廃プラ焼却検証市民実行委員会は、都の清掃工場での水銀汚染事故に関して、昨日
1)23区清掃一組宛に「質問状」を提出、
2)都知事、23区一組、23区区長会会長・各区長宛に「要望書」を提出、
3)これら文書と添付資料に基づき都庁で記者会見を開催しました。
以下が、その関係文書と資料です。
ーーーーーーーーー
水銀問題―
質問状と要望書&資料
2010年10月28日
廃プラ焼却検証市民実行委員会
連絡先:03-5938-2720
ーーーーーーーーー
目次
1) 東京二十三区清掃一部事務組合管理者への質問状、P3
2) 東京都知事、東京二十三区清掃一部事務組合管理者、二十三区区長会会長・各区長への要望書、P7
3) 資料
資料1:「水銀混入ごみによる複数清掃工場焼却炉の停止について」(東京23区清掃一部事務組合、H22年7月21日)、P9
資料2:東京新聞2010.7.22朝刊1面、P10
資料3:都政新報2010.7.20、P11
資料4:「水銀混入ごみ不適正搬入に係わる持ち込み排出源の調査結果」清掃一組発表、P12
資料5:「各区の水銀混入ごみへの対策指示一覧」(23区廃プラ焼却検証市民実行委員会作成)、P13
資料7:東京新聞2010.7.23「こちら特報部」、P17
資料8:「水銀の排ガス自主規制値を超える水銀投入量の試算」(環境総合研究所作成)、P19
資料9:物質収支について、「一部開示決定通知書」(20101014)清掃一組の開示内容と清掃一組への開示請求、P20
資料10:「多摩地域のごみ実態調査」(20年統計)より「有害ごみの処分内訳」三多摩市町村調査会作成、P22
資料11:清掃一組維持管理記録より、事故当日4清掃工場の水銀排ガス量 、P23
資料12:清掃一組「廃プラ混合可燃ごみの焼却実証確認」のデータから作成。「清掃工場の可燃ごみ中の水銀量と飛灰中の水銀量-廃プラ焼却前と後」(環境総合研究所作成)、P27
資料14:「
NGO国際水銀シンポジウムー水俣病と世界の水銀」と「開催趣旨と賛同のお願い」化学物質問題市民研究会チラシより、
P36
資料15:「EUの水銀等重金属規制とその内容」(環境総合研究所)別紙
ーーーーーーーーー
pp 3−6
東京二十三区清掃一部事務組合管理者様
<前書き>
23区の4清掃工場で、今年6月11日から7月18日にかけて、排ガス中の水銀濃度が、自主基準値(1立方メートル当たり0.05mg=50μg)を越えたため、焼却炉5基が停止した。その結果、処理待ちの量が、8万9千トンに上り、1時期“限界値”の9万トンに近くなった。
23区のごみを燃やしている東京二十三区清掃一部事務組合(清掃一組)は
「これまでこれほど相次いだ事は無い。持ち込まれた水銀量は家庭ごみから排出されたと考えるには余りにも多い」
と言う見解を発表し(資料1)事業者が不正に有害ごみを排出した可能性があり、不法投棄の疑いで警視庁に刑事告発することを検討すると発表した(資料2、資料3)。しかし今日に至るまで刑事告発できていない。
その後、清掃一組は、「水銀混入ごみ不適正搬入に係わる持ち込み排出源の調査結果について」(9月10日)を発表し、不正排出した事業者の
「原因者の特定に至る結果は得られず、特定につながる有力情報もうることはできなかった」とし、「廃業した工場・病院」に加え、
「一般家庭等が排出源となる可能性も否定することが出来ない」とした。(資料4)
当初否定していた家庭からの排出も水銀汚染事故の原因である可能性を認めている。そしてそれに合わせるように、各区は、水銀混入ごみ(体温計、蛍光灯、電池等)を可燃ごみに入れない処置を区民に訴え始めている(資料5)。
しかし水銀事故の原因を事業者による不正排出としたまま、対策を家庭系の水銀混入ごみを可燃ごみに入れないようにするというのは、原因と対策がちぐはぐであり、区民の十分な協力を得られず、事故を繰り返す怖れがある。心配通り、9月16日には、再び足立清掃工場が自主規制値を超えストップした。
そこで以下の質問状を清掃一組と23区区長会に提出する。
<質問>
質問1: 水銀汚染の原因は、廃プラ混合焼却にあるのでは?
清掃一組は、廃プラ焼却による実証確認調査の調査項目として、排ガス中の重金属については、調査項目から外してきた(*1)。しかし今回自主規制値(といってもEUの規制基準値)を越え、測定器の検出限界を超える水銀の排出があった。
清掃一組は、今回の水銀汚染事件の原因は、水銀混入ごみ―体温計、血圧計、蛍光灯、電池―が燃やすごみに入ったためとし、23区はその見解を受けて、こうした水銀混入物を燃やすごみに入れないように通知している。
① 現状の可燃ごみの中に、こうした水銀混入ごみは、どの程度入っているのか? 調査はしているのか?
② 水銀汚染問題は、結局廃プラの混合焼却によって、分別の規律が壊され、燃やすごみに水銀混入ごみが入った事によると考えられるが、どうか?
質問2:松葉中の水銀調査でも清掃工場周辺の水銀濃度が高いことは予想されていたが。
東京23区南部9区において実施された松葉中の重金属類調査において、すべての地域で水銀が検出限界を超えて検出された(資料6)。この調査は、各区の広域的な平均水銀濃度を把握する目的で行われ、南部地域全体で0.02μg/gの水銀が検出された。都内の広域地域のどの地点にも万遍なく水銀を排気する排出源として、考えられるのは都内に21箇所もある焼却施設である。
今回の水銀問題は、改めて水銀汚染の排出源としてごみ焼却施設があることを裏付けたと言えるが、どのように考えるか?
質問3: 事業者犯人説の矛盾とその意図は?
清掃一組は、今回の水銀汚染の原因は、大量に水銀が排出されないと起こらないことから、そのような可能性を持つ事業者が不正に排出したことが原因、と発表した。しかしこの説は、次の点で矛盾がある。
① 事業者は、その事業所の存在する区の清掃工場か、区の指定する清掃工場に可燃ごみを持ち込むことになっている。したがって一つの事業者が、4つの工場に分散して、水銀を廃棄するというのは、システム上不可能で、4つの別々の事業者が、同一時期に、不正排出をしたということになり、無理な説明となる。
② 今まで起こらなかったこうした水銀汚染事故が、なぜこの時期に起きたのかの説明がない。
③ 清掃一組は、不正排出をしたと考えられる事業者をその後警察に訴えたということを聞かない。
④ 今回の対策として家庭から出す水銀混入製品を燃やすごみに入れないように注意している。
清掃一組は、当初事業者による不正排出を今回の水銀汚染事故の原因としていたが、家庭から出される燃えるごみに水銀混入ごみが、混入していた事が本当の原因と考えているのではないか?
質問4: 水銀200g/h程度の投入では、今回のような規制値オーバーは、起こらないは、科学的根拠があるのか?
清掃一組は以下のように説明している。
「1時間あたり、200g程度の水銀ならば、自主規制値(50μg/Nm3)の1立方メートルあたり0.05mgを超えることはない」<東京新聞「こちら特報部」(10年7月23日)>(資料7)
そこで医療機関で使う水銀血圧計で40g、水銀体温計が1g。200gは、蛍光灯で言うと約2万本になると説明し、この点が家庭系のごみが原因ではなく、大量に捨てる事の出来る事業者が犯人だという説の最大の根拠となっていた。
しかし専門家に聞いても、200gの論拠について疑問が出ている(資料8)。
また、清掃一組は、焼却炉で水銀を燃やしても、バグフィルターや活性炭そして、途中の洗煙装置で洗い流され、途中で除去されるため、殆ど煙突から排出される排ガスに水銀は、含まれなくなると説明している。しかし水銀は400度で気化しガス状になるため、殆ど煙突から出るガスに混じってしまうと言う専門家の見解もあり、実際のところは、物質収支(*2)を確かめるしかないが、清掃一組は、その検証も行っていなかった(資料9)。
200g/h程度の投入で規制値をオーバーしないという科学的根拠はあるのか?
質問5: 蛍光灯や電池、体温計など有害ごみの取り扱いは、現状でよいのか?
ごみ問題は、有害ごみの分別除去から始まる。普通の自治体は、蛍光管や電池や水銀体温計などは、有害ごみとして分別収集している。たとえば同じ東京でも三多摩各市は、水銀混入ごみのような有害ごみは焼却も埋め立ても行っていない(資料10)。ところが、東京23区は、これまでこれら有害ごみを不燃ごみとして収集し、埋め立て処分していた。
今回の廃プラ焼却では、プラスチック製品を可燃ごみとしてしまったため、プラスチック製の電子機器が内蔵する電池は、殆どの場合、取り除かれず燃やされている。国内では、水銀フリーの電池が主流になっているが水銀フリーの電池にも依然として水銀は含まれており、さらに使われている電池には外国製もあり、どれだけ水銀が含まれているかは、国立環境研究所でも調査はしていない。また燃やされるごみに、蛍光管なども混入し、水銀濃度が増えることは大いに考えられる、と言うのが専門家の見方である。こうした点を調査したのか?
以上ご質問いたします。
回答は11月15日までによろしくお願いいたします。
<資料・注>
資料3:都政新報2010.7.20(電子データ未入手のため添付不可)
資料6:「東京都内の大気中水銀濃度の推移」と「23区南エリアの松葉中水銀含有濃度の測定結果」(環境総合研究所作成)(電子データ未入手のため添付不可)
資料8:「200g説の根拠の検証ー足立清掃工場を例としたときの水銀投入量の推定」
(電子データ未入手のため添付不可)
資料9:物質収支について、「一部開示決定通知書」(20101014)清掃一組
(電子データ未入手のため添付不可)
*1:環境省見解、“ごみの焼却施設では、重金属の素になるものは、燃やしていない。たとえ混入してもバグフィルター等で除去され、環境中には影響を与えない”に従っての判断であった。
*2:「物質収支」では、焼却炉に投入した水銀「100」に対して、煙突からどれだけ排出されるかを数値で表現する。ごみの焼却施設の場合、ごみの中に混入している水銀は、焼却炉で大方が気化しガス状になって、冷却装置、バグフィルター、活性炭を通過し、煙突から排出される。それらの途中で、いくばくかは捕捉され、焼却灰や排水汚泥の中にも残存する。これら途中で捕捉されたものと残存したものと、煙突から大気中に排出される排ガス中の水銀量を足し合わせると合計が「100」になる。科学的な実証実験をすれば、投入した水銀「100」に対して、排ガスとして、どれだけ出てゆくかが分かる。
ーーーーーーーーーー
pp7−8
東京都知事様
東京二十三区清掃一部事務組合管理者様
東京二十三区区長会会長・各区区長様
<要望主旨>
1) 水銀事故調査委員会を創り、水銀事故の原因を見定め、抜本的対策を採ること
2) 水銀混入ごみは、焼却せず、埋め立てず、分別回収すること
3) ごみの焼却に伴い排出される水銀を含む重金属は、排ガス規制を条例で設け、国の規制にもなるように働きかけをすること
<要望理由>
本日東京二十三区清掃一部事務組合(以下清掃一組)管理者に提出しました質問状に加え以下理由を述べます。
1) 水銀の毒性を考えたとき、このまま曖昧にすることができない。
原因は、「多量に廃棄する事業者」、「刑事告発を考える」としながら、実際の対策は、家庭から出される水銀混入ごみを燃えるごみに入れないというのでは、ちぐはぐ過ぎる。各工場の事故当日の維持管理データ(資料11)を見ても、水銀排ガスが、煙突から大気中に継続的に排出されていることが分かる。このまま放置することはできない。
2) 清掃一組の調査でも、焼却ごみの調査で水銀混入が見つかっている。
清掃一組が行った「廃プラ混合可燃ごみの焼却実証確認」でも可燃ごみの中に水銀が含まれ、(資料12-1/2)飛灰中には大量の水銀が含まれていたことが見つかっている。廃プラ焼却後、水銀混入量がほとんどの清掃工場で増加し、倍以上になったところもある。(資料12-2/2)
3) 公平中立で、透明性のある第三者機関による水銀調査委員会を
今回清掃一組に情報開示請求を行ったところ、3件(①事業者への聞き取り調査、②工場長会議の記録、③1時間当たり200gの投入説の根拠)について、90%以上黒塗りにした開示が行われたり(①&②)的外れな資料が開示されたりしている。第3者的水銀調査委員会を責任主体である各区の下に、都民への環境・健康上の影響を考え、東京都もバックアップして作っていただきたい。
4) 流通している電池は、水銀フリーではない。
現在生産されている国産の電池は、水銀フリーとなりつつあるが、ごみは過去に生産されたものも排出され、海外製のものは、国の研究機関でも未調査である。東京都の「環境科学研究所年報2004」記載の論文(資料13)でも、アルカリ電池には国産海外製品を問わず高濃度の水銀が含まれていること他が記載されている。
ところが今回の水銀事故を受けて、各区の取った対応は、「各区の水銀混入ごみへの対策一覧」(資料5)でもみるように、電池については、販売店に回収することで済ませ、他の水銀混入ごみと同様不燃ごみに入れ、「可燃ごみにしないように」との指示すら行っていない。
5) 国連環境計画(UNEP)で2013年水銀条約を結ぼうとしている
水俣病の悲惨な経験を経た日本としては、二度と水銀事故を起こしてはならない。2013年に向け、日本でも「NGO国際シンポジウムー水俣病と世界の水銀」が行われる(2010年12月04日)中で、東京都には、日本の首都として、排出規制や分別回収にしっかり取り組んでいただきたい。(資料14)
6) 清掃一組の自主規制値は、EUの規制値と同じ
清掃一組の自主規制値は、すでにEUの規制値になっている。(資料15)
今回の事故をきっかけにして、まず東京都の条例で規制を行い、国の規制につなげてもらいたい。
資料14:「
NGO国際水銀シンポジウムー水俣病と世界の水銀」と「開催趣旨と賛同のお願い」化学物質問題市民研究会チラシより
資料15:「EUの水銀等重金属規制とその内容」(環境総合研究所)