ月で、 可燃性災害廃棄物 805万トン全部の処理を完了出来ることになります。300t/日であれば、30施設によって3年で処理を完了出来ます。
805万トンを3年間、発電効率23%で焼却発電するとしますと、発電の観点から
① 大阪市舞洲工場ごみ焼却施設(発電能力 3.24万kW。450t/d×2炉。発電効率 20% 。年間総発電量 9,534万kWh) : 32施設
② 東京都新江東清掃工場ごみ焼却施設(発電能力5万kW。600t/d×3炉。発電[効率:15~17%]+熱供給[植物園、水泳場、体育館]。年間総発電量 13,900万kWh):29施設
に相当する発電を 3年間することが出来ます※1)。 日本の原子力発電所の大きい目の発電機1基の3年間 運転に相当する電力が得られることになります。
※1)こういう書き方をせざるを得なかったのは、発電能力A万kW✕365日✕24時間(h)/日=B万kWh(年間総発電量)から得られる年間総発電量B万kWhを用いますと施設数はもっと少なくなる筈ですが、発電焼却施設、その使用者やメーカーの現状を考慮せざるを得なかったからです。
可燃性災害廃棄物805万トンの処理を完了後は、被災3県に多い古い焼却施設の代わりに使えばよいと思います(被災3県の支援にもなります)。 これを考慮して、上記発電焼却施設の計画、建設をすればよいと思います。
「被災地支援」と称して、住民の不安・反対をものともせずに、事の真相、あるべく姿を弁(わきま)えない野田、細野両人が、全知事に頼んでいるような「瓦礫を43都道府県に遥々運んでの処理」はせずに、被災地で高効率発電焼却処理するのが、記述のあらゆる観点から、ベストと考えられます。
● 以上を要するに、これまでに大阪府に提出された1万件を超える意見の殆どは受け入れ反対という中で、東京都でも多数住民の受け入れ反対の声が大きい中で、「人(被災地)助け」、「被災地支援」と称して、東京都は瓦礫を既に受け入れ、大阪府は受け入れようとしていますが、上記のように、被災地での瓦礫処理が、① PREC(≡資源・エネルギー、環境の保全・保護<CO2発生量最小化>、コストの最小化)、② 電力不足の被災地での焼却高効率発電、③ 失業者雇用、④ 交付金受け取り(被災地が潤う)、⑤ 汚染物質による受け入れ地汚染の懸念の皆無化 等々の点から、国家的観点からも、ベストであるのには 間違いありません。2知事は、「被災地支援」と称して、瓦礫受け入れが善意善行のような発言をしていますが、受け入れ都道府県のメリットは交付金が確実に入ることだけです。多数住民の反対を押し切って実施するようなことではありません。橋本徹前大阪府知事、現大阪市長の考えには、これまで全面的に賛同してきていますが、瓦礫受け入れだけについては、府民の不安を無視した「いいかっこし」を考え直して貰わざるを得ません。上記のようなことを キチンと考えていなかった観があります。
被災可燃瓦礫は、筆者が3.11後、提言し続けてきていますように、上記 ①~⑤の点から、被災地で高効率発電焼却しながら減らして無くすのに限ります。高効率発電焼却施設の計画建設に1~2年は掛かりますが、建設後は計画的に、3年間計画なら3年間で、被災可燃瓦礫の焼却を終了できます。 筆者が最初提案した頃に計画製造に着手していれば、後1年程度で焼却発電できるようになっていた筈です。
43都道府県に 処理を受け入れて貰える当てもなく、頼んでいたのでは、又これまで国がやろうとしてきたことが ズルズルと 大幅に遅れてきていること を考慮しますと、細野環境相自身が「このような(受け入れたのは東京都だけの)状況では3年以内の災害廃棄物の処理終了は見込めない」と言っているように、処理が何時終了できるか分りません。
PREC(≡資源・エネルギー、環境の保全・保護<CO2発生量最小>、コストの最小化)、被災地の失業者雇用、交付金受け取り(➞被災地潤い) 、焼却高効率発電、3年以内の処理完了の為に、例えば、600t/日の高効率発電焼却施設であれば15施設、1,200 t/日の同施設であれば8施設を、被災3県内に可及的速やかに設置することを提案します。
以 上
2011年12月19日(大安) 福本 勤
(財)環境技術実践機構 理事
日本サステナ㈱取締役 環境保全工学研究所 代表
中国 清華大学 客員教授
京大工博 福 本 勤
環境保全工学研究所 〒658-0001神戸市東灘区
森北町4-15-16 TEL:078-411-9606
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