2014年6月17日火曜日

20140617 青木泰さんからのメール「福島での指定廃棄物焼却問題について—鮫川爆発&同意書偽造他」



差出人: 青木泰
日時: 2014年6月17日 11:39:25:JST
件名: 福島での指定廃棄物焼却問題について—鮫川爆発&同意書偽造他


皆様へ(BCCでお知らせしています。重複送信失礼します。)
お世話様です。
福島での指定廃棄物他汚染廃棄物御焼却問題が、これまで福島連絡会の皆さんを中心に取り組まれてきています。
私も今年2月に郡山市の復興資金流用化問題での学習会以降、3月23日の同会主催の学習会などに参加し、4月には、再度参加し、議論もさせていただきました。
そこでの議論の内容を今後に向けて少し整理しました。
添付しましたので、ご笑覧いただければ幸いです。
青木泰

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福島での指定廃棄物他の焼却問題について 
        2014614日  環境ジャーナリスト 青木泰
  
 はじめに
426日の郡山市での福島連絡会による焼却問題の講演会で、議論になった鮫川問題と、住民活動側からの焼却に代わる対案問題について、お伝えします。
関連して、環境省との交渉(523日―参議院会館-環境省レクチャー)で鮫川問題がどのように話し合われたのかもお伝えし、この情報を今後の活動にどのように生かすかを考えたいと思います。(*1:IWJ報告 「スクープこれが法治国家か」佐々木隼也、岩上安身(http://iwj.co.jp/wj/open/archives/145861)参照)
住民側からの対案、焼却しないでも減容化はできる件については、414日の岩手県学習会での私の提案も報告しながら、明らかにしたいと思います。

1.     議論になった要点
議論になった要点は、鮫川村の現状をどのように把握するかということと、焼却に対しての我々の対案は?という2点です。
元々323日に開催された福島連絡会と326政府交渉ネット共催の学習会に出させていただき、学習会の今後の進め方への1提案として、私の方から下記3点を提案させていただきました。
   郡山リサイクル協同組合の産廃焼却事業に対して、周辺住民から訴えがあるので、この問題を緊急課題として取り上げる
   鮫川村での実証事業と塙町でのバイオマス発電の闘いがどのように進んできたのかを、共有し、今後に生かして行く
   福島における指定廃棄物焼却炉建設の実態報告や闘いの現状報告を受け、
それに対しての対策対処を考える。
    この提案も加味していただきながら、4月最初に和田、深田、森園そして青木で今後の進め方について、スカイプを使って話し合いが行われ、私の提案も説明させてもらいました。(藤原さんは、八丈島に出張中だったため、参加できず。また①や③については、私が提案するまでもなく、福島連絡会でも準備されていたものです。)
     4月は、坂本弁護士からお話を聞くことが決まっているので、5月以降に検討することになりました。
    参加された方々は、お分かりのように4月の学習会は、福島連絡会や326政府交渉ネットから現状を坂本弁護士に報告し、その現状報告に坂本弁護士にコメントを頂くこと、その上で、坂本弁護士から「公害調停」や「公害裁定」についてのレクチャーを受け学習会を進める形になりました。
午前中は、和田さんから福島県内の指定廃棄物の焼却炉建設の状況が、大きくは4つの地域に分けて、報告されました。
又午後一番には、鮫川の状況が和田さんから報告され、私もそれに加えて、コメントし、情報交換する形になりました。
またその後の討論の中で会場から重要な提案、焼却反対ならば、我々の対案はどうするのか?という点について質問が出されました。
この2つについて、議論の上で課題が残ったように思いました。
鮫川問題については、和田さんから環境省が「爆発事故」があったにもかかわらず、それを認めず、遂には、再稼働を始めたことが報告されました。
この話に加え、私の方からは、昨年の117日の山本太郎事務所の設定による環境省交渉に際し、爆発の有無について環境省がはっきりと否定できず、今年1月に山本事務所による質問主意書では、「爆発」を認めた回答を返答してきていること。またその交渉の際に出された承諾書偽造事件の件についても私の方から出しました。
これに対して和田さんの方からは、環境省のHP上は、まだ「爆発」を認めていないという発言がありました。
また焼却に対して我々の方からの対案があるのかという質問に対しては、私の方から放射能汚染された剪定枝や草などの有機物については、生ごみの堆肥化や乾燥処理と同様の手法で、減容化を図ることができることを話しました。そうすれば、放射性物質を大気放出することもないと。(乾燥処理は、除湿型乾燥処理)
これらについて十分話が練れなかったので、改めて今回ご報告させていただきます。

2.     課題は再稼働をどう中止させるか
<私の立ち位置>
 ここで私がお話しできるのは、和田さんや深田さんなどによる福島連絡会のこれまでの取り組みがあり、講演会に私も呼んでいただいたからです。
いろいろと意見は言いますが、最終的にどのような方法を選択するかは、実際にやっている方たちが決める問題だと考えています。もちろん国や行政機関の理不尽なやり方に抗議し、それを跳ね返すための市民による組織なので、お互いの主張に十分耳を傾け、民主的なやり方で進める形で在ってほしいと私は願っています。
その上で、私や藤原寿和さんは、何十年も廃棄物問題に取り組み、実戦経験も持っています。そこで気が付いたことを遠慮なく述べさせていただき、より良い選択に繋がればと考えています。私が3.26政府交渉ネットとして、学習会に係わる立ち位置はそのようなものです。
鮫川問題で、現状どこまで来ているかをはっきりさせたいのは、私たちの取る手立てが、「裁定」や「調停」に頼るしかないか?それ以外にも方法があるのかに係わってきます。
坂本弁護士からもお話があったように、「公害裁定」「公害調停」は、結局第3者の専門委員に委ねることになり、委ねる第3者の資質に大きく左右されます。そこで過度に期待できるわけではありませんが、行政施策の酷さをチェックする手法として、もちろん検討する必要はあります。その際行政の不当性や違法性について、どれだけ事実提示できるかが大事になると考えます。
今回の鮫川問題は、爆発事故や地権者からの承諾書の偽造の件にしろ環境省自身が、嘘を言い、法律違反を犯し、違法な手続きを取っている問題です。
従ってこの違法性や不当性をはっきりさせれば、この問題で追及できる別の切り口が見つかり、場合によっては鮫川の実証実験を中止させることができると思います。
環境省の指定廃棄物の処理における鮫川の位置は、鮫川で実証実験を行い、他での指定廃棄物も安全に処理できることを証拠立てるというのが建前です。
従ってそこでの瑕疵(かし)は、環境省が指定廃棄物の焼却処理を進めること自体の見直しに発展する要素を持っています。

<爆発問題の到達点>
「爆発問題」が、今回この種の問題で、画期的だったのは、消防庁が爆発の事実を認めたことです。今年1月に出された山本太郎議員の質問主意書への答弁でも、消防庁が「爆発」と認めたことが書かれ、現場の事業所の責任者が、「爆発=火災」と思わなかったため、届けなかったと釈明されています。
がれきの広域処理問題でも、国や都道府県、市町村など行政機関の酷い対応を目の当たりにしました。
市民活動や住民活動は、その行政の不当性を広く訴え、抗議してゆくことが、基本ですが、その行政機関をチェックする第三者的組織を作ったり、活用できるようにしてきたのが、戦後民主主義の大きな特徴です。
そこで行政の問題点を、情報公開請求で調べ、請求に対して黒塗りなどの非開示対応には、情報公開審議会などに異議申し立てを行い、また行政の不法・不当な施策に対して、監査委員会に住民監査請求などを請求し闘ってきました。行政自身による法令を外れた違法・不当な行為を、合法的にチェックしてきたのです。
そしてケースによっては、行政による不当な施策をストップすることが出来ました。
警察・消防は、自治体に付属した組織ですが、行政機構との直接の指示命令系統にはおかれず、独立の組織です。従ってこれらの組織への訴えも、場合によっては有効になります。行政が行っているからと言って、それらの組織が、嘘や詐欺行為を見逃せば、社会は法的な秩序を失い、行政機関が肥大した官僚独裁国家になってしまいます。
情報公開審議会や監査委員会、そして公害調停や公害裁定、そして警察などへの訴えは、止めどもなく腐敗に転落する行政機関へのチェックとして、住民活動と共に必要なことです。
鮫川の爆発事故に戻ってまず質問主意書への回答が占める重要性について考えたいと思います。
質問主意書は、衆参それぞれの議員が行政府に対し、衆参議会議長を通して質問する形を取ります。つまり国会が行政府=内閣に聞く形を取っています。
従ってここでの答弁の内容は、行政府の正式見解です。そこで火災についての所管である消防庁の「爆発」という見解が示されたというのは、それが国の見解と言うことです。
我々の次にとる手立ては、その事実に基づき、これまで爆発でないと言ってきた環境省の責任を問い、責任を取らせることです。
消防庁は、「爆発」、環境省は「爆発でない」という見解を示していると、プロメティウスの罠で、書かれていますが、事態はもっと前に進んでいます。もし環境省がそのような見解を示せば、環境省は国の中に別の国家を抱かえているということになります。
環境省のHP「ホームページ上」「爆発」を認めていないのは、環境省が国の方針に従っていないということになり、そのような中途半端な総括しか行っていないのに再稼働を始めたという大きな証拠になります。
国の所管官庁である消防庁が、「爆発」と認めた以上、「爆発」でないと言ってきた環境省に釈明を求め、業務委託していた「日立造船」の責任、その責任を問うことなく、委託を継続している環境省の姿勢へと批判を進めて行くことが必要かと思います。
私たちはその様な立場で山本事務所の設定で、環境省交渉(環境省レク)を持ち、この点につき尋ねてゆきました。
(*1:IWJ報告 (http://iwj.co.jp/wj/open/archives/145861)参照)
なお先日入手した情報公開資料によると、日立造船から環境省や福島県労働局に報告された資料には、爆発の後に変形したカバーや扉の部分の写真が掲載され、注釈として高温燃焼の後が見られないという報告が行われています。
コンベアーのカバーを大きく裂き、ぶ厚い扉部分の鍵を吹き飛ばした爆発に高温燃焼がないはずはありません。もしこの記述のように高温燃焼の後が残っていないとしたら、それ自体、証拠隠滅を示す動かぬ証拠となるでしょう。
消防庁の調査でその点の見落としは考えられず、消防庁の現場報告とこれらの報告を照らし合わせれば、環境省と日立造船による爆発現場の証拠隠滅さえ浮かび上がる問題だと、考えられます。
指定廃棄物の焼却の実証実験中に「爆発」を起したことは、その実験がいかに危険かということであり、(*2:「福島・鮫川村で進むあまりにも強引な焼却炉「再稼動」計画」 ジャーナリスト関口威人:http://bylines.news.yahoo.co.jp/taketosekiguchi/20131027-00029260/
その情報を隠した環境省の対応からは、安全性を保障するという対応はかけらも見えないと言ってよいと思います。爆発問題での情報を整理し、攻め口を考えてゆくことは大事な課題です。

3.     反対地権者の同意承諾書の偽造
<同意書偽造の概要>
鮫川村では、爆発事故の問題だけでなく、環境省が地元の自治体と連携して、詐欺師まがいのことを行っていた事実がよりはっきりしてきました。
環境省が指定廃棄物の実証実験用焼却炉の設置場所としたのは、当該地の地権者らが作る「青生野協業和牛組合」が管理する共有農地であり、地権者から賃貸借して設置したことになっています。
その農地の使用にあたって、地権者の同意承諾の上、契約書を交わした上で、使用することが必要でした。しかし環境省は18名の共有地権者の内、16名分しか同意承諾を取っていなかったことが、先の質問主意書で分かりました。しかもその手続き過程で同意書の偽造まで図られていたのです。
(*3、*4)
この偽造問題では、偽造された地権者の一人が、棚倉の警察署に2013年9月19日に刑事告訴し、その告訴が受理され、捜査の結果今年520日に検察に書類送検されていた事実も分かりました。

<民法上は全員の同意が必要>
当該地の地目は、牧場(=農地)となっています。この共有農地を取り扱う時には、民法上次の3つの措置があり、それぞれによって、了解の取り方が異なります。
   保存行為
   管理行為
   変更行為
保存行為とは、農地の保存のために個人が判断してできることです。管理行為とは、草刈りや耕作などで、この場合は、過半数の承諾で進めることができます。
変更行為とは、物理的な形状変更、山林の伐採、家屋の増改築などで、この変更行為の場合、共有地権者全員の了解が必要になります。
今回の鮫川村での実証事業の場合、仮設焼却炉の建設、導入道路の建設などがあるため、明らかにこの変更行為にあたります。すなわち全員の同意承諾が必要になります。
ところが、当初から地権者の何名かは、この計画に反対を表明していました。そのため普通に考えれば、今回の計画は進めることが無理な計画だったのです。
〈賛成派地権者が同意書偽造〉
ところが、今回の環境省の計画に賛成した地権者の一人は、2名いた反対派地権者の承諾書を偽造し、鮫川村の村長宛てに、全員が賛成していることを装った同意書を提出していました。
しかし承諾書の偽造は、刑法第159条第1項の有印私文書偽造と同161条第1項の同行使に当たる犯罪行為です。
偽造された堀川宗則さんの訴えに対して、捜査の過程で、偽造した地権者は、電話で了解を取ったので、自分の配偶者に署名させたと釈明していたそうですが、建設に反対していた地権者が電話で署名を頼んだなどと言う話は、警察でも通用せず、結局、検察に送検されました。
この鮫川村の共有農地に、指定廃棄物という高濃度放射性物質の焼却炉の実験施設を作ろうとしていたのは、環境省です。環境省も世界で初めてという汚染物の焼却にあたって、この鮫川村を実証実験施設として、ここでの実験を突破口に福島をはじめ、各地で指定廃棄物を焼却する焼却炉の建設を進めてきました。
それにしても偽造した申請者は、なぜ犯罪を犯してまで、環境省に協力をして、実証実験を進めようとしたのでしょうか?環境省と地権者との賃貸契約書を見ると年度契約で、当初年度は、10か月で、一人当たり21,143円の賃貸料になっています。1か月約2000円です。
わずか2000円の賃料のために、なぜ犯罪行為に及んだのでしょう?今後の捜査の進展によって、実態が解明されれば、環境省や承諾書の提出先である鮫川村村長の関与や役割が明確になるでしょう。
 523日の環境省交渉では、今回の鮫川村の実証事業に推進過程で刑事犯罪が行われ、告訴が受理され、検察に送検されている事も伝えました。その上で、環境省はこの偽造事件にどのように関与していたのかを問いただしましたが、「知らない」という全く無責任な答えが、帰ってきました。
 環境省は、自分たちに協力して偽造までした地権者の行動は、関与しないと切り捨てる冷酷な対応です。
<不法行為の上の行政行為は無効!直ちに中止を>
環境省が、現在鮫川村で行っている実証実験は、この刑事犯罪行為の上に行われていることが今回はっきりしました。
不法行為の上に取った行政手続きは、当然無効になります。
しかも現状で、同意を与えていない地権者からすれば、環境省は、自分の土地に勝手にプラントを作り、勝手に稼働させていることになります。明らかに民法上の所有権の侵害行為になります。すでに稼働停止を求め、共有農地の原状回復を求める要望書が出されているにもかかわらず、稼働を続け不法占拠を続受けることは、全く許されず、刑法上の罰則の適用も受けることになります。
環境省は、借地に当たり、全員の同意承諾を得ず、焼却施設などの建設や稼働を進めたことに対して、今回の施設は、仮設の施設なので、共有地と言っても過半数の了解を取ればよいのだと、説明しました。
しかしその法的根拠を尋ねた所、その場で答えることができませんでした。
山本太郎議員が、電話で問い合わせればよいと示唆しても結局答弁することができませんでした。
その後農水省に問い合わせた所、仮設だから全員の了解が必要ないという法律上の根拠は見当がつかないという返答でした。
確かに「仮設」を理由にして、地権者に了解取ることなく、勝手に土地を占有することが許されれば、公共事業を進める上で、違法・不当がまかり通ることになり、騒ぎが多発し、手が付けられない事態となるでしょう。
もし全員の承諾が必要ないとしたら、そもそも偽造までして承諾書を作る必要はなかったのです。
国や行政権力が、公(おおやけ)の事業のために個人の土地を使用するにあたって、売却や賃貸借を断られた時には、強制収用法によって、土地を取り上げることは、よくある事例ですが、しかしその場合でも、事業の必要性、妥当性、住民合意の有無などについて、環境上の危険性、安全対策などとともに、厳しい条件の下で、検証されます。今回はそのような手続きすら行わず、承諾書を偽装して、指定廃棄物の焼却事業を進めるというのが、環境省の対応だったのです。
封建時代の悪代官のようなやり方であり、現代社会で許されるはずがありません。

4.     なぜ焼却による減容化なのか?
8000ベクレル以上の汚染物質である指定廃棄物は、現段階で約14万トンあると報告されています。しかしこの指定廃棄物をなぜ焼却するのでしょうか?
焼却による減容化、つまり容積を減少させる、それが今回環境省が説明する焼却の理由です。そのまま14万トンを保管処理することがなぜできないのでしょうか?
予算の関係なのか?各地に焼却施設を作るその総予算の規模を考えればはるかに安い予算で保管施設は建設が可能と考えられます。
そのような基本的な説明は、環境省から行われていません。

<指定廃棄物の減容化は本当か
指定廃棄物の処理に戻って、焼却によって減容化が図られるというのは、本当でしょうか?
焼却すると焼却前の量から焼却灰の量に減容化された分、焼却灰の汚染濃度は高まります。焼却すると焼却したものは、消えるわけではなく、焼却残渣、いわゆる焼却灰として残ります。その時の減容化率は、大体10分の1です。飛灰で見ると33分の1とされています。
しかし放射性物質で気をつけなければならないのは、焼却すると焼却前の量から焼却灰の量に減容化された分、焼却灰の汚染濃度は高まります。実際10分の1に重量が減った分、焼却灰(飛灰を含む)の放射能汚染度は、10倍に高くなります。同様に飛灰では、計算上は、33倍に濃縮されるとなっています。
焼却によって、飛灰が8000ベクレルを越えないようにするためには、環境省のマニュアルでは、元々の燃やすものの汚染度を252ベクレルに抑えることが必要になります。つまり汚染度が高い指定廃棄物では、他の低濃度のものを混在し、薄め、希釈することが求められるのです。
高濃度汚染物を焼却にあたって、汚染度の低いレベルのものと混ぜて、量を増やすため、燃やした後でできる焼却灰の量は、元々あった指定廃棄物の量と大して違わないものになっているのです。
では焼却処理は、何を行っているのでしょうか?
何のために行うのか?お役人に尋ねてみましょう。答えられる役人は居ません。
<焼却に代わる減容化の方法は?>
では、どうすればよいのか。
何も手を加えず、高濃度汚染物については保管処理を行えばよいのです。
保管処理過程で、水分の除去を図るといったり、市町村に保管されている牧草などの汚染物の減容化を図る方法は、焼却以外にあります。
例えば汚染されている有機物を、堆肥化=発酵処理したり、閉鎖型の除湿式の乾燥処理で、汚染物を大気中に放出することなくほぼ10分の1に減容化することができます。
焼却ではない自然発酵では、密閉空間を作り放射性物質が外で出ないようにすることができます。循環除湿式乾燥システムも同様に容器内の空気と外界を遮断できます。
環境省が焼却を持ち出すときには、必ず焼却炉メーカとの関係が背景に見え隠れしてきました。
がれきの広域化処理は、これを計画した環境省は、被災地のがれきの処理を、全国の清掃工場の余力施設で焼却処理し、被災地のがれきの処理を早期に進め、復興支援に寄与するという目的を話しました。
ところが今年3月31日がれきの広域化処理が終了し、実態は当初計画400万トンの数%の実績に終わりました。
その一方で巨大な計画を復興資金から予算化し、余った巨額の資金を、全国の市町村の焼却炉建設の補助金(=循環型社会形成推進交付金)として使っていたのです。
なぜ被災地の復興資金が、全国の市町村の焼却炉建設費に化けてしまったのかというと、がれきを受け入れるために焼却炉の整備を行うのだから、復興資金から流用してよいとしていたのです。しかしこの補助金を受け取った9割以上の自治体は、がれきさえ受け入れていませんでした。

結局見えてきたのは、環境省が予算立てした本当の目的は、過大ながれきの広域化予算を組み込み、大きく余らせ、それを全国の焼却施設の補助金に回し、焼却炉建設の補助金枠を大きく拡大するというものでしかなかったのです。
焼却炉メーカの要望に応え、設備を設置して行くことに目的がありました。

<鮫川村議会の質疑に見る指定廃棄物の焼却の実態>
鮫川村村議会でも、2012年度鮫川村の実証事業の受け入れについての議論の中で、議員の質問に対して、村長は汚染された樹木や草などが増えたため、減容化、すなわち量を減らしたいため焼却すると説明しています。
そしてそこでなぜ環境省の指定廃棄物なのかという点については、元々村から排出される低濃度のものがほとんどで、1割にも満たない指定廃棄物の処理に託けて処理してもらえるのだと説明しています。
村議会で出された数値で言うと
「全体600トンの内、8000ベクレルを超えるものは、28トン。5%未満。」
「残り572トンが、村が処理するものが、環境省の実証事業で処分される。」
つまり村議会では、指定廃棄物の600トンの処理と説明されているものは、実は全体の20分の1しかなく、95%は、村から出た低濃度の汚染物だというのです。
村長の説明から伺えるのは、村から出た汚染廃棄物は一般廃棄物であり、村の計画と予算と処理しなければならないが、環境省の事業として進められる指定廃棄物処理に紛れ込ませれば、国の予算でできるというものです。
指定廃棄物の処理を、焼却処理として行い、各地域で行う本当の目的は、汚染廃棄物の処理の焼却処理がひとつの狙いなのでしょう。

5.     まとめー指定廃棄物の焼却自体の問題性
人形峠のウラン開発の中断の後、掘り出された廃棄物は、地権者の土地にそのまま残され、放置されました。数千ベクレルの汚染度だったと言います。当時の国は、後始末まで予算は組んでいないと対処を断ったため、地権者が裁判を起し、判決で撤去命令が出ました。
その結果、国はその後始末に米国に輸出し処理依頼したのでした。
人形峠で判断が下された放射性物質よりはるかに汚染度の高い放射性物質を、焼却し、減容化するという今回の環境省の処理。放出される汚染物を80%しか捕捉できない実態の中で、二次汚染を広げる今回の措置。それ自体が犯罪行為と言えます。
指定廃棄物の焼却問題、もう一度原理原則に戻って問題点を掴んで行く、そこに学習会やワークショップの目的があると考えます。
3月、4月と続いた福島連絡会の指定廃棄物焼却問題の学習会に参加し、
当面の問題として、次のようにまとめました。
1)      鮫川村の実証試験炉の問題を、「爆発問題」と「同意書偽造問題」から整理させていただきました。この論議は、新たな情報などを含め、引き続き大きな課題としてあります。
2)      指定廃棄物や放射能汚染物の「焼却」問題についても、基本的なところに戻って、なぜ焼却なのかを提起させていただきしました。この議論は、端緒についたばかりであり、宮城や岩手他での焼却問題を考える論議として今後も取り上げていただければと考えました。
3)      次回6月29日に予定されている「三陸の海を守る会」の永田文夫さんがこの間提起されてきたバグフィルター問題や周辺地域の空間線量が高くなったという問題は、汚染廃棄物の焼却問題を考える上で、大変重要な問題です。
326政府交渉ネットでも、これまで島田市の清掃工場での試験焼却時のデータで、野田宏さんが計算したデータ、70%前後しか捕獲できていないを紹介してきましたが、永田さんらは、宮古市の焼却炉のデータと鮫川村のデータを使って、80%しか捕獲できていないと事実指摘され、バグがあれば、99,99%除去できるという環境省の説明に疑問を発しています。
        この件では、永田さんらと一緒にこれらの報告をまとめてきた宮古市の石見億丈医師も、9月の廃棄物資源循環学会で発表されます。



*1:IWJ報告 「スクープ これが法治国家か」 佐々木隼也、岩上安身(http://iwj.co.jp/wj/open/archives/145861
*2:「福島・鮫川村で進むあまりにも強引な焼却炉「再稼動」計画」 ジャーナリスト関口威人:http://bylines.news.yahoo.co.jp/taketosekiguchi/20131027-00029260/

*3:山本太郎参議院議員 質問主意書「福島県鮫川村での農林業系副産物の仮設焼却炉による減容化実証事業等に関する質問」http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/syuh/s186005.htm
*4:同上 答弁書

*5:復興資金流用か問題MLブログhttp://blog.livedoor.jp/shikin_ryuyo/


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