原子力の識者がなぜ反原発を掲げるのか、京都大学原子炉実験所・小出裕章助教に聞く
2011-04-27 22:20
-------- 一部転載 ----------
──本末転倒なお話ですね。そしてその放射性廃棄物について、お聞きしたいと思います。現在すでに、国内だけで広島に落とされた原爆の120万発分の死の灰が溜まっていて、国外も合わせると膨大な量の死の灰が地球上にある、と。それは、人間の技術がこれだけ進歩し、最高峰の叡智をかき集めても、その処理方法は見つからないものなのでしょうか?
人類の歴史の中には「中世」という時代がありました。中世にものすごい発展を遂げた技術、学問に、錬金術があります。銅や亜鉛、錫が金にならないか、色んなことを調べたんですね。すごい技術です。酸を加えて溶かしてみたり、セラミックにしてみたり、酸化物、水酸化物をつくってみたり、色んなことをして物性の変化を調べていく。「よくあんな時代にこんなことを」というほど色んなことをやっているんですが、しかし結局錬金術は敗れるんです。銅は銅、金は金で、「お互いの元素の間の変換なんてできない」ということで敗退するわけですけれども、でも、錬金術は実際にできたんです。だってウランという元素があって、それを核分裂させたら他の元素が山ほどできるということを人類が見つけ出したわけです。まさに「現代の錬金術」を手に入れた。
ただ手に入れた途端に、作り出した物が放射性物質で、それが大変だということはすぐに気が付いた。人間が一番初めに原子炉を動かし始めたのは1942年です。それはマンハッタン計画の中で、米国がプルトニウムをつくって原爆をつくりたいと思った時、プルトニウムは自然界にはないので、人間が作るしかない元素です。要するに錬金術ですよね。ウランに中性子を吸わせたらプルトニウムという未知のものができると。そして「それが原爆の材料になるはずだ」ということで、原子炉を動かし始めた。でもその時には核分裂をさせる、この核分裂自身も錬金術ですけれども、プルトニウムをつくるということをやってしまうと、大変なことになるということは気が付いていた。「放射性物質を生み出すこと」は、できると。でも、「それを無毒化できなければこれから大変なことになる」ということで、その時から無毒化の研究が始まっています。だからすでに70年その無毒化の研究は続いていますが、原理的には可能です。ですから、錬金術はできるわけです。
ただ手に入れた途端に、作り出した物が放射性物質で、それが大変だということはすぐに気が付いた。人間が一番初めに原子炉を動かし始めたのは1942年です。それはマンハッタン計画の中で、米国がプルトニウムをつくって原爆をつくりたいと思った時、プルトニウムは自然界にはないので、人間が作るしかない元素です。要するに錬金術ですよね。ウランに中性子を吸わせたらプルトニウムという未知のものができると。そして「それが原爆の材料になるはずだ」ということで、原子炉を動かし始めた。でもその時には核分裂をさせる、この核分裂自身も錬金術ですけれども、プルトニウムをつくるということをやってしまうと、大変なことになるということは気が付いていた。「放射性物質を生み出すこと」は、できると。でも、「それを無毒化できなければこれから大変なことになる」ということで、その時から無毒化の研究が始まっています。だからすでに70年その無毒化の研究は続いていますが、原理的には可能です。ですから、錬金術はできるわけです。
──可能なんですか?
原理的には、です。筋道は70年前から見えてるわけですが、じゃあそれを実際に現実的に実行できるかというと、「できない」というのが、70年経っても解決できない、今の現状です。
──それは何が理由で?
いくつも理由がありますが、例えばセシウムという元素があります。今、福島でも問題になっている放射能があるわけですが、それはウランを核分裂させてしまうと、セシウムという核分裂生成物がたくさんできる。でも、じゃあ例えばセシウム137番を錬金術を使って無毒化したいと思うとします。するとまず核分裂生成物の中から分離をしていくわけですね。「セシウムはこっち来い、ヨウ素はあっちへ行け、バリウムはあっちだ、ランタンはあっちだ」と、色んなものをようやく分離できたとする。でもそこで、セシウムという元素の中には色んな質量数、つまり133番も134番も、136番も137番もある。元素として分離できるのは、質量数を問わないで、セシウムという元素をとってくるわけです。その中の「セシウム137をとにかく無毒化したい」と思って、それはできます。やり方はそこに中性子をぶつければいいんです。
──そこでも中性子なんですね。
また中性子をぶつけて、錬金術を使うと。それでセシウム137を消すことはできるけれども、でも集めてきたセシウムという元素の中には、セシウム137だけではなくて、134も133も132も、色んなものが入ってるわけです。137だけは中性子をぶつけて無毒化できるかもしれないけれども、他のセシウムはまた中性子を吸って、別の原子核に変わっていくわけです。その時に、また放射能を持った原子核に変わってしまう。137は無毒化できても、例えば134が135になって放射能になってしまう。だから、いくらやってもダメ、と。
──ずっと、いたちごっこなんですね。
次の解決策は、セシウムという元素として集めた物を、一つ一つ「137はあっち、134はこっち、133はそっち」というふうに分けることができればまたそこに可能性は見えるけれども、でもそれをやろうと思うと、ものすごいエネルギーがかかるんです。
──エネルギーですか?
要するに元素の中で、質量数の違う原子核ごとに分離をしようとすると、化学的な分離方法はもう通用しないんですね。同じ元素ですから、いわゆる同位体濃縮というものすごく大変な作業をしなければいけなくて、それをやろうと思うと、ウランを核分裂させて得たエネルギーを全部投入してもたぶんできない。だから結局無意味、ということになってしまいます。
──人類はすでに、延々と続くループの中に足を踏み入れてしまったわけでしょうか。
これから逃れるのは、「これ以上の核分裂生成物を生まない」ということしかありません。「原子力は使わない」という選択です。
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