たった今、青木泰さんから、「水銀による(23区)焼却炉停止事故とーその原因報道」に関して水銀問題追求レポート第1弾が入りましたので以下に掲載します:
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水銀問題−隠された問題追求第1弾
水銀汚染ー清掃工場操業停止問題の裏側
20100728
環境ジャーナリスト 青木泰
<水銀による焼却炉停止事故とーその原因報道>
23区廃プラ焼却検証市民実行委員会の会合(7月22日)に水銀問題が飛び込んできた。
その日の東京新聞の朝刊1面に「都内清掃工場−水銀で5焼却炉停止−ごみが9万トン未処理」と言う大見出しが踊る。「事業者が不正排出か」と言う小見出しもつけられていた。
概要は、
*23区の清掃工場で、今年6月11日から今月18日にかけて、排ガス中の水銀濃度が、自主基準値(1立方メートル当たり0.05mg)を越えて、焼却炉を停止せざるを得なかった。今も3清掃工場4焼却炉の稼動を停止している。
*この結果処理まちの量が、8万9千トンに上り、“限界値”の9万トンに近い。
*23区のごみを燃やしている東京二十三区清掃一部事務組合(清掃一組)は「これまでこれほど相次いだ事は無い。持ち込まれた水銀量は家庭ごみから排出されたと考えるには余りにも多い」と言う見解を発表し、事業者が不正に有害ごみを排出した可能性があり、不法投棄の疑いで警視庁に刑事告発することを検討すると意気込んでいる。
この件は、朝日新聞などは、21日にべた記事で報道し、東京新聞の1面トップの取り扱いのおかげで、大きく問題化しつつある。
この報道を受けて、環境総合研究所の鷹取敦主任研究員は、同研究所のホームページのコラムに見解を乗せ、まったく憶測で「事業者の不正排出」と言う見解を出した清掃一組とそれを疑うことなくそのまま報道した新聞社に疑問を呈した。
■東京23区清掃工場の水銀問題報道に隠された廃プラ焼却問題(その1)
鷹取敦 22 July 2010 独立系メディア「今日のコラム」
■東京23区清掃工場の水銀問題報道に隠された廃プラ焼却問題(その2)
鷹取敦 22 July 2010 独立系メディア「今日のコラム」
<事業者犯人説の根拠は?>
東京新聞の1面報道の翌日(7月23日)の「こちら特捜部」では、この問題を連続して取り上げ、なぜこのような事故が起きたのかを京都大学の酒井伸一教授や「止めよう!ダイオキシン汚染東日本ネットワーク」藤原寿和事務局長に取材している。2人とも環境省が焼却炉の煙突から排出される排ガス中の水銀規制や重金属規制が行われていない実情に規制を設ける必要性を訴えているが、今回の事態について酒井伸一教授は、「事業系のごみが疑われるのも無理が無い」としている。
しかし事業者犯人説の理屈は、風が吹けば桶屋が儲かる程度の理屈でしかない。
清掃一組は、自主規制値を超えるような事態は、1時間に200gもの水銀の投入があって、それを燃やした時に起きる。200gもの水銀は、蛍光灯で言えば、2万5千本になる。従って家庭からの排出は考えられないと言う。しかし水銀を200g入れても、途中のバグフィルターや活性炭フィルターなどで、ほとんど取りきれ、排ガスとして出てくる分は、0.05mg/1m3でしかないと言う清掃一組の説明根拠はどこにあるのか?このような物質収支を追いかけた実験をどこでやったのだろう。そのような事例は聞いた事が無い。
廃棄物に混入している重金属の割合をあらかじめ測定し、想定した混入量が、焼却過程のバグフィルターの飛灰(煤塵)、活性炭フィルターや焼却灰、汚水汚泥そして煙突に流れる排ガス中でどのように採取されたのかを追跡するのが、物質収支の実験である。
実験した事例として、京都市の溶融炉導入実験があるが、その時にはカドミウムや鉛でさえ、途中でほとんど捕捉されず、90%以上揮発し、排ガス中に放出されていた。
この事例を基に考えると煙突から排出されるとほぼ同一の量を、燃やすごみに混入するだけで、自主規制に引っかかる事になる。
とすると1時間当たり200gと言う高いハードルではなく、もっと少ない量でも、自主規制値に引っかかるとしたら、事業者犯人説は的外れとなり、今後も同様の事故を繰り返す事になる。
実際家庭で使用されていた旧式の水銀製の体温計で水銀混入量が1g。これらが、数本入るだけで、水銀濃度が異常値を示したと言う清掃現場の報告もある。ましてや水銀製の血圧計は50g以上ある。 今は製造していないものでも、廃棄物は製造しなくなってから10年、20年後に捨てられる事はある。
<最大の犯人は、廃プラ焼却によって、分別の仕組みを壊した事>
これまで不燃ごみにしていたものを“分からなければ可燃ごみにしてください”と可燃ごみとして捨てる事を進めてきた二十三区と廃プラ焼却を進めた清掃一組。
今回の何でももやせるごみにと言う指導によって、クリーニング用のビニールコートした針金のえもん架けが燃えるごみとして多量に投入され、それらが、直径20センチもの金属の束となって、蛇のようにとぐろを巻いて、焼却炉を停止させた事故や焼却炉の停止に伴う死亡事故も知られたところである。
何でも燃やすほうに誘導する行政指導の下で、これまで捨てかねていた血圧計や体温計が多量に捨てられ、今回の事故に繋がった可能性のほうが、大きいのではないかと考える。
また清掃一組が実証確認試験を行ったデータを23区廃プラ焼却検証市民実行委員会で改めて検証し、環境総合研究所が整理したデータ(*1)を見ると、
http://eforum.jp/waste/ikedatakatori-tokyo23ku-plasticincineration1012.htm
http://eforum.jp/waste/ikedatakatori-tokyo23ku-plasticincineration1012.htm
(1)可燃ごみ中には、かなりの総水銀が含まれている。
数値的には、過半が0.1~1 mg/kgの間にある。
23区の焼却炉の1基当たりの処理量は、日量で150トン~600トンであるので、一基当たり、15g~600gの間で水銀の混入があり、時間当たりでも0.6~25gの混入が、普通だった事になる。
(2)廃プラ中に含まれる総水銀は、全体平均で0.2mg/kgあり、その他の可燃物の約3倍、紙類の6~7倍の含有量である。
(3)可燃ごみ中への廃プラの混入率は、廃プラ焼却実施後13~22%に増えている。(これまでは約6%)
(4)廃プラ焼却実施後総水銀の「焼却灰」中の濃度は、4箇所の工場で実施前に比べ大幅に増加している。
(5)廃プラ焼却実施後総水銀の「飛灰中」の濃度は、港区と墨田区の清掃工場を除き、実施前に比べ増加している。
以上まとめると廃プラには、水銀含有量が多く、廃プラ焼却によって、可燃ごみ中に含まれるプラスチックの量は、従来の3倍になり、焼却灰や飛灰に含まれる総水銀の濃度は、大幅に増加している。廃プラをすべてリサイクルした港区が、飛灰中の濃度を減らしているのは、象徴的である。(*2)
焼却灰や飛灰中の総水銀の量が、増えていることから、排ガス中の総水銀がそれ以上に増えているのは、容易に類推できる。その意味では、今回の水銀濃度が自主規制値をオーバーしたのは、事業系の違法な排出を持ち出すまでも無く、廃プラ焼却だけで理由が説明できる可能性がある。
これまで、全国で行われている廃プラ焼却で、同様の問題が指摘されていないのは、排ガス中の重金属の測定が,他では行われていないだけの話である。
廃プラ焼却の見直しは、必死であると考える。
*1「東京二十三区清掃一部事務組合が実施した『廃プラスチック混合可燃ごみの焼却実証確認』についての評価報告書」
*2 飛灰中に含まれる水銀量は、廃プラ焼却前と後では、少数の例外を除いて水銀量が増えているが、廃プラ全量リサイクルした港区が、その数値を約1/3に減らしているのは、特筆される。
追)
私のほうに藤原寿和氏から送っていただいたメールを添付します。
この件は、7月22日の東京新聞の朝刊1面で大きく報道されました。
ー下記環境総合研究所の鷹取氏の報告文書をご覧ください。
そして翌日7月23日に東京新聞で再び報道されました。それは、添付ファイルをご覧ください。
東京23区のごみの焼却を担っている清掃一部事務組合の見解では、
事業系のごみー事業者から不法に投棄されたごみのせいで、水銀濃度が自主規制値を越えたということですが、事実は、廃棄プララチック焼却後、頻繁に水銀濃度が高くなるというのは、起こっているようです。
私は、廃棄プラ焼却のため、
(1)分別のルールが壊れ、プラを含むものは何でも燃やしてよいことになった。
(2)そのため水銀を多量に含む体温計や血圧計も可燃ごみに混入することになった。
(3)プラ製品には、重金属が含まれるため、燃やされるプラの増大によって必然的に・・・排ガス中の水銀も増えた。
と考えています。
なお環境省の規制では、ごみ焼却場では重金属の排ガス規制を行っていないため、ほかの自治体で、同様の環境汚染があっても東京のようにチェックされることはありません。
20100727
青木泰
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
皆さま 藤原です。
水銀混入ゴミで焼却炉が停止いている問題について、東京新聞の本日付朝刊「こちら特報部」(27、28面)に詳細に取り上げられています。私と京都大学の酒井伸一教授のコメントが掲載されていますのでご覧ください。この件で、昨日佐藤さんに23区清掃工場における水銀等の測定結果の詳細を過去5年間にさかのぼって開示請求をしていただくようにお願いしました。
折しも来年1月には水銀排出抑制条約(いわゆる“水俣条約”)締約国会議(管理理事会)が日本政府の主宰で開催されるにあたり、化学物質問題市民研究会では海外の水銀ゼロ規制ネットワークなどの国際NGOを招請して今年12月5日か6日に日本で国際シンポジウムを開催することが正式に決定されました。これには原田正純医師を特別ゲストに招請をしてほしいとの海外NGOからの強い要請があり、目下原田医師に打診中です。
ちょうどいい機会ですの、今回の問題を契機に、上流側の水銀等重金属対策を求めていきたいと思います。
また、環境総合研究所の鷹取さんが以下の文章を書かれていますので併せてお読みください。
■東京23区清掃工場の水銀問題報道に隠された廃プラ焼却問題(その1)
鷹取敦 22 July 2010 独立系メディア「今日のコラム」
■東京23区清掃工場の水銀問題報道に隠された廃プラ焼却問題(その2)
鷹取敦 22 July 2010 独立系メディア「今日のコラム」
■2010年7月23日付東京新聞(朝刊)「こちら特報部」.pdf
http://docs.google.com/fileview?id=0BzopYmjFsal1ZTA5MzBiZmUtZDQ2NC00MDdmLWE0OWQtODNmODA0MGNlMThk&hl=en
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水銀で停止した光が丘清掃工場を訪問した練馬区の区議池尻成二さんも「"犯人"は?」でこんなことを書いています。
http://ikejiri.exblog.jp/13631714/ 池尻成二さんのブログその他水銀・清掃工場関連記事は、、
http://ikejiri.exblog.jp/i5/ ーーーーーー
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