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2010年5月30日日曜日

5/29、会田節子さん講演会(追記)


私は、2月末に参加した瀬戸昌之さんの講演会http://gomitanteidan.blogspot.com/2010/03/2010220.html後、瀬戸さんが理事、会田さんが事務局長をされているNPOたい肥化協会のHPを知り、昨日話にでた山形県長井市レインボープランや栃木県芳賀町の事例は読んでいました。こうした活動を活字では読み齧っていましたが、会田さんの生の言葉を聞いて、資料中の登場人物がさらに動き始めました。会田さんの話はすべて具体的でした。

「このNPOのたい肥化製造ははとても良心的で、彼らには頭が下がります。この地域では、この人たちが集めて作っているものなら喜んで使うと農家の人が言うのです。生ごみの収集運搬にはシルバーの人たちが多く関わっています。彼らが回収バケツをトラックに運び上げるのですが、腰を痛めないようにバケツを一杯にしないようにしています。機械を作ってかき回せばたい肥になるそんなものではありません。お腹がすいている時に買い物に行かないように。たい肥化の前に作り過ぎ、買い過ぎの無駄をなくすこと。生ごみは調理くずと食べ残しですから、調理くずは仕方がないとして、食べ残しがなくなれば、生ごみは減ります」などなど。生ごみを出す住民、集める人たち、たい肥にする人たち、たい肥を使う農家、作った野菜を販売すること、それを買う消費者、それをまとめる行政、首長と担当者、すべての輪がつながって初めて、信頼できる生ごみ堆肥化が可能になるのだと気づかされました。

「人口が多い少ない、農地のあるない、都会か地方かなどは生ごみ堆肥化を進める上で関係ないと思うようになりました。生ごみは宝だを理解している人たちが動くところでは可能になるということです」。

ただし、さまざまな課題も示されました。「現在発酵がわかっている農産学者が少なすぎる。法の整備がない。生ごみ資源化と言いながら焼却は規制されていない。韓国は生ごみ埋め立て禁止法を作った。畑にどうやって(生ごみから作った)堆肥を入れるかの技術も必要。堆肥製造技術もまだまだ(機械でかき回せば良質な堆肥ができるわけではない)、材料の成分の組み合わせ方など各地域に即した工夫が必要。作った堆肥の使い方を指導する人がいない。今全国にいる農業改良普及委員は化学肥料に関する知識、その施行法しか知らない」「生ごみに含まれる塩分、添加物、異物の不安。異物に関しては既にお話ししましたが、塩分添加物に関しては、さまざまな関係者専門家に聞き、調べ、発酵過程を経ることで浄化されると考えられることから、心配ないとの立場をとっています。ただし、完全堆肥になっていることが条件です」。

会田節子さんの事例についての話はこんな感じでした。

事例1、山形県長井市:
生ごみ堆肥化に関わっていて、長井市のレインボープランを知らない人はもぐりです。全国に先駆けて成功させた事例です。これは農業者である菅野さんの危機感がきっかけでした。菅野さんは畑の「土のへたり」に気がつき、化学肥料による農業を続けてきて、「堆肥が土に入っていない。先祖から受け継いできた土地がやせてきている」と。1990年に地域での話し合いが始り、7年間喧々囂々、関係者全員で議論を尽くし、1996年計画が実行に移されました。長井市の目的は、ごみ減量や資源再利用ではなかった。何が違うかというと、ここの計画には理念がある。その理念とは、1)土は命の源、2)共に(誰かだけでなく)、3)循環。農業県なので堆肥の材料として籾殻や家畜糞がある。人糞も考えたが排出工程で工業系のものと混じり、有害金属の問題があり使えない。そこで生ごみを利用しようと決めた。「土づくりから」始めること、レインボープランのレインボーは虹、台所と農業をつなぐということです。長井市の堆肥製造工場はくさいです。でも地域の人たちがそれでよしとしているからいいのです。普通堆肥製造工場はくさいから人里離れた山の中に作ったりするのですが、長井市のコンポストセンターは周りを田んぼに囲まれたところにあり、誰でも見学できます。80日間かけて完熟堆肥を作っています。(パワーポイントスライドで生ごみに混じる異物を見せて)異物は農家が最も嫌がるものです。堆肥ではなくこれではごみじゃないか、と。その通りですよね。ですから堆肥化のために生ごみを出すときは、みなさんが徹底的に異物を除去してください。長井では異物は少ないです。40kg/年/5000世帯、1日あたり8g/世帯です。1日8gがどれほどの量かというと、ミカンの皮のそれもほんの一部、ほんのひとかけなんです。生ごみを出す長井市の人たちの話を聞いたのですが、「これは子や孫のためにいいことじゃあ」「いいことだから協力する」と言う。みんながわかってるんです。レインボープランが本格実施されて13年、菅野さんの今の気持ちは「やっと離陸してようやく水平飛行に入ったとこかな」です。(堆肥は販売され、この堆肥で作られた野菜は市民と農家の協同経営による「虹の駅」や市内のスーパーで買える。野菜は学校給食でも使われている)。

長井市レインボープラン
http://www.city.nagai.yamagata.jp/rainbow/




菅野芳秀さん
菅野芳秀さんのブログ(←すごくすてきな人って感じます。ハンサム!!)

事例2:(有)ドンカメ(栃木県芳賀町)
ここもごみの減量が目的ではない。栃木県芳賀町の小久保さんという梨農家の人が、梨の木が立ち枯れになり、「梨がまずくなってきた」と気づきます。「土が壊れてきた」。それで彼は生ごみを発酵させたものを梨の木の根元に入れてみた。農家の人ですから堆肥になるように発酵させる方法を知っていたわけです。そしたら、梨の木が元気になり、梨も美味しくなった。これはいいと近隣の農家41軒にこれをやらないかと声をかけたのです。ところが小久保さんの呼びかけに応える農家は殆どいなかった。みなさんご存知だと思うのですが、日本の農家は自分の経験や知識をぎゅっと握って他には伝えない。小久保さんは違っていた。一人一人を説得して歩いたのです。それが始まりです。(小久保さんが後に有限会社にしたドンカメの堆肥センターのスライドを見せて)小久保さんの活動が町の委託も受けるようになり、(回収された生ごみが)堆肥にされる新しく建てられた工場です。1億5千万円の費用は消費税も入りますからこの金額は大金をかけずに作ったということです。芳賀町は本田王国で6,000-8,000人の従業員の社員食堂があり、その調理くずが出ます。それや町の飲食店などの生ごみを無料で収集運搬しています。彼はほんとうに良心的な人です。(「給食で使用の野菜を紹介」のスライドを見せて)この教室の壁には農家の人たちの写真と作っている野菜の説明が張られています。(給食の時子供たちは今日の献立の野菜と生産者を紹介)。今の子供たちはわかるのは大根と人参の違いまで。ほうれん草と小松菜の違いはもうわからない。これは農業県の子供たちもそうなのです。それほど、生産者と口に入れる食べ物が切り離されてしまっている。芳賀町では「食育」、子供たちにちゃんと教えるということを始めました。今給食をどの位残しているかご存知ですか?山形県鶴岡市が給食を始めたところなのですが、そこが食べ残しは一人あたり30g、全国平均だと70gです。芳賀町の子供たちは10g。これは非常に少ない。ということは子供たちは残していない。休んだ子供たちの量なんですね。「給食はとても美味しい」そうです。(地産地消)ドンカメが作った仕組み「食育推薦センター」の建物に入るとテーブルがあり、市内の小学校、中学校毎の名前が別々に書かれてそれぞれの場所ができています。そこに農家は給食で使われる野菜を運んで来て、並べていきます。町の商工会は野菜を(コンテナに詰めて)学校に運びます。商工会は学校と清算し、農家に払います。これは非常に大事で、農業県ですから給食に使ってもらわないと、地元で作った野菜を買う消費者は少く、商店からは買わない。この形を取ることで商工会にもお金が落ちる仕組みになっている。また学校給食で地元の野菜を使うと決めてもわからないことがいっぱいあった。たとえば、大根1000本が必要なのに500本しか地元ではとれない。さあどうする。そのため栄養士さん、調理員さん、農家、教育委員会など関係者全員が集まって、いつ何がどの位できるかを見極めて行った。不足している分は外部から調達する仕組みを作った。今も会議が学期毎に2回開かれています。
(有)ドンカメ
(有)ドンカメ小久保行雄氏

事例3:鹿児島県志布志市
市長が10,000円を燃やすのに使うか、10,000円を教育や孫のために使うかどちらがよいか?と住民に問いかけ、そりゃあ子や孫のために使う方がいい、と後者が選ばれた。そこで広域清掃組合から離脱。(埋め立てごみを減らすために、2004年より生ごみ堆肥化)。現在リサイクルできていないのは紙オムツだけ。各種薬剤が入っていて非常に難しかったが、最近やっと処理法がわかってきたのでどうにかできそうとのこと。ここでは地域通貨が発行されている。ごみステーションは住民が自分たちで管理しており、そのための「衛生自治会」が作られ、全員強制入会。だってみんなごみを出すから。この「衛生自治会」を市は強力にサポート、育成している。ごみステーションの掃除などに参加した人には地域通貨「ひまわり券」を渡す。1枚でトイレットペーパー、石けん、20枚でヒマワリ油と交換できる。ここでは、ちゃんとした堆肥業者が収集運搬も担っていて、やっつけ仕事をしていない。
鹿児島県志布志市 サンサンひまわりプラン
サンサンひまわりプラン...循環型社会形成めざして

5/29 会田節子氏講演会「日本における生ごみ堆肥化の進ちょく状況」参加記 by 鷹取敦氏

5月29日午後、「生ごみ100%資源化をめざすプロジェクト」主催の第2回目講演会があり、「日本における生ごみ堆肥化の進ちょく状況」について会田節子さん(NPOたい肥化協会事務局長)が話をされました。

講演内容を、環境総合研究所の鷹取敦さんが参加記として以下サイトに報告されています。速報です。でも、濃い話の中身すべて網羅されています。ぜひクリックしてご覧ください。鷹取さんに、感謝。


発足記念講演で会場を興奮の渦にまきこんだ「戸田市の吉田義枝さんを全国に紹介したのが会田さん」「生ゴミ堆肥化の活動を17年間続けてこられ、日本の堆肥化の現状を一番知っている人です」と青木さんが紹介されました。ほんとうにそうでした。実践地域の事例と実情について、活動に関わった人々、仕組み、組織について、今後堆肥化を推進するにあたって何が必要とされているのかについて、すべて生き生きと具体的に語られ、全体的な絵が示されました。

生ごみ堆肥化の話、微生物の話は聞くと必ず元気になります。土とつながっていることだからでしょうか。会田さんの生の言葉胸に迫りました。世の中には本当にすごい人たちがいる!!会田さんと講演会主催者関係者に深く感謝。

2010年3月20日土曜日

資料、2010/2/20瀬戸昌之氏【日の出の森・支える会 連続講座】焼却しないごみ処理ー生ごみ堆肥化を阻害するものー

2010年2月10日(土)、瀬戸昌之氏の講座「生ごみ堆肥化はなぜ進まないのか」に出席しました。それまで生ごみ堆肥化はむずかしいと思いこんでいましたが、その思い込みは打ち砕かれました。

初めの1時間は生ごみ堆肥化と切り離せない微生物についての説明。米国の学校で使われている教科書のページ(5種類の微生物のイラスト入り)を使用され「これ以上わかりやすい資料は今のところないんですよね」と。人間の目には見えない無数の微生物の存在と働きが生ごみ堆肥化を可能にするわけが理解できました。

もう1時間は、ごみを「燃やして埋める」ことの問題点、生ごみ堆肥化の過程と方法、その利点、「心配だとされる点」は心配の必要がないその理由、多大なメリットがあるのになぜ生ごみ堆肥化の動きが広がらないのか、ごみ行政の有り様が問題であること(税金の使い方を含め)、インセンティブが与えられていない現状、実践活動の内容、Q&A。

以下が、瀬戸先生が当日配布された資料の内容です。
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連続市民講座「ごみ処分場のない社会をめざして」
第三回、2010/2/20、国分寺労政会館、日の出の森・支える会

「生ゴミ堆肥化はなぜ進まないのか」

瀬戸昌之(日の出の森・支える会代表)


 日本は毎年、家庭・事業所から約2000万tの生ゴミを収集している。この大部分を焼却で燃やし、灰を内陸や東京湾に埋めている。燃やして埋める処理の何が問題か。
 これに対して、たとえば生ゴミの堆肥化は持続社会にどのような利点があるのだろうか。また、生ゴミ堆肥をめぐる塩分や添加物などの心配はどう考えればよいのか。

「燃やして埋める」の何が問題?
問題1.焼却炉の危険性 たとえば横浜市のごみ焼却炉周辺の小学生のぜんそく率は全国でも最悪であった。周辺の焼却炉を閉鎖した。ぜんそく率は激減した。
問題2.焼却は地球温暖化の原因の1つとなる。生ゴミを無理やり燃やすための助燃剤はC02(二酸化炭素)を排出して、地球温暖化の原因となる。この助燃剤から、日本は毎年100-200万トン(炭素量)のCO2を排出している。
問題3.窒素・リンなどの資源を非循環により失っている。
 (瀬戸さん:「窒素、リンは生ゴミに入ってる。農家は化学肥料として使ってるし、今値段が上がってる。)
問題4.灰を埋める過程で土壌や地下水を汚染している。
問題5.生ゴミ1トン当たり約8万円も税金を投入。

 ところで、生ゴミはさまざまな資源として利用できる。たとえば、1)新鮮で異物がない生ゴミはブタなどの家畜の餌に、2)やや古い生ゴミは堆肥に、そして3)腐敗し異物の混入が避けられない生ゴミはメタン発酵の材料として利用できる。ここでは生ゴミの堆肥化を中心に考えよう。
(瀬戸さん、「この順番を間違えてはいけない。1)ができる所は1)が一番効率がよい。次に2)を、と。1)は民間が始めてる。2)は異物がないことが重要。3)は、エネルギー効率が悪いため、あくまで最後の手段と考えた方がよい」)

生ゴミ堆肥化の過程と方法
 たとえば100kgの水ビチャの生ゴミは十分の一の約10kgのサラサラの堆肥になる。生ゴミは図1の「栄養素」に相当する。生ゴミなどに付着している微生物は生ゴミという栄養素を取り込む。その結果、好気条件では、生ゴミは微生物の体とCO2そして安定な腐植質に変わる。さらに、この微生物による代謝の過程で出る熱は生ゴミの水分を蒸発させる。したがって、サラサラの完熟堆肥になる。完熟堆肥は生ゴミの易分解性有機物のほぼ全てが分解された後の、微生物体と安定な腐植質の混合物である。
 さて、生ゴミの堆肥化は一般的な堆肥化工場では、生ゴミと完熟堆肥の量を1対1のように混ぜ、ときどき撹拌しながら約2~3ヶ月かけて堆肥にしている。家庭では、たとえばプランター、トロ箱あるいは段ボール箱に生ゴミを埋めながらときどき撹拌すればよい。

     CO2
        ↑
栄養素     微生物
(生ゴミ)   ↓
     有機酸など

図1 有機物などの栄養素の微生物への流れ
取り込まれた栄養素は、微生物の体、CO2、有機酸などになる。

 堆肥化を必ず成功させたいなら、「大量の土に少量の生ゴミを入れる」にかぎる。このとき好気条件が保たれ、図1の生ゴミは微生物の体とCO2そして安定な腐植質に変わる。
 堆肥化を必ず失敗させたいなら、「少量の土に大量の生ゴミを入れる」にかぎる。
生ゴミ堆肥化の利点
 都市などは生ゴミを不要としている。農地は有機物と窒素、リンなどを必要としている。生ゴミを堆肥に変え、農地に投入すればこれらの問題はいっきに解決する。
 利点1.すなわち、生ゴミ堆肥は有機物の塊であり、有機物は土壌の団粒を発達させ、「肥沃な土壌」をつくる。したがって、生ゴミは「土壌改良材」である。堆肥の有機物は、窒素、リンなどとともに、農作物の品質向上ももたらす。たとえば、野菜、水稲、果樹などの根、葉の密度は高まり、1個当たりの重量も増加する。また、糖、βカロチン、ビタミンC、甘み、グルタミン酸などの濃度は増加する。さらに、硝酸汚染を軽減し、野菜が腐りにくくなる(NPO堆肥化協会、2007)
 (瀬戸さん「このことは既に公的に認められている」)
 利点2.生ゴミ堆肥化は公益的価値の生産にもつながる。たとえば農地への生ゴミ堆肥の投入によって発達した土壌の団粒構造はたとえば雨水の浸みこみを促進し、ひいては土砂流亡や洪水害を軽減するからである。
 (瀬戸さん「余り言われてないが、重要」)
 利点3.土壌の浄化力、すなわち土壌の微生物による人口化学物質の分解能力が高まる。
 (「人口化学物質は使わざるを得ない。だけど、使ったら速やかに分解して欲しい。微生物はこうした物も分解無害化する力がある。この試験結果を見てください」と表1の説明)

表1 滅菌した無機の液体培地あるいは土壌の溶液における添加1日後のDCP濃度
溶液は以下から得た
TOC
DCP添加量(1mlあるいは風乾土1g当たりのμgC)


     10        30        100        300        1000
液体培地
0
     10        30        100
砂質土壌
0.3
     7.4       22         85
黒ボク土壌
7.3
     0.2       1.1        6.4           30           185
褐色森林土壌
14.0
     0.1       0.2        0.7     2.7            22
単位はμgC・ml-1。青字の部分はすべて30以下であり、DCPの分解菌を接種したときDCPの分解が認められた(瀬戸、2006)。

TOC(全有機炭素):http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=1024
DCP:2,4-ジクロロフェノール
http://www.meti.go.jp/report/downloadfiles/g11126p07j.pdf

生ゴミ堆肥化の心配点
 生ゴミの堆肥化をめぐって以下のような心配点が指摘されている。この指摘には根拠があるであろうか?
 心配点1.堆肥の受け皿がない?
  農地の団粒を維持・発達させるためにはmあたり1~2kgの堆肥が毎年必要である。日本の農地471万haは毎年4,700~9,400万tの堆肥を必要としている。日本で毎年発生する生ゴミの全量を堆肥にしても200万tである。農地が必要としている堆肥の量の2~4%にしかならない。なお、日本の家畜糞尿の全量を堆肥にしても、日本の農地では堆肥が不足しているのである。
 心配点2.生ゴミ堆肥には味噌・しょうゆからの塩分が含まれるから、畑を痛める?
  生ゴミ堆肥の塩分が問題になったことはない。さらに表2から何が読み取れるか。

表2 添加塩分の残留1)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
添加実験区 添加量(g/鉢) 残留量(g/鉢)2) 残留濃度3)(ug/ml)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
   0年分             0        0.022        0.017
100年分            30      0.023                      0.012
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー1)黒ボク土を、鉢当たり2ℓ(乾量1kg)に食塩を添加した(2001/6/5)。2年後(2003/6/5)残留量を調べた。2)生土10gに純水100mlを加え、スターラーバーで30分撹拌、ろ液の濃度から推定した。3)生土を10,000 x gで遠心分離し、得られた土壌溶液中の濃度。

 心配点3.食品中の農薬・添加物が堆肥に移行して、畑を痛める?
  堆肥化の過程は微生物による分解の過程である。農薬・添加物といえども微生物によって分解される。もし、生ゴミ堆肥に残留した農薬・添加物が畑を傷めるなら、食卓にのった食品にはものすごい農薬・添加物が入っていたことになる。私は逆に質問したい。「あなた、そんなすごいものを食べてだいじょうぶ?堆肥より食べるものを心配したら?」

生ゴミ堆肥化の輪はなぜ拡がらない
 住民による生ゴミ堆肥化は一部の熱意ある住民によって行われているが、大部分の住民は参加しない。とうぜんである。家庭の生ゴミ処理費は「住民税」に含まれ自治体の責務とされているが、堆肥化しても住民に生ゴミ処理費が還元されないからである。
 また、事業者の生ゴミの資源化も遅々として進んでいない。とうぜんである。食品工場やレストランなどの事業所から出る生ゴミは、法的には、事業者の責任で処理することになっているにもかかわらず、自治体は事業所の生ゴミをきわめて安い値段で引き受けている。このために事業所は生ゴミを減らす努力も、資源化する努力もしない。

住民には経済的インセンティブを!
 住民が生ゴミを堆肥化すれば、自治体はその分の「燃やして、埋める」責務は軽減される。自治体は軽減された分を「野菜券」、「地域通貨」などを経済的インセンティブ(動機づけ)として住民にとうぜん還元すべきである。
 
 事業者の生ゴミを自治体が引きうけるなら1tの生ゴミあたり8万円を事業者からとうぜん徴収すべきである。
 このとうぜんの徴収をやれば、事業者は生ゴミの排出を抑制し、抑制できない生ゴミは自治体ではなく堆肥化業者に委託することになる。堆肥化業者は1tあたり4万円で引きうけるからである。これによって年収400万円、10万人程度の堆肥化業の雇用が生まれる(利点4)。
 (「毎日新聞の小島記者によると、自治体は事業者からの生ゴミを実際の処理コストの10分の1、¥8,000/tという値段で引き受けてる」。「自治体は邪魔をしているのと同じ」。)

解決すべきさらなる課題
 課題1.法的には生ゴミは「ごみ」であって資源として位置づけられていない。
 課題2.事業者の生ゴミは事業者の責任で処理することになっている。事業所の生ゴミを自治体が引きうけると何が起こるか?
 課題3.生ゴミの炭粉化ーー温暖化防止のみならず、国土保全・公益的価値を生み出す。
 課題4.公益的価値の生産者に経済的インセンティブを!
  とりわけ環境保全には必要であっても経済的にペイしない取りくみが多い。たとえば、水田の維持は水の流出を平準化し土砂流亡を防ぐなどの国土保全に大きく寄与している。この公益的価値の恩恵はわれわれすべてが享受する。ここにわれわれは公益的価値を生産する人に経済的インセンティブ(動機づけ)を支払う充分な理由がある(インセンティブの算定~たとえば地下ダムのコストとの比較から~)。
 
 良い取りくみをする人には経済的インセンティブを提供し、支払うべき人には支払わせる。このような人間活動の公正な評価が社会に期待できるときにのみわれわれは循環型社会を展望できるのである。

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堆肥化できるものとできない異物~あなたが消化できる生ゴミは全て堆肥化できる。
 紙やプラスチック、箸やスプーンなどはあなたが消化できないから異物である。あなたが消化できない生ゴミも異物である。たとえば魚の骨は?
 イワシの骨はあなたは消化できる。したがって堆肥化できる。マグロの骨は食べても消化できない。したがって、堆肥化できない異物として取りのぞいて下さい。
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黒字:テキスト原文