今日午前中に届いた青木泰さんからのメール、掲載させて頂きます。
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差出人: 青木泰
日時: 2014年10月1日 11:20:01:JST
件名: バグフィルターで99.99%除去の環境省の定説 学会で否定論文発表
廃棄物資源循環学会でのバグフィルターで99・99%除去論に真っ向から反対する論文が過日広島工業大学で行われた廃棄物資源循環学会(9月15~17日)で発表されました。
バグフィルターでの除去論は、水銀の時にも99.〇〇%などと発表されました。
この見解そのものが問われる事態が始まっています。
発表したのは宮古市の岩見億丈医師(医学博士)。内容をご報告します。
また拡散お願いします。
青木
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廃棄物資源循環学会研究発表会
環境省の「バグフィルターで99.99%除去論」を批判発表
発表会場で“大論争”
2014年9月23日 環境ジャーナリスト 青木泰
1)環境省の定説を否定する論文発表
廃棄物資源循環学会(以下学会)の第25回研究発表会(20140915~17)で、宮古市の岩見億丈医師(医学博士)が発表した「放射性物質を処理する焼却炉周辺の空間線量率に関する研究」が会場内外を通して大きな反響を呼び、今波紋が広がりつつあります。
この発表の中で、環境省の従来の定説「放射性物質を焼却しても、バグフィルターで99.99%除去可能」の間違いを岩見医師が、ほぼ体系的に指摘しました。(注1:岩見医師の当日のプレゼンと発表論文http://sanriku.my.coocan.jp/)
この中で岩見氏は従来の環境省の定説を、それに根拠を与えた国立環境研究所の大迫政浩センター長にちなんで、「大迫仮説」と呼び、それに対して「岩見仮説」の是非を問う形で発表しました。
その結果会場にいた大迫氏も質疑に立ち、自らの仮説の弁明を行うなど廃棄物資源学会開設以来ともいうべき“大論争”になりました。
廃棄物資源循環学会も設立当初は、ごみの焼却の是非を問う論文や発表が多くなされていました。
またダイオキシン発生の原因物質として塩ビ系のプラスティックを上げる実験例の一方で、食塩が原因とする発表などが行われ、白熱の議論が交わされたことはありました。
しかし最近は、焼却炉メーカの研究者やごみ焼却を是とする学者の発表が優位を占め、環境省の方針を批判するような発表は、影を潜めていました。
そうした中で、岩見論文は、環境省の定説を根底から批判する論文を発表し、そのプレゼンの中で、定説に根拠を与えていた大迫仮説を真っ向から批判したのです。
その場には、大迫仮説が根拠とした京都大学の高岡昌輝教授も参加していたこともあって、議論はいやが上にも盛り上がりました。
99.99%論を巡る岩見武蔵対大迫小次郎の巌流島の対決のような“真剣勝負”が行われたのです。
2) 焼却は安全の論拠が、99.99%除去論
がれきを広域化して、全国の市町村の清掃工場や被災市町村の清掃工場で焼却処理してよい環境省の方針は、放射能汚染物を清掃工場の焼却炉で焼却しても、「バグフィルター等排ガス除去装置を備えていれば、99.99%除去できる」と言う考えが根拠になっていました。
この考えは、震災・原発事故直後に環境省が、開催した「災害廃棄物安全評価検討委員会」(有識者会議)で承認されたことになっています。
この考え方については、2011年の発表当時、インターネットなどを中心に疑問が出され、私も週刊金曜日や月刊廃棄物などで批判して来ましたが、ほぼその問題に決着をつけたのが、東京新聞「見切り発車で災害がれき処理」(120121)の掲載記事でした。
東京新聞は、有識者会議の議事録での酒井伸一京都大学教授の発言「机上の仮定の発言が多い」と言う批判意見を紹介し、環境省がこの意見を黙殺して、強引に99.99%除去できると言う結論が導き出されたことを指摘し、「焼却ありき、密室で決定、『見切り発車』の災害がれき処理」と報じたのでした。
この記事以降ネット上では、賛成論は勢いをなくしたものの、そのような議論の行方にはお構いなく、環境省は、2012年2月~3月にかけて「絆キャンペーン」を展開し、受け入れ自治体に対しては、環境省の職員を派遣し、「バグフィルターで99.99%除去」できると説明させたり、自治体の職員に説明するように指示し、がれきの広域化や被災市町村での汚染廃棄物の焼却を良しとしてきたのです。
バグフィルター問題については、環境省に考えを直接問いただす必要があるという声が、多くの市民や市民団体によってもたらされ、2012年3月26日に国会議員会館において、環境省との交渉が実現しました。
その集会の場で、野田隆宏氏が島田氏の試験焼却事例からバグフィルターでの除去率は、65%と言う計算結果を発表し、環境省に示した経過もあります。(326政府交渉ネットワークはその集会を実現した市民で結成され、がれき問題の全国のネットワークの中軸を担いました。)
それ以後も、「バグフィルター(バグ)で99.99%除去できる」論には、
・ガス化した放射性物質は、バグで取れない。
・バグは、確率的にしか取れない。(梶山ごみ弁連会長)
・バグメーカに問い合わせても、「放射性物質を除去できると保証できない」という声が返ってきた。
というように除去論には、批判的な意見が明らかになっていましたが、環境省はそれに対して、正面から答えることなく、国立環境研究所や京都大学、そして廃棄物資源循環学会の権威を盾に批判に耳を貸さず、がれきの広域化や放射性物質の焼却を進めて来たのです。
3) 99.99%除去論とPM2.5
環境省の「バグで99.99%除去論」は、廃棄物資源循環学会と、切っても切れない関係にあります。
この学会は、日本の巨大焼却炉メ―カの研究者が会員となっていて、焼却部会なども作られ、日本の廃棄物の焼却の行方についてこの学会が大きな影響力をもっていたからです。
また99.99%除去論は、この学会で発表された論文が、直接的な根拠になっていました。その内容上の“仲立ち”をしたのが、現在では誰でも知っている大気汚染物質であるPM2.5(2.5ミクロン以下の微小粒子)です。
環境省の考え方、大迫仮説のベースになったのは、高岡昌輝京都大学助教授(現教授)他の「都市ごみ焼却施設から排出されるPM2.5等の微細粒子の挙動」と言う廃棄物資源循環学会の2010年の発表論文でした。
高岡助教授らが、この研究を行うきっかけは、都市ごみ焼却施設から排出されるPM2.5が、ぜん息の原因物質になっているという米国のEPA(環境保護庁)の発表に在ります。
この発表を受けて、日本の清掃工場では、焼却してもバグフィルターがあれば、発生するPM2.5(2.5ミクロン以下の微細粒子)は、99.9%除去できると発表したのがこの論文でした。(この論文は、清掃工場でごみを焼却しても、周辺にPM2.5は、放出されないため、喘息等の原因にはならないというための研究発表でした。)
ではなぜPM2.5が、99.9%除去できれば、放射性物質も同様に99.9%除去できるのでしょうか?
そのことを、理屈付けたのが、大迫政浩国立環境研究所・廃棄物資源循環センター長です。
大迫氏は、環境省の先の有識者会議での議論をリードし、この高岡論文をベースにして、微細粒子であるPM2.5が99.95除去できるなら、放射性物質もそれに付着し99.9%除去できるとしたのです。
では、環境省や大迫氏らが、放射性物質の除去が問題になっているときに、PM2.5の除去を問うた論文をベースに持ち出してきたのでしょうか?
実は、廃棄物を取り扱う環境省は、放射性物質については、取り扱わないという廃棄物処理法の下に行政運営してきた経過があります。
日本の行政機構の中で、放射性物質や放射能汚染物質は、クリアランスレベルと言う国際基準の下に、取り扱いの区分けを行ってきました。たとえばセシウムの場合、kgあたり100ベクレル以上は、放射能汚染物として特別に保管する事が義務付けられていました。
それ以下は放射能汚染物ではない廃棄物として、清掃工場などで取り扱ってよいことにしてきました。
廃棄物を担当分野とする環境省は、そのため、放射能物質はこれまで取り扱いの対象外としていたため、「知見もノウハウもない」(大迫氏)状態だったのです。
そのためもあって、間に合わせ的にPM2.5に関する高岡論文を引き合いに出し、99.99%論を展開したと考えられます。
岩見医師の発表は、9月16日の午前に行われましたが、その会場には約150人が詰め掛け、環境省の99.99%除去論に大きく係わった高岡教授、大迫氏他の人たちも参加し、静かな緊張感の高まる中で発表は行われました。
4) 大迫仮説(99.99%除去論)と岩見仮説(80%除去論)
岩見医師の研究発表では、大迫仮説(=99.99%)に対して、宮古市の焼却炉のデータを基に計算すると、80%しか除去できていないと指摘し、鮫川村の指定廃棄物の焼却の事例では、放射性セシウムの灰中回収量は、53%~78%でしかないことを報告しました。
では、なぜこのような違いが出たのでしょうか?
通常は焼却炉に投入した放射性物質(A)が、バグフィルターや焼却残渣(焼却灰)等にどれだけ捕捉されたり、残っているかを計量(B)し、それを差し引いたもの(A-B)が、煙突から放出された量と推計します。
投入した放射性物質とバグフィルター等で除去された放射性物質量の差を求めれば、煙突から大気環境中に放出される放射性物質の量は、引き算で求めることができます。
ところが大迫仮説では、バグフィルターの前で測った量(B1)とバグフィルターの後で測った量(B2)を計り、その比(B2/B1)を,計算し、99.99%などと割り算で計算していたのです。
割り算では、絶対値を求めることはできません。
バグフィルターの前で測定された微細粒子の量が、バグフィルターの後では、極端に減っていれば、それだけバグフィルターで捕獲されていたことになり、この計算方法は、一見妥当性を持つように見えます。
しかしこの方法は、バグフィルターの前後での計測が、放射性の超微粒子や排ガスを逃さず、捕捉しているということが、大前提になっています。
学会での岩見医師は、高岡氏の論文を調べ、この測定に使ったろ紙や集塵方法は、0.3ミクロン以上の粒子の捕獲しか保証出来ないことを指摘し、この測定方法を前提とした99.99%論の誤りを指摘したのです。
放射性物質を800度前後で焼却すると、放射性物質は、微細化し、一方でガス化することは知られています。
大迫仮説では、微細化した粒子は、0.3ミクロン以上しかないことを暗黙の前提とし、計算していたのです。それでは、0.3ミクロン以下の超微粒子は、バグフィルターの前でも、後でも捕獲されないため、バグフィルターを通過し、煙突から環境中にどれだけ放出されるかの実態は分りません。
岩見医師の指摘は、この点を具体的に突いたものでした。
では、0.3ミクロン以下の放射性物質は、どれだけ存在するのでしょうか?これに対しても岩見医師は、全体の20%近くに達することも指摘しています。
私たち自身も、改めて大迫仮説の具体的な問題点に気が付きました。
岩見医師の主張は、さらに続き、煙突の中で捕獲したガス中にどれだけ放射性物質が含まれるかを調べる高岡氏らの液体中を通過させる実験も、純水を短時間通しても、ガス中の放射性物質は、簡単には、溶解しないこと。液中を通過する放射性物質がどのように捕獲できるかの予備試験もなく、簡単に検出されていないとしていた間違いを指摘しました。
岩見医師の指摘は、環境省の定説の根拠にしていた大迫仮説が、いかに出鱈目のものであったかを白日の下に示しました。
5) 学会での論議
この発表に対して、国立環境研究所の倉持秀敏研究員と大迫政浩センター長から質問と反論が行われました。
しかし結論を先取りして報告すると、まったく本題を外した拍子抜けする質問でした。
大迫仮説の問題は、超微小粒子の存在を無視した仮説であったことが岩見氏によって明らかになりました。ところが、2人の反論は、その点について、超微小粒子の存否については、直接触れず、実質存在を認めた上で、粒子が微細になれば、ブラウン運動をおこし、大きな粒子の塊のように挙動するため、バグフィルターで捕捉されることになると反論したのです。
倉持氏の場合、教科書に載っているとまで付け加えた反論でした。
放射性物質を焼却して超微小粒子が生成されたとしても、実質微小粒子は、存在しないのだから、大迫仮説で良いという主張でした。
しかしこれに対しては、岩見医師から倉持氏のブラウン運動論は、放射性物質で実際に実験を行ったものではなく、根拠のない仮定の話でしかないという鋭い批判が投げかけられました。
一方大迫氏は、ガス状のものは、通過させる液体の条件を代えた時に、どのように捕獲率が変わるかの実験に入っているというやぶへびな発言を行いました。
岩見医師からは、そのような実験をしないまま99.99%除去できると言う大迫仮説を独り歩きさせていることに、改めて批判が行われました。
結局岩見医師の今回の論文発表と発表会を通して、環境省の定説になっている大迫仮説が、超微小粒子やガス化した放射性物質の存在を無視し、計算していたこと。
事実を検証する実験を行わず、都合よく集めた理屈によって、バグフィルターを付加すれば99.99%除去できると言う定説が作られていたことが分かりました。
そして80%しか除去できていないという岩見仮説が、実態に近いことも分かってきました。
この岩見氏の発表分科会が、終了後、この件で大迫氏、高岡氏、岩見氏そして青木でさらに話し合いを行い、青木からは、廃棄物資源循環学会で、この件でもっと掘り下げる討論会を持つことを提案し、岩見氏からは詳細実験を共同でやらないかという提案を高岡氏に行いましたが、その場では、大迫氏、高岡氏から前向きの返事をもらうことができませんでした。
最後に、放射性物質を焼却して処理するなどと言うのは、世界で初めてのトンデモ方針であり、安全性の大きな根拠となっていた99.99%論が、学会での論議でも今回実質的に破たんしたと言えます。
環境省はこの事実を踏まえ、放射性物質やその汚染物の焼却処理は、即刻止める必要があると考えます。
なお、今回の岩見医師の論文は、岩見仮説80%除去論に立った時、残りの20%は、どのように大気中に拡散するのかを調査した報告が、前半部となっています。宮古の焼却炉の周辺の空間線量を計り、風下方向に、放射性物質の放出によるものとみられる変化を見つけ、報告したものです。
また、このような岩見医師らの研究発表を通して、清掃工場で発生するPM2.5は、99.99%除去できると言う高岡氏らの論文が、根本的に見直しする必要があることが分かり、青木は、PM2.5が大気放出されている証として、清掃工場周辺の小学生への喘息の影響について学校健康保険法に基づく疾病調査データを整理し、発表しました。(注2:都市ごみ焼却炉等から排出されるPM2.5による生徒・児童への喘息発症への影響)添付参照。
PM2.5は肺の奥まで吸入されるため、ぜん息の発症に影響がありますが、それが放射性物質に代わると、ぜん息だけでなく、内部被曝による放射性疾患をもたらすことが考えられ、その点についても、今回の論文を通して警鐘乱打しました。
添付資料:
注釈1:岩見医師の当日のプレゼンと発表論文 http://sanriku.my.coocan.jp/
(第25回廃棄物資源循環学会研究発表会 講演原稿2014
C6−4「放射性物質を処理する焼却炉周囲の空間線量率に関する研究」
岩見億丈、斎藤正俊、小堀内陽、笹井康則 http://sanriku.my.coocan.jp/C6-4.pdf
発表スライドと解説 http://sanriku.my.coocan.jp/140916iwami.pdf)
注2:「都市ごみ焼却炉等から排出されるPM2.5による生徒・児童の喘息発症への影響」
「巻頭言 持続可能な廃棄物処理システムの強靭化」
(独)国立環境研究所 資源循環・廃棄物研究センター 大迫政浩
廃棄物資源循環学会誌 Vol. 25, No.4, pp 229-230, 2014
第25回 廃棄物資源循環学会 研究発表会
2014年9月15日(月・祝)~9月17日(水)・広島工業大学
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