青木泰氏からの続報!
☆朝日新聞オピニオンー 天下の暴論「プラスチックごみはもっと燃やせ」ー批判 by 環境ジャーナリスト 青木泰氏☆青木泰さんから緊急のお知らせ~朝日オピニオン 田中勝氏「プラスチックごみはもっと燃やせ」批判(追記)
上記批判記事を書いた青木泰さんから、「朝日新聞とのやりとりその後」に関する報告が入りました。以下、掲載します:
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2010年8月18日 10:09:18:JST
―朝日オピニオン”意義あり”「プラスチックごみはもっと燃やせ」の暴論批判―
朝日新聞とのやり取りその後
青木泰
1) 概略経過
7月24日 田中勝氏の「プラスチックごみはもっと燃やせ」朝日オピニオンに掲載
7月26日 朝日・読者応答室への問題指摘と要請
8月 9日 朝日・杉本記者に抗議文メールで送付
8月11日 朝日・本社に「天下の暴論―『プラスチックごみはもっと燃やせ』」に届ける。-ー面会を求めるが断られ、文書を受付に置く。
8月13日 朝日・オピニオン「意義あり」担当者からメール。ー-文書を届けた事へのお礼と「オピニオン『意義あり』」の位置づけ、そして内容は朝日新聞社の見解ではないと言う説明が行われていた。
8月16日 青木から改めて朝日の担当者に下記の要請メールを送った。
2) 朝日新聞からのメールの要点
① 「意義あり」は、世の趨勢からかけ離れた少数意見を紹介する欄
・・・・たとえば、第1回は元官房副長官の石原信雄さんが「天下り批判は現役官僚の活力そぐ」、そのほか、初期には「賞味期限だって食べられる」「世襲議員は親と比べられ、鍛えられる」「憲法9条は日本人にはもったいない」「お上頼みの禁煙は個人の自由損なう」など、世間一般の見方とははずれた人たちの意見を紹介して参りました。・・・・
② 今回も多くの意見とかけ離れた少数意見であり、
* 田中氏が中央環境審議会の廃棄物・リサイクル部会長であること
* 廃棄物問題に精通している杉本記者が担当していた
ことから取り上げた。
③ 朝日新聞の社としての意見ではない。
3) 朝日への再要請-青木発
朝日オピニオン「意義あり」担当者様
2010年8月16日
お世話様です。
朝日新聞にとってオピニオン「意義あり」が、世の中の趨勢とはかけ離れた少数意見を紹介する場として始められたとの位置づけは、分かりました。したがって朝日新聞社の意見そのものではない。世間的に流布されている常識に対しての少数意見、記者を捉えている意見を越えた奇抜な意見、それらを掘り起こし、マスメディアとして現状の社会の沈滞状況を破る。そのきっかけを作る。その点では、大変意義あることだと思います。
このオピニオンが趣旨通りに活用されてゆけば大変面白いと思いますが、しかしごみ問題のような専門性が必要な記事の場合、結局社会部の記者の目を通さざるを得ず、その点が「常識を破る」と言う点で隘路となっているのではと思います。
しかも多くの自治体関係者やごみ問題に関わっている人たちが、今回の記事を読んだ時の影響を考えるとそのまま放置して欲しくはありません。
そこで改めて、私からのお願いをA) B)として書きます。
A) 今回のオピニオンへの反論掲載を
今回のオピニオンについて言うと、以下の3点でやはり疑念をぬぐう事が出来ません。
① 今回の記事は「意義あり」にふさわしいのか?
② 読者への伝わり方について
③ 記載内容が事実と異なる点について
① 今回の記事は「意義あり」にふさわしいのか?
「プラスチックをもっと燃やせ」と言うのは、少数異見ではなく、国や多くの地方自治体が進めてきた政策です。なるほど口では、リサイクルを言ってきましたが、建て前と本音を使い分けし、燃やすほうに力を入れてきました。それを今回のように紹介するのは、行政が国民や住民を欺いて進めて来たことを、後ろ押しする記事になりませんか?
現に3R推進を基調にした循環型社会形成推進基本法が制定された後にも、3Rの最後の選択枝である熱回収―ごみ発電を進めることを環境省は、第1番目の政策としてきました。自治体の長が集まった会議の中では、なぜ、循環型社会といいながら生ごみ資源化―堆肥化施設などへの補助金、交付金をつけないのかと言った声がでていると言います。そうした声こそ取り上げていただきたい少数意見だと考えます。
今年5月の産経新聞でも報道されたように、家庭や事業系の一般廃棄物についてごみが減ってきています。リサイクルが進んだ事と不況が要因と言う分析をしていますが、その結果ごみ発電による発電量が減ってきていると言う新たな問題が生じていると指摘しています。
その点で産経が今回の田中勝氏に取材したところ田中氏は「リサイクルした上で、汚れたプラスチックは燃やし」発電効率を高めることを薦めています。ごみ発電の効果を手放しで評価している点は、問題だと考えますが、(単刀直入に言わせていただくなら)今回の朝日のオピニオンに比べ示唆するものが大変大きい記事です。
ごみは本来的にいえば、出来るだけ資源として活用し、減らしていく。それが原則です。今後減って行くものを当てにして、電力活用してゆく、そのために多大な設備投資を行うと言うのは、基本的発想として間違っていると思います。
今回の田中氏の「プラスチックをもっと燃やせ」と言う主張は、環境省や地方行政が、世の中の資源リサイクルに進む方向や、住民、市民の声を無視して進めてきた路線そのものであり、それが破綻しつつある時に、これまでの路線をさらに進めろという行政追従の意見です。そのような意見を掲載する事が、ごみ問題の今後に繋がるとは、思えません。
開国を求められた幕末期に、徳川幕藩体制の維持を主張するような主張でしかありません。そうした主張も少数意見であることは事実ですが、朝日ご担当者がおっしゃるような「意義あり」の意見としてふさわしいとは考えられません。
多数意見、少数意見という見方で見た時、プラスチックを燃やせと言うのは確かに少数意見ですが、現実は権力を持ったものが、実行し広めてきた路線でもあります。
正面から議論すれば住民や議会の了解を取れないものを、事実を覆い隠したり、利益誘導を図ったりして、築いてきたのが、プラスチック焼却です。
すでに田中氏の意見が発表されてしまった現状を考えた時、それに対する「少数異見」を掲載する紙面を提供していただき、議論を起こしてゆく事が、田中氏の意見を生かす唯一の道ではないかと考えます。ぜひご検討ください。
② 読者への伝わり方について
私への連絡の中で、生ごみの堆肥化を熱心に勧められてきた方が、朝日の記事を見て、「朝日がプラスチックをもっと燃やせと言っている。プラスチックを燃やさなければ、ごみが燃えなくなるとも。燃えなくなれば生ごみを取り除き資源化すればよいのに、これでは、ますます自治体が生ごみ資源化から遠のいてしまう。」
とがっかりされていた人がいました。
オピニオンの「意義あり」の本来的な位置づけを、毎回記載しておく必要があると思います。
③ 今回の記載内容は、注意深く発言されながら事実と異なる点が2つあります。
*「日本のごみ発電は大半が小規模のため発電効率が悪い」
* プラスチックごみ発電は、再生可能エネルギーである
先日お渡しした文章に書きましたが、ごみ発電は小規模であるために発電効率が悪いのではなく、生ごみ等と一緒に燃やすために効率が悪くなる。20%以上の高効率のごみ発電として、きもいりで建設された越谷市にある東埼玉資源協同組合の焼却炉も20%を切っていると聞きました。ー-発電効率を高めるために、ボイラーの蒸気を高温にすると蒸気の通路となる機器に高温腐食が起こる。そのため〔多額の設備投資を行い〕オールステンレスにして高効率化を図ったが、それでも20%前後でしかない。ーー
* また今回の田中氏のインタビュー記事では、「プラスチックごみ発電は、再生可能エネルギーである」とまではっきり書いていませんが、そのようにしか受け取れないレトリックを使った表現になっています。
IPCCの議論の中で、ごみ発電は持続可能な再生可能エネルギーとして認められていない点についてはっきりと情報提供していただきたいと思います。
B) ごみ問題で報道されない本当の「少数意見」-ー正論報道を
ごみ問題でいえば、日本が世界の焼却炉の2/3を有する問題は、そのまま放置しておいてはいけない問題です。もし日本のあり方を、中国やインドが真似し、追随すれば地球環境の温暖化を進め、資源を循環活用する流れとは、まったく相容れなくなる方向に進む事になります。新聞、TVなどの報道のこれまでの報道が、少なからず、こうした日本の環境問題への鎖国状態を作ってくるのに寄与してきた事は間違いないと思います。
朝日のオピニオン「意義あり」は、こうした焼却大国を作ってきた常識に切り込む「意義あり」を掲載してもらいたいと思います。
その第1番目が、今回の田中氏の反論に当たる「プラスチックごみは、市町村の焼却炉で燃やすな」と言う内容になります。
現在のリサイクルに多くの問題があることは、事実ですが、田中氏が指摘している問題は、現状のリサイクルをよりよい仕組みにという指摘であっても、プラスチックごみを燃やせと言う結論に導くというのは、まったくの飛躍した論理です。容器包装リサイクル法のケミカルリサイクルをすれば、汚れた廃プラのリサイクルも可能ですし、リサイクル処理の値段が高いのは、マテリアル処理について所以のない優遇処理を行なったり、半分は廃棄してよいという環境省の政令・規則指導に原因があると私は考えています。(注1)(注2)
市民が分別し、洗って出している容器包装プラスチックが、マテリアル処理業者の下では、半分は捨てられ、燃やされたり埋め立てられたりしている。しかもそのようなマテリアル処理に、トン当たり3万円も値段を高くつけ、処理がずさんで値段が高いマテリアルを優先している現状の実態を、新聞が報道した事があるでしょうか?
第2番目としては、ごみ発電が、本当に温暖化ガス抑制策になっているのか?その点私も含め、専門家の考えとしては、ごみ発電はCO2増大策であるという結論です。東京23区の清掃一部事務組合が、廃プラ焼却を「サーマルリサイクル」と銘打って実施し、プラスチック焼却によってCO2は増加しても、ごみ発電や埋め立て処分場のメタン削減によって、CO2の増加量は微増ないし削減されるとした時、新聞、TVはこれらを検証することなくそのまま報道しました。
しかしその後の調査で、これらはまったく出鱈目でした。(注3)(注4)この点について報道したでしょうか?
第3番目は、自治体で進められるごみ行政の中で、市民が行政の職員とも協力しながら進めてきた分別リサイクルーーごみの減量資源化の取り組みへの歴史的・文化的な価値への評価が,新聞マスコミに見られないと言う事です。
その結果23区の廃プラ焼却-ごみの混合収集―混合焼却の問題を見逃してしまいました。(注5〕
さらに第4番目は、ごみ焼却による環境への影響、健康・生命への影響についてです。たとえば
* 焼却炉を止めたら喘息が減った
* 焼却炉から排出される有害物の松葉調査から分かった事
こうした観点から掘り下げた報道や検討がなされていないため、新聞記者自身の常識として「ごみは燃やすしかない」「ごみを燃やした時に出る有害物質は、ダイオキシンである。(だけだ)」「ごみ発電は、エネルギー回収できて環境に良い」等となっているように思えてなりません。
本当の意味での「少数意見」を今回の問題を切っ掛けに掲載して行くようにお願いいたします。
注1:「プラスチックごみは燃やしてよいのか」〔リサイクル文化社〕拙著容リ法改定運動への実践的提案 P189~
注2: 月刊廃棄物09年5月号 P64~「循環型社会形成のエース容リ法はどうなっているか?」
注3: 月刊廃棄物09年5月号P62~「ごみ発電は、『温暖化対策の柱』は世界の非常識」
注4: 日経エコロジー10年8月号「廃プラ焼却の本当の目的は、焼却炉の規模の維持ではないか」P66~
注5:「プラスチックごみは燃やしてよいのか」〔リサイクル文化社〕拙著 P3~「はじめに」
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参考資料:
朝日新聞平成22年7月24日付け15面【オピニオン 異議あり】
「プラスチックごみは、もっと燃やせ」リサイクルするより燃料として発電に利用する方が効果的(サステイナビリティ研究所長 田中勝)
田中勝氏プロフィール:
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会「委員名簿」
http://www.env.go.jp/council/03haiki/meibo03.html
中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会:議事要旨資料・議事録一覧、小委員会
http://www.env.go.jp/council/03haiki/yoshi03.html
「ごみ排出量減少→ごみ発電も減少 景気低迷と分別徹底が要因」産経ニュース 2010.5.3
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