福本勤先生からの11/18付けメールを先生の許可を得て掲載します。
福本先生に感謝。
ーーーーーーーーーーーーーーーー差出人: 福本勤
件名: Cs化合物等はガス状では存在しない。焼却施設の所定運転不履行➡連続記録監視装置の焼却施設付設不可欠。高効率発電
日時: 2011年11月18日 13:20:45:JST
テキスト形式で受信の方へ:以下の拙文をコピーしたWord(太字、大小字記載)を添付しています。
セシウム 137Cs等の放射性物質で汚染された可燃性廃棄物の焼却排ガスの処理について(12)
137Cs化合物の凝縮、微粒子化等の基礎理論・原理・メカニズム・現実
汚染可燃性廃棄物の
焼却排ガス中に137Cs化合物等はガス状では存在しない
しかし、年1日以外の毎日は
焼却施設の所定運転不履行の為137Cs化合物含む微粒子含有排ガス排出
➡連続記録監視装置の焼却施設付設不可欠
1. 総括
汚染可燃性廃棄物は焼却して高効率発電するのが最も望ましいのですが、「セシウム137Cs、134Cs等放射性物質が焼却施設の煙突からガス状で放出される」と主張する焼却反対の方々が相当数おられます(添付の満田正先生との意見交換ご参照)。果たしてそうなのか について、実験による確認を環境省に提案してきていますが、環境省は未だに信頼性のあるキチンとした真面な実験に着手していません。信頼性に乏しい実験結果に基づいて、後記の環境省有識者委員会で、記録にありますように 長々と討議して国の方針が決められているのは どうか と思っています。
致し方なく、2項のように理論的、経験的 考察を行ないました。 考察結果は、「137Cs等や137Cs等の放射性化合物は燃焼排ガス中にガス状では存在しない、殆ど存在しない。念の為実験的確認は必要」です。 従って、平成9~14年に全国的に改造されたままの完備した焼却施設で、 137Cs等汚染廃棄物を 適正に運転して焼却すれば、137Cs等やその化合物(放射性)が大気中に排出することは先ずはありません(詳細:後述)。
しかし、筆者の経験から、或いは客観的事実から、かなりの焼却施設が、毎年365日のうちの1日を除けば、必ずしも適正に運転されていないことが分っています。その根拠・証拠もあります。従って、斯かる焼却施設の多くでは、年1日以外の毎日は ① 排出基準値以上のダイオキシン類(DXNs)や ② 検出下限値濃度以上の137Cs等の放射性化合物、を含む排ガスが煙突から放出されています。 そこで、四六時中適正に運転されているのかどうかを連続的に即時記録する監視装置(市販)の設置を、各焼却施設に義務付ければ、137Cs等化合物もDXNsも、現在のように、煙突から排出されることはなくなります(DXNs濃度が基準値を超えれば焼却施設運転停止命令が下りますので)。 DXNs濃度が排出基準値未満であれば、137Cs等化合物濃度も検出下限値未満になります(詳細は後記。137Cs等については 排出基準値は法令で設けられていません)。
8、9年前に開発実用化済みの「DXNs濃度簡易連続測定記録監視装置の焼却施設への設置」を環境省が義務付ければ、DXNs濃度が基準値未満になるように毎日運転される筈であることから、筆者は、同義務付けを環境省に提言してきていますが、未だ義務付けられていません。筆者は、学会、雑誌、小著書でも、またNEDO等の協力も得て、環境省に 同義務付けを再三提言しましたが、同省は「DXNs問題は鎮静化している。寝た子を起こすようなことはしたくない」と言って義務付けを未だにしていません。
ところが、3.11以後、セシウム137Cs等の問題が出てきましたので、確か平成23年9月12日発足の環境省環境回復検討会委員の森口裕一東大教授らに説明し(実はそれより かなり前から説明し)、ご賛同を得た結果、「DXNs濃度簡易連続測定記録監視装置の全国焼却施設への設置」の義務付けが実現しそうになってきました(詳細:後述)。
この拙文に対して、何なりと、ご意見をお寄せ下さい。
2.137Cs等はガス状では煙突から放出されない(煤塵としても)
2a. 身近なNa、NaClはガス状で排ガス中に存在し得ない
さて、先ずはアルカリ金属の中で、我々に最も馴染みのあるNa、NaClについて 始めたいと思います。
「元素の周期表」で、1族の元素は、原子量・原子番号の小さい元素➡大きい元素の順に、H、アルカリ金属Li、Na、K、Rb、Cs、(Fr) ですが、このうち 我々に最も身近な食塩(NaCl)のNaを例に取りますと、NaとCl2とが出くわすと、陽性の強い原子Naは 電子を放出してNa+になるとともに、陰性の強いClは 電子を取り入れてCl—になり、両者は激しく反応してNaClになります。 陽イオンNa+と陰イオンCl—とは 両者間に働くクーロン力/静電気力※1)によって、強く結合します(イオン結合します)。 生成Na+とCl—とは、Ne、Ar、Krなどの希ガスと同様の電子配置となります。
Na+とCl—とは 独立した別々のイオン状態での存在時は エネルギー的に最も不安定な状態であり、多数のNa+とCl—とが集合して イオン結晶になった時が エネルギー的に最も安定な状態にあります。 Naや NaCl は ガス状では存在しません。
←左(上)ほどポテンシャル(=移置)エネルギー大(不安定) ← Na+(気体)とCl—(気体) ← Na(気体)とCl(気体)← Na(固体)+(1/2)Cl2(気体) ⇒NaCl結晶(安定)
⇒右(下)ほどポテンシャル(=位置)エネルギー小(=安定)
※1)電荷の片寄りのない2原子分子(例:H2、Cl2)のような分子は無極性分子。HClのように、共有結合/分子に電荷の片寄りがある状態は、その結合に極性があると言い、結合に極性があって、分子全体として極性を持つ分子を極性分子と言います。極性分子(例:HCl)の間には、分子の極性に基づく静電気力、即ち極性引力が働いています。
一方、分子間に相互作用が働かないと考えられるN2、O2、CO2などの無極性分子でも、冷却していきますと液体や固体に変化します。このことから、無極性分子の間にも何らかの弱い引力が働いていると考えられています。極性、無極性を問わず、全ての分子間に働くこの弱い引力をvan der Waals forceと言います。van der Waals forceは、固体や液体の場合のように、分子が極めて近い距離にあるときには有効に働きますが、分子間距離が大きい気体の場合には殆ど0になります。
例えば、分子間距離が2倍になると、van der Waals 力は1/26=1/64に急減します。van der Waals 力はイオン結合(化学結合)の大略1/100程度の小さい引力ですが、万有引力よりも桁違い大きい力です。
2b. 137Cs、 Cs化合物もガス状で排ガス中に存在し得ない
以上の ナトリウムNa+ についてと同様のことが、東京電力福島第1原発事故で原子炉から漏れ出てきたセシウムCs+ についても 言えます。
Cs(融点28.5℃(金属単体の中では水銀に次いで低い、沸点705℃(蒸発熱67kJ・mol-1) )は、その上、 アルカリ金属の中で反応性に最も富み、速やかに多数のCs+(直径 0.3 ~ 0.4nm.程度)と相手分子・化合物(O2、H2O、CO2、HCl、SO2)とが集合して多数の化合物CsCl 、Cs2O、CsO2、CsH、CsOH、Cs2SO4 、Cs2CO3(アルカリ雰囲気)等々に反応変化し、クーロン力(静電気力。陽イオンと陰イオンとの間に働く力)・化学結合力※2)、分子間力 ※3)によって くっ付き合って(凝集/凝縮して)、0.001μmを超える微粒子になります。0.001μmを超える微粒子はバグフィルターで殆どが捕集されます(図1)。
※2) 化学結合は 共有結合、イオン結合、金属結合、配位結合の4種類に分類されます。
※3) 分子間力:①極性引力(極性分子[例:HCl]の間に働く分子の極性に基づく静電気力。分子間に相互作用が働かないO2、N2、CO2等の無極性分子でも、冷却していくと凝縮して液体や固体に変化します。無極性分子の間にも弱い引力が働いている)、 ②van der Waals力(極性、無極性を問わず全ての分子間に働く弱い引力)、③水素結合(O-H・・・O、X-H・・・YでH・・・O、H・・・Yが水素結合。O-H、X-Hは部分的にイオン性をもつ共有結合) 等の分子間に働く引力の総称。水素結合の強さは化学結合力より相当に弱いが、van der Waals力よりは大きい。
因みに、「化学辞典」によると、原子の直径は、おおよそ 2~4 × 10—10m (= 0.2 ~ 0.4nm. = 0.0002~0.0004μm { 原子の半径は、おおよそ1~2×10—10m(=0.1~0.2nm.= 0.0001~0.0002μm } です。
原子炉から、常温雰囲気の大気中に出てきたCs+(直径0.35nm程度)は、反応・結合の相手になるもの、化合物が、考えにくいことですが、その周りに、若しもないか あっても極僅少の場合、例えば土壌や草木の葉っぱ等があった場合 土壌や葉っぱ等の表面などに、くっつくかもしれず、吸着されるかもしれず、雨が降れば水に溶けて流されていくかもしれない ということを完全には否定できません。Cs+化合物微粒子は大部分 それらにくっ付いているでしょう。Cs+化合物やその微粒子が、土壌などの除染で出る廃棄物にくっついていれば、市町村、地域ごとの仮置き場で3年間程度保管され、その間に福島県内に建設される予定の中間貯蔵施設に数十年程度貯蔵されることになりそうです(環境省工程表による)。 Cs+化合物やその微粒子が、草木の葉っぱなどに くっついたまま、回収されて焼却施設で焼却されれば、排ガス構成成分は、O2、CO2、H2O、HCl、SO2以外に 雰囲気条件次第でCsCl 、Cs2O 、CsO2 、CsH 、CsOH 、Cs2SO4 、Cs2CO3などの幾つかになり、これらの化合物は分子間力や化学結合力、および場合によっては弱いvan der Waals力で10個程度以上集合(凝集、凝縮)して0.001μを超える微粒子になります。 0.001μを超える微粒子は バグフィルターで殆どが捕集されます(図1)。Cs、CsCl 、Cs2O 、CsO2 、CsH 、CsOH 、Cs2SO4 、Cs2CO3などの1~数個の原子、化合物からなる集合体がガス状で排ガスに含まれてバグフィルターを透過する(通り抜ける)ことは まずありません。 Cs、CsCl 、Cs2O 、CsO2 、CsH 、CsOH 、Cs2SO4 、Cs2CO3などの1~数個の原子、化合物からなる集合体が ガス状で存在するのかどうかは分りません。 Cs、CsCl 、Cs2O 、CsO2 、CsH 、CsOH、Cs2SO4 、Cs2CO3などの1原子、1分子、1化合物が、10個程度以上集合(凝集、凝縮)して0.001μを超える微粒子になる過程は(その過程で液体微粒子が生成するのかどうかなどは)明らかでありません。凝縮には、一旦液体になるであろう過程も固体になる過程も含まれますので、先ずは液体微粒子が生成し、続く過程で固体微粒子に成長するのかもしれません。 蒸発・凝縮過程は、分子間力によって起こる過程です。
例えば、塩化セシウムCsCl は、気相反応でCs+とCl – ができ、その間の静電相互作用(静電引力)で集まって凝縮します。凝縮の過程で、他の化合物と衝突、合体、成長して より大きい微粒子に成長するのかもしれません。 分子やイオン間に相互作用(引力)があると、集まって液体粒子や固体粒子になります。
水分子の直径は0.33nm程度、Csの直径は0.35nm程度ですが、分子間力、化学結合力、弱いvan der Waals力などによって、或るCs 化合物が凝縮しつつ それだけで粒子状物質になるのではなく、水分子やイオンと結合して核を形成し、あるいは他の粒子状物質に取り込まれ、20~30個程度で1nm、1000個程度で3nm、10万個程度で10nm程度の大きさになり、バグフィルターの繊維にくっ付くのではないかとも 考えられます。 種々の考え方から 粒子状物質形成の真実を模索中です。 何れにしろ、バグフィルター出口のガス分析で、Csが検出されるかどうかは 確認が必要です。
3.137Cs、 Cs化合物の凝縮―微粒子捕集メカニズム
2bで述べましたように、原発排出137Cs、 Cs化合物は凝縮して微粒子になります。
また、2bで少し触れましたように粉体工業技術協会の実験(ほぼ球形粒子とみなされる標準粒子使用)の結果によると、7種の市販バグフィルター用濾布の何れについても、粒径が小さくなるほどブラウン拡散捕集機構※4)によって 集塵効率が高くなり、特に数十ナノ(数10nm)以下では、ほとんど(99%以上)捕集されますが、 100nm~300nm 【0.1μ~ 0.3μ】辺りでは集塵効率が最小になって50%程度になります【図1】。 それより大きくなると、集塵効率は、さえぎりとか慣性とか言われる捕集機構によって上りますが(データはありませんが理論的には確立されています)、清浄濾布(濾布外面の捕集付着粉塵堆積層のない清浄濾布)だけでは HEPAの集塵効率よりはるかに劣ることが判っています江見準)。
ここで示した個数は、水分子(直径0,33nm)を規則充填したときに、それぞれの直径になるまで何個充填できるか、の概略の数値を示したものです。水分子の数値ですが、Csの直径(約0.35nm)に近いので、Csも同じ程度と判断しました。ナノサイズの粒子が これだけの数の分子で構成されていれば、van der Waals 分子間引力でフィルター繊維に付着するのではないかを示すものとして、この数値を挙げてみました。
各化合物に対する20~30個程度、1000個程度、10万個程度の値は、それらのサイズによって決まるのではないかと思われます。
ただ、今の場合、特定の化合物だけで粒子状物質になるとは考えにくく、水分子やイオンと結合して核を形成し、あるいは他の粒子状物質に取り込まれて、最終的にはほとんどがバグフィルターなどで捕集されるのではないかと思われますが、これが事実かどうか、バグフィルター出口のガス分析で、Csが検出されるかどうか調べる必要があります。
※4)ブラウン拡散捕集機構:ランダム運動する粒子の飛距離が粒子が小さくなるほど長くなり、フィルター内部で個々の繊維に当たりやすくなるために、捕集効率が上る現象. 0.5μm以上の粒子はランダム運動することなく、フィルター内部の個々の繊維周りの流れに乗って移動するので、ブラウン運動のメカニズムは働きません。代わって、さえぎりとか慣性のメカニズムが粒径が大きくなるにつれて働き始め、捕集効率が上昇し始めます。
しかし、バグフィルターは、通常の運転条件では、捕集粉塵が常に ある一定量堆積しているために、堆積粉塵による捕集効果が大きく、これまでは100%捕集されるものとみなし、圧力損失と払い落とし特性のみが注目されて、 図1のような粒径別の捕集効率のデータは ありませんでした。
最近、粉体工業技術協会で、ナノ(nm)粒子の暴露防止対策の ガイドライン作りの一環として、バグフィルターに使用される清浄濾布によって ナノ粒子がどの程度捕集されるかを把握する為の実験が実施されました江見準)。
添付の2つのデータ(図1と図2)は その結果の一部です。これによりますと、7種の市販バグフィルター用濾布は 何れも粒径が小さくなるほどブラウン拡散捕集機構により、集塵率が高くなり、特に数十nm以下では、ほとんど(99%以上)捕集されますが、100nm~ 300nm【0.1μm~0.3μm】辺りでは集塵率が最小になって、50%程度に留まり、それより大きくなると、さえぎりとか慣性とか言われる捕集機構によって集塵効率が上ります(データはありませんが理論的には確立されています)が、清浄濾布だけでは HEPAの集塵率より 遥かに劣ることが判っています。
しかし、上記のように、バグフィルターの場合、通常の運転条件では、捕集粉塵がフィルター外側表面上に常にある一定量堆積しているために、堆積粉塵層による捕集効果が大きく、これまでは100%捕集されるものとみなして、圧力損失と払い落とし特性のみが注目され、図1のような粒径別の捕集効率のデータはありませんでした。
そこで、工場の製造工程などで、ナノ粒子がアスベストのような危険な物質であった場合、大気への放出を未然に防止する必要があり、そのためにもバグフィルターが今注目されています。 この場合、廃棄物焼却排ガスと違って、粉塵濃度がそれほど高くないために、濾布の性能そのものが問題になることから、濾布の性能についてのデータ (図1 2011年10月 20日発表)が、最近 粉体工業技術協会で、採取されました。 廃棄物焼却排ガスは、バグフィルター入口濃度が、上記ナノ粒子用バグ入口濃度と比べて遥かに高くて、堆積粉塵の量が多く、100nm(0.1μm)であっても、粒子状物質であれば、ほぼ完全に除去されるのではないかと思われます江見準)。
廃棄物焼却排ガス中に、ガス状のセシウムCsやセシウム化合物 CsCl 、Cs2O 、CsO2、 CsH、CsOH 、Cs2SO4 、Cs2CO3等が、もしも無視できない程度以上に含まれていれば、バグフィルターだけでは、セシウムCsやセシウム化合物を十分除去出来ないことになります。従って、以前から、環境省災害廃棄物安全評価検討会委員ら、大地震災害・原発事故対応担当馬淵澄夫 前首相補佐官、南川秀樹 環境事務次官らに、これを実験で確かめるように、助言,提言してきましたが、未だに真面なキチンとした実験が行われていません。
但し、環境省災害廃棄物安全評価検討会配布資料として「資料4」と「資料6-3」とがあります。しかし、両者とも本来目的に合った真面な実験の結果報告書とは言い難い報告書になっています。資料6-3の報告書「一廃焼却施設の排ガス処理装置におけるCs、Srの除去挙動」【報告書作成年月日不明。京大高岡昌輝教授。「採取日:2009年秋。採取場所:A自治体、300t/dayのストーカ炉」との不備記載あり。この報告書提出日の2年前のCs、Srに関するデータ採取の目的・理由不記載】に記載の表1 Cs濃度結果によると、どうもスッキリしないのですが、0.014μg/Nm3のガス(筆者の計算によるとCs化合物固形微粒子を含む全Cs&Cs化合物の0.13%。粒子状のCsの含有率は99.87%)が廃棄物焼却排ガス中に含まれていたようになっていますが、0.13%のガスの組成の記載がなく、再現性、信頼性のあるデータなのかどうかは不明です。この点について、2011年11月4日の廃棄物資源循環学会の意見交換会で高岡教授に質問したところ、後で調べて返事するとのことでした。未だ返事はありません。
それは兎も角、Csが浮遊粉塵にくっついているか、或いはそれ自身が粒子状物質になっていれば、ほぼ完全に捕集されるものと考えられます。もしバグフィルター出口でCsが多少とも検出されるようであれば、Csが多少ともガス状のまま存在していることになります。
しかし、運転経費節減等々の為に、活性炭、消石灰等薬品や灯油・A重油等の供給をしなかったり、破損フィルターの交換をしなかったり、廃棄物焼却排ガスを、バグフィルターを通さずにバイパスを通して煙突から放出していたり、等々の不適正/不法運転をしている場合が往々にしてあります(煙突出口の煙を見るだけではDXNs排出の有無は分らないので、斯かる不心得者が相当数存在することになります)。
ところが、環境省は そんな不心得者はいないとの性善説を採るばかりで、毎年1回1日の測定結果(知事への報告結果)を環境省が集計した「全国廃棄物焼却施設からのダイオキシン類(DXNs)排出量」は大いに減っていると環境省は功績ありげに毎年発表しているものの、その毎年1回1日以外の毎日のDXNs排出量は、全国焼却施設の何割かの不適正運転の為に 日本全国の大気環境中のDXNs濃度は それほど減っていないという現実があります※5)。
※5) 環境省が、全国廃棄物焼却施設からの知事への報告結果を集計して、DXNs 排出量は03 (09)年には97年の1/45(1/94)に減ったと発表しているものの、実際は1/8(1/17)程度か、それより少し小さい目にしか 減っていません。 これは、環境省の全国調査地点755の大気中のDXNs平均濃度が03(09)年には97年の1/8(1/17)にしか減っていないことから明らかです。
廃棄物焼却施設からの排ガス中のDXNs濃度が、その基準値0.1ng-TEQ/Nm3未満になるように運転されていれば、排ガス中の137Cs等の放射性物質の濃度は検出下限値以下になります(排ガス中のDXNsは、その一部がガス状でバグフィルターを通り抜けますので、DXNsがバグフィルターで全部捕集されることはないのですが、 137Cs等の放射性物質は 排ガス中にガス状で先ずは含まれていませんので、バグフィルターを通り抜けることはなく、微粒子状137Cs等は全部~99.9何%捕集されることになります。99.9何%以上捕集されれば環境への影響は無視小になります。 この影響よりもズーット大きい影響を及ぼしている他の原因も考慮しなければなりません)。
従って、8、9年前に開発実用化済みの「DXNs濃度簡易連続測定記録監視装置の焼却施設への設置」を環境省が義務付ければ、DXNs濃度が基準値未満になるように毎日運転される筈であることから(基準値を超えれば運転停止命令)、同義務付けを環境省に提言してきていますが、未だ義務付けられていません。筆者は、学会、雑誌、小著書でも、ある時は同装置の実証試験をして好結果を得たNEDO等の協力のもとに、環境省に、同義務付けを再三提言しましたが、同省は「DXNs問題は鎮静化している。寝た子を起こすようなことはしたくない」と言って義務付けませんでした。
ところが、3.11以後、セシウム137Cs等の問題が出てきましたので、環境省環境回復検討会委員のDr.森口裕一東大教授、環境省災害廃棄物安全評価検討会委員 Dr.大迫政浩国立環境研究所チームリーダーらに説明してきた結果、森口先生のご賛同、働きかけの甲斐があって、「DXNs濃度簡易連続測定記録監視装置の全国焼却施設への設置」の義務付けが実現しそうになってきました。
このような次第で、上記監視装置が設置されれば、137Cs、134Cs等の放射性物質が、バグフィルターを通り抜けるガス状で排ガス中に 検出下限値以上 含まれる心配はなくなります。
しかし、137Cs、134Cs等放射性物質を含む可燃性廃棄物の焼却施設での焼却排ガス中に、137Cs、134Cs等がガス状では全く含まれないとは言い切れません。ガス状では全く含まれないかどうか、もしも含まれていればどの程度か については、前から機会あるごとに環境省など提案しているように、実験で確かめることが望まれます。
以 上
2011年11月15日(大安) 福 本 勤
(財)環境技術実践機構 理事
日本サステナ㈱取締役 環境保全工学研究所 代表
中国 清華大学 客員教授
京大工博 福 本 勤
環境保全工学研究所 〒658-0001神戸市東灘区
森北町4-15-16 TEL:078-411-9606
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図1バグフィルター織布・不織布の捕集効率と透過(通り抜け)率
https://docs.google.com/present/edit?id=0AT2-gPAwzHgNZGRwOTR2a2tfM2NrNGdyaGh6図2バグフィルター不織布の物性、圧損、捕集効率
資料6-3:「一般廃棄物焼却施設の排ガス処理装置におけるセシウム、ストロンチウムの除去挙動」京都大学 高岡昌輝
20111115 セシウム 137Cs等の放射性物質で汚染された可燃性廃棄物の焼却排ガスの処理について(12): Cs化合物等はガス状では存在しない。焼却施設の所定運転不履行➡連続記録監視装置の焼却施設付設不可欠。高効率発電
20111010満田正先生と福本勤との5、6回の意見交換
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