福本勤先生からの11/24付けメールを先生の許可を得て掲載します。
福本先生に感謝。
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差出人: 福本勤
件名: Cs等の放射性物質汚染可燃性廃棄物焼却排ガスの処理(13)、
同(12)への質問への返事
日時: 2011年11月24日 9:17:35:JST
テキスト形式で受信の方へ:以下の拙文をコピーしたWord(太字、大小字記載)を添付しています。前回送信の「セシウム137Cs 。。。。(12)」も、未受診の方用に、添付しています。
セシウム 137Cs等の放射性物質で汚染された可燃性廃棄物の焼却排ガスの処理について(13)
先便の「セシウム 137Cs等の放射性物質で汚染された可燃性廃棄物の焼却排ガスの処理について(12)― 137Cs化合物の凝縮、微粒子化等の基礎理論・原理・メカニズム・現実/ 汚染可燃性焼却排ガス中に137Cs化合物等はガス状では存在しない/しかし、年1日以外の毎日は焼却施設の所定運転不履行の為137Cs化合物含む微粒子含有排ガス排出➡連続記録監視装置の焼却施設付設不可欠―」
に対する各位からのご質問への返事
先便の拙文シリーズ(12)をお読み戴いた方々から電話やE-mailで、「基礎的なことから専門的、先端的なことまで素人にも分り易く 平易に書いていただき有り難う・・・・」、「いきなり専門家になったような気持ち・・・・」、「お陰様で、有識者(?)と 議論できるようになり 打ち勝つことができた(?)・・・・」等々の趣旨の些か予期していなかったお話しと共に、色々の質問を戴きました。 その中の、皆様に共通した質問や 微に入り細を穿った質問に対して 以下で お答えさせて戴きます。 先便で記載したことと重複せざるを得なかった点もありますが、悪しからず願い上げます。
1.この拙文シリーズ(2)や(6)で、半極性結合semipolar bondや 半極性二重結合 semipolar double bond (例えば Cl3—Al←Cl—H。Alの上、下に‥を挟んでCl、左に:を挟んでCl。右のClの上下に‥、左右に:)の結合論があることから、排ガス中のセシウム Cs+ が、 H ― O-―H と 半極性結合状態で(137Cs、134Csが水蒸気とが半極性結合して)、ガス状で、存在する可能性があるのではないかの旨を説明しました(これについては、どなたからも反論はありませんでした)。
しかし、半極性結合論は有機化合物については適用できるもの、無機化合物については適用困難と思うに至りました。【この点 拙文シリーズ(12)の中で書こうと思いながら書き忘れました。】
そこで、137Csや137Cs化合物はガス状で存在し得るのかについて、基礎から考え直すことにしした次第です。
2. 汚染可燃性廃棄物は、リサイクルしようとしますと、セシウム137Cs、134Cs等が 行く先々、どこまでも付き纏う以上、リサイクルするのは望ましくなく、焼却して高効率発電( Thermal Recycle. Heat Recovery )するのが最も望ましいのですが、「焼却反対。セシウム137Cs、134Cs等放射性物質が焼却施設の煙突からガス状で放出される」と主張する焼却反対の方々が相当数おられます(例えば、「プラスチックごみは燃やしてよいのか」の著者:青木 泰先生。反焼却市民の会代表 山本節子先生ら。日経BP社のECO JAPAN リポート(2011.7.11)の著者:井部正之ジャーナリスト。先便に添付した意見交換書の意見交換相手の満田正先生)。 そんなら、どうするか、という案は余り出てきません。
果たしてガス状で放出されるのか について、実験による確認を環境省に3.11後の5月頃から提案してきていますが、環境省は未だに信頼性のあるチャンとした真面な実験に着手していません。後記のような、不備というか unsystematicというか チャンとしていないというか 信頼性に乏しいというか のような実験の結果に基づいて、後記の環境省有識者委員会で、長時間討議の末 国の方針が決められているでようすが、これで 果たして よいのか と思ったりしています。 致し方なく、先便の拙文シリーズ(12)の2項のような理論的、経験的考察を行なった次第です。 考察結果は、「137Cs等や137Cs等の放射性化合物は燃焼排ガス中にガス状では存在しない、殆ど存在しない。念の為実験的確認は必要」でした。 ガス状では存在しなければ、平成9~14年に全国的に改造されたままのダイオキシン類(DXNs)濃度が基準値未満になる一応完備した焼却施設で、 137Cs等汚染廃棄物を 適正に運転して焼却すれば、137Cs等やその化合物(放射性)が大気中に排出することは先ずは ありません。
しかし、焼却施設使用者は 毎年1回1日のDXNs濃度測定日に限って、DXNsが出来るだけ生成しないように、①補助燃料の灯油・A重油等を十分供給して完全燃焼(➡DXNs生成しない)を目指したり、②燃やすとHCl➡DXNsが生成し易い塩ビ等の供給・投入は極力回避するようにしたり、します。 毎年1回1日のDXNs濃度測定日以外の毎日は、運転経費節減等々の為に、活性炭、消石灰等薬品や灯油・A重油等の供給量を大なり小なり削減したり、破損フィルターの交換をしなかったり、廃棄物焼却排ガスを、バグフィルターを通さずにバイパスを通して煙突から放出していたり、等々の不適正/不法運転をしている場合が往々にしてあります(煙突出口の煙を見るだけではDXNs排出の有無は分らないので、斯かる不心得者が 相当数存在することになります)。
しかし、環境省は そんな不心得者はいないとの性善説に立っている観があります。 8、9年前に開発実用化済みの「DXNs濃度簡易連続測定記録監視装置の焼却施設への設置」を環境省が義務付ければ、DXNs濃度が基準値未満になるように毎日運転される筈であることから、筆者は、その頃から、同義務付けを環境省に提言してきていますが、未だ義務付けられていません。筆者は、学会、雑誌、小著書でも、また同装置を用いて実証試験をしたNEDO等の協力も得て、環境省に 同義務付けを再三提言しましたが、同省は「DXNs問題は鎮静化している。寝た子を起こすようなことはしたくない」と言って義務付けを未だにしていません。
毎年1回1日の全国測定結果(知事への報告結果)を環境省が集計した「全国廃棄物焼却施設からのダイオキシン類(DXNs)排出量」は大いに減っていると環境省は功績ありげに毎年発表しているものの、その毎年1回1日以外の毎日のDXNs排出量は、全国焼却施設の何割かの不適正運転の為に 日本全国の大気環境中のDXNs濃度は それほど減っていないという現実があります。
即ち、環境省が、全国廃棄物焼却施設からの知事への報告結果を集計して、DXNs 排出量は 03 (09)年には97年の1/45(1/94)に減ったと発表しているものの、実際は1/8(1/17)程度か、それより少し小さい目にしか減っていません。 これは、環境省の全国調査地点755の大気中のDXNs平均濃度が03(09)年には97年の1/8(1/17)にしか減っていないことから明らかです。 【環境省(旧厚生省)によると 平成9年 全国DXNs排出総量の94%は 全国廃棄物焼却施設から排出されています。】
1/45(1/94)や1/8(1/17)の減少には、全国廃棄物焼却施設の数が、平成9年当時の数よりも 現在は大幅に減っていることも、貢献しています。 換言すれば、1/45(1/94)や1/8(1/17)の減少には、 DXNs 削減技術の進歩と共に 焼却施設数の減少も貢献していることになります。
繰り返しになりますが、年1日以外の毎日は所定の運転を履行していない焼却施設の多くでは、①排出濃度基準値以上のダイオキシン類(DXNs)や②検出下限値濃度以上の137Cs等の放射性化合物、を含む排ガスが煙突から放出されている恐れがあります。 そこで、四六時中適正に運転されているのかどうかを連続的に即時記録する監視装置(市販)の設置を、各焼却施設に義務付ければ、137Cs等化合物もDXNsも、現在のように、煙突から排出されることはなくなります※1)。DXNs濃度が排出基準値未満であれば、除去がDXNsよりも容易な137Cs等化合物濃度も検出下限値未満になります(137Cs等については 排出基準値は法令で設けられていません) ※1)。
【※1) ① 137Cs等化合物はDXNsよりも除去が容易です。DXNs除去の場合は、DXNs吸着吸収微粒子とDXNsガスとを除去しなければなりませんが、137Cs等化合物除去の場合は、137Cs等化合物を含む微粒子だけを除去すればよいからです。しかし 若しも、137Cs等化合物がガス状で無視少以上に含まれていることが実験で確認されれば、Zeoliteなどによる その吸着除去も検討しなければならなくなります。②DXNs濃度が基準値を超えれば焼却施設運手停止命令が下りますので、基準値を超えないように所定の運転が履行されます。「DXNs濃度簡易連続監視測定記録装置」が焼却施設に設置されば、DXNsは基準値未満に、 セシウム137Cs等放射性物質濃度は、検出濃度下限値以下になるのは間違いないと思います。】。
3. 3a.廃棄物焼却排ガス中に、ガス状のセシウムCsやセシウム化合物CsCl 、Cs2O 、CsO2、CsH 、CsOH 、Cs2SO4 、Cs2CO3等が、もしも無視できない程度以上に含まれていれば、バグフィルターだけでは、セシウムCsやセシウム化合物を十分除去出来ないことになります。従って、以前から、環境省災害廃棄物安全評価検討会委員ら、大地震災害・原発事故対応担当馬淵澄夫 前首相補佐官、南川秀樹 環境事務次官らに、これを実験で確かめるように、助言,提言してきましたが、未だに真面なチャンとした実験が行われていません。
但し、環境省災害廃棄物安全評価検討会配布資料として「資料4」、「資料6-3」、「資料9」があります。しかし、3者とも本来目的に合致した真面なチャンとした実験の結果報告書とは言い難い報告書になっています。
3b. 資料6-3の報告書「一廃焼却施設の排ガス処理装置におけるCs、Srの除去挙動」【報告書作成年月日不明。京大高岡昌輝教授。「採取日:2009年秋。採取場所:A自治体、 300t /day のストーカ炉」との不備記載あり。この報告書提出年(2011年)の2年前のCs、Srに関するデータ採取の目的・理由不記載】に記載の表1 Cs濃度結果によると、どうもスッキリしないのですが、0.014μg/Nm3のガス(筆者の計算によるとCs化合物固形微粒子を含む全 Cs& Cs化合物の0.13%。粒子状のCsの含有率は99.87%)が廃棄物焼却排ガス中に含まれていたようになっていますが、0.13%のガスの組成の記載がなく(Cs100%で間違いない?)、再現性、信頼性のあるデータなのかどうかは不明です。この点について、2011年11月4日の廃棄物資源循環学会の意見交換会で高岡教授に質問したところ、後で調べて返事するとのことでした。未だ返事はありません。
「資料9」の2の引用文献(廃棄物資源循環学会研究発表会議論文集(今井、塩田、高岡ら。 2010) )によると、焼却施設A、B、C、Dの場合、集塵効率は次のようになっています。【焼却施設使用者は、自治体でも、前述のような心疾しい施設使用をしているからでしょうか、焼却施設名をA、B、C、Dなどとすることを大学等外部実験者に求め、焼却施設名の公表を屡厳禁しています。】
A 200/24h✕2 バグフィルター+スクラバー+活性炭吸着塔+触媒脱硝塔 99.999%
B 300/24h✕2(正しくは200/24h✕3?※2)) バグフィルター+スクラバー+触媒脱硝塔 99.977%
C 350/24h✕2 バグフィルター+スクラバー+活性炭吸着塔+触媒脱硝塔 99.995%
D 300/24h✕2 バグフィルター+スクラバー+触媒脱硝塔 99.981% ※2) 論文集の誤記か?。
先便に添付のWordの拙文のp.4/6~p.5/6に添付の図1において、バグフィルターの不織布(図2)だけで、粒径が10nm(0.01ηm)~ 100nm(0.1ηm)の微粒子の集塵効率は99~99.99%程度になっており、この不織布に煤塵が堆積した堆積層と不織布を通る排ガス中の煤塵の集塵効率が99.981%~99.999%になるのは、先便に添付のWordに記載の拙文3項のp.4/6~p.5/6で説明したことからご理解いただけると思います。
排ガス中にガス状の137Cs等放射性物質・化合物が含まれていなければ、それ自体微粒子になっている(或いは他の微粒子に含まれている) 137Cs等放射性物質・化合物は、99.981% ~99.999%程度 捕集されることになります。 排ガス中にガス状の137Cs等放射性物質・化合物が理論的には含まれないことを先便で説明しましたが、実験して確認することが望まれます。
また、「資料9」の2の引用文献(廃棄物資源循環学会研究発表会議論文集(今井、塩田、高岡ら。2010) )によると、0.42μm以下の微粒子が20%程度含まれており、このうち 0.1μm ~ 0.3μm 【100nm~300nm】程度の微粒子にはブラウン拡散捕集機構も さえぎり・慣性捕集機構も 働きにくく、拙文シリーズ(12)で図1を用いて述べたように、バグフィルタ―織布・不織布だけであれば、捕集効率は50%程度になるのですが、堆積煤塵層での捕集によって 捕集効率は、大幅に上がって、全体で99.99%程度になるものと思われます。
更にまた、環境省災害廃棄物安全評価検討会配布資料としての「資料6-3」によると、排ガス中にCsのガスが0.13%(筆者計算値)含まれていたことになっていますが、このガスの組成はCsが果たして100%であったのかどうか、他のどんな場合も(何時も)0.13%になるのかどうか、0.13%よりもズーット大きくなるのか、小さくなるのか、無視小になるのか、case by case で大幅/小幅に異なるのか 等々については、第3回災害廃棄物安全評価検討会 (平成 23年6月19日) では問題にされず、評価検討、討議の対象になっていません。
しかし、これは重要な問題であるだけに、上記「ガス状Csが0.13%存在」に再現性があるのかどうか等々を、実験で確かめる必要があります。
3c. 環境省災害廃棄物安全評価検討会配布資料「資料4」(2011年8月10日。真面な報告書になっていない)によると、環境省は、次の焼却試験を実施しました。
即ち、福島市のあらかわクリーンセンターの焼却施設(110t/d 2炉。バグフィルター。発電能力5,100kW。発電効率 16%。年間総発電量 1,321万kWh[13,206MWh] )に、
(1)収集生活ごみ(10割)を投入の焼却試験、
(2)収集生活ごみ8割と災害可燃性廃棄物2割との混合物を投入の焼却試験を行い、①主灰中、②飛灰中、③バグフィルター通過排ガス中 の 134Cs、137Cs等の測定を行いました。 その結果、主灰中の134Cs については、(1)の場合8500Bq/kg、 (2)の場合9800Bq/kg
主灰中の 137Cs については、(1)の場合 9400Bq/kg、(2)の場合11000Bq/kg
飛灰中の 134Cs については、(1)の場合 37000Bq/kg、(2)の場合 35000Bq/kg
飛灰中の 137Cs については、(1)の場合 41000Bq/kg、(2)の場合 38000Bq/kg
排ガス中の 134Cs、137Csについては、(1)の場合も (2)の場合も 検出下限値未満でした。
しかし、
① 災害可燃性廃棄物だけについての焼却試験、
② 災害可燃性廃棄物自体が含む134Cs、137Cs 等の濃度の測定、
③ バグフィルターに入る前の排ガス中の134Cs、137Cs等の濃度の測定
等々の測定が行われていません。
従ってバグフィルター(あらかわクリーンセンターではバグフィルターのみ設置) の 134Cs、137Cs 等の捕集(除去)効率が分らず(環境省資料9によると京都市焼却施設のバグフィ ルター+スクラバー+活性炭吸着塔+触媒脱硝塔の場合で99.9%以上)、 134Cs、 137Cs 等の濃度が相当大きい災害可燃性廃棄物を専焼する場合、排ガス中の134Cs、137Cs等の濃度が 検出下限値(0.025Bq/m3、0.045 Bq/m3)以下になるのかどうかを示す試験結果、 134Cs、 137Cs 等が生活環境中に排出されないことを示す試験結果になっていません。
環境省は7.13 & 7.14に、上記焼却試験をしたのですが、折角試験をするのであれば、最重要の捕集効率のデータ(環境省主張の99.9%以上になるかどうかの確認データ)を採れるようにすればよいのに、採れる態勢作りさえしていません。あらかわクリーンセンターの焼却施設をそのまま使用してデータ採取をしようとする限り、態勢作りは無理です。昔から何時もの事ながら、環境省災害廃棄物安全評価検討会出席者名簿から伺える錚錚(そうそう)たる検討会委員がついていながら、どうしてこんな中途半端な試験をするのでしょう? 災害可燃性廃棄物の専焼炉、望ましくは高効率発電機付焼却施設を早急に設置して、チャンとした焼却試験を行うことが望まれます。
9月29日の国会答弁で、細野豪志環境相が「福島県の焼却施設で、放射性物質を99.9%以上除去できる。実験でも確かめられている」と答弁していましたが、この答弁は事実に反しています。
京都市の焼却施設A(?)の「バグフィルター+スクラバー+活性炭吸着塔+触媒脱硝塔」を備えた過剰重装備の焼却施設で、99.9%以上とのデータ(環境省災害廃棄物安全評価検討会配布資料「資料9」(2011年6月5日)が得られているのであって、 福島県の焼却施設(その殆どがバグフィルターのみ付設)で 99.9%以上も除去できるかどうかは、不明です。 真面な実験の結果ではありません。
しかし、汚染廃棄物の場合、汚染廃棄物中のセシウム137Cs等放射性物質濃度が 概して それほど高くありませんので(福島第一原発原子炉近傍でもない限り、余り高くならない)、99.9%以上も除去されなくても、排ガス中のセシウム137Cs等放射性物質濃度は、検出濃度下限値以下になります。
以 上
2011年11月24日 福 本 勤
(財)環境技術実践機構 理事
日本サステナ㈱取締役 環境保全工学研究所 代表
中国 清華大学 客員教授
京大工博 福 本 勤
環境保全工学研究所 〒658-0001神戸市東灘区
森北町4-15-16 TEL:078-411-9606
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