差出人: 青木泰
日時: 2014年7月5日 21:54:14:JST
件名: 会計検査院との交渉-復興資金流用問題ー報告
皆様へ
お世話様です。
昨日、参議院議員山本太郎事務所の紹介で、会計検査院に復興資金流用化問題で2回目の交渉に行きました。
前回は、がれきの広域化とそれに絡んだ復興資金流用化問題の全体概要―復興資金が全国の市町村の清掃工場などの整備(建設)事業に流用されている問題を伝え、証拠となる資料を提出してきました。
今回は、その後の動きを概略伝えるとともに、何が問題なのか、問題の核心点について、報告してきました。
内容は、添付の要望書に概略まとめたものを提出し、それに沿って説明する形を取りました。
* 循環型社会推進交付金という環境省が行う補助金事業に絡んで復興資金から流用化が図られたこと。その際従来枠は「通常枠」とし、復興資金から支給するものは、「復旧・復興枠」としたこと。
* 環境省ばかりでなく、総務省もその「復旧・復興枠」の場合、市町村の事業費が実質「ゼロ」になる金額の交付税を支給する仕組みにしていたこと。この処理の合法性があるのか?
* 環境省の通知による循環型社会推進交付金(復旧・復興枠)での交付指針の内容と、支給実態を確認し、その指針にすら合致していない実態の指摘。
* その通知自体の違法性の問題。
以上についてつめた話を行ってきました。
以上ご報告いたします。
326政府交渉ネット 青木泰
参加者、タチアナ集会東京実行委員会、NPOごみ問題5市連絡会、ネット「ユープラン」
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添付資料
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復興資金流用化についての調査のお願い
1.前書き
先の5月21日に会計検査院を尋ね、別紙のような要望書を提出しました。
要点は、下記の通りです。
① 環境省が、災害廃棄物の処理―がれきの広域化で巨額の予算を組み、その予算を余らせ、全国の市町村の清掃工場やリサイクル施設への交付金=循環型社会形成推進交付金として流用化していた実態を各種資料によって報告し、
② H24年(2012年)の環境省の交付実体と総務省の交付税の実態を報告しました。
今回は、それに加え、
① 報告事項としてH25年(2013年)の交付金や交付税の実態(別紙資料1)これまでの山本太郎参議院議員から出されている質問主意書
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/syuh/s185020.htm
とそれへの答弁
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/touh/t185019.htm
吉田忠智参議院議員による質問主意書 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/meisai/m186123.htm
とそれへの答弁
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/186/touh/t186123.htm
について、指摘させていただきたいと思います。
以上の中で、がれきの広域化に絡んで、環境省では、市町村の一般廃棄物の整備事業(焼却炉建設やリサイクル施設の建設、最終処分場建設)などへの補助金(=循環型社会形成推進交付金)に流用するに際して、新たに次のルールを作っていました。
循環型社会形成推進交付金は、これまでも地球温暖化防止の名目で、ごみ発電などを敷設した施設や、循環型社会形成ということで、リサイクル施設などの整備事業に補助金として事業主体である市町村に交付されてきていた。
環境省は、これまでの同交付金を、「通常枠」とし、今回、復興資金から同交付金に資金供給する分を「復旧・復興枠」とし、新たに設けた。―環境省の通知(環廃対第120315001号)―
また総務省と調整し、その「復旧・復興枠」で環境省が同交付金を支給したときには、自治体(市町村)の事業費が実質ゼロとなるようにした。すなわち、これまでの交付金の仕組みの上では、事業費αとして,交付金βとすると「αーβ」が、市町村の負担分となり、その後年度負担分に対して、総務省から何割かの交付税が支給される形になっていたが、今回は、その「αーβ」全額を、総務省から支給される仕組みにした。
そうした結果、環境省と総務省から循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)に絡んで、H23年度からH25年度にかけて数百億円の復興資金がこれら交付金と交付税として流用されていた実態が明らかになっています。
2.循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)の位置づけと実態
環境省の通知(環廃対第120315001号)は、建前上は、がれきの広域化の推進を図ることが、復興資金を使う根拠となっていましたが、実態は9割ががれきさえ受け入れておらず、きわめてその適用が曖昧であることがわかりました。
1)通知(環廃対第120315001号の内容
この通知(環廃対第120315001号)中で「復旧・復興枠で交付する事業」として次の2つを定めています。
「1.特定被災地方公共団体である県内の市町村等が実施する事業」
「2.市町村等が実施する事業の内、」(イ)「諸条件等が整えば、災害廃棄物の受け入れが可能と考えられる処理事業の整備事業。」と(ロ)「竣工時期等の問題で、現在整備中の処理施設では、災害廃棄物を直接受け入れることは難しいものの、他の施設で受け入れたことにより、その既存施設で処理する予定であった廃棄物を処理することとなる可能性がある当該整備中の処理施設の整備事業」
との記載があった。
1.は、被災地の自治体への実施事業であり、これに復旧・復興枠を使うのは誰も異議がないといえる。
しかし
2.は、文面から読み取ると(イ)の場合は、整備すれば受け入れが可能になると、整備が時間的に先であっても、整備がされた後には、がれきの受け入れが行われると読み取れる。
(ロ)の場合は、整備された施設でがれきを受け入れなくとも、他の施設でがれきを受け入れ、その受け入れた施設で本来処理する予定だった廃棄物を、その整備後の施設で受け入れた時には、そのような整備にも復旧・復興枠を交付するとしている。
2)循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)支給の実態
ではこの通知の内容にしたがって、交付金の支給が行われたのでしょうか?
まず実態として、がれきの広域化の当初予定量は、400万トンであり、環境省の発表でも60万トン(全体の15%)しか予定達成していません。そして実際にはH25年度秋の段階で、予定していた広域化400万トンの内、実施量は12万トンであり3%。その後若干増えたとしても、実際は数%の実施率でしかありません。
つまり60万トンは、東京新聞でも報道しているように「県外処理」の総量ということでありー被災2県が、委託した業者が処理の関係で、県外の下請けの企業体に処理を再委託した量も含まれ-広域化処理として予算組されたものではありません。
環境省の発表通りとしても、85%は使用されず、私たちの調査では、95%位実施されていません。そこで交付金をもらった自治体(市町村)のうち、がれきを受け入れたのは1割に満たないという報道が出されている実態も肯けます。
本来通知(環廃対第120315001号)の2.で示された(イ)(ロ)の場合、(イ)では、その廃棄物処理施設で、整備の後にがれきの受け入れが行われていなければならず、
(ロ)では、その整備を行った周辺の廃棄物処理施設で、がれきを受け入れて居なければならないはずです。
つまり、通知の内容からすれば、(イ)(ロ)いずれの場合にも、整備を行った当該施設もしくは、周辺施設でがれきの受け入れを行うことが、約束事になっています。ところが、交付金を受け取ったところで、がれきを受け入れたところが1割未満では、この通知すら無視していたということになります。
この通知が法令的にかない、問題なかったとしても、既にこの通知にすら適用していない9割の市町村は、明らかに交付金を違法に受け取ったことになります。
元々この通知は、がれきの広域化を進めることに主眼を置いた通知ですが、実態は、交付金と交付税をばら撒くためと言われても仕方ないでしょう。
環境省による今回の循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)の交付は、多くの自治体(市町村)に、復興資金から違法に流用させる行為に協力させたという拭い去ることのできない誤りを犯しているといえます。
3)通知(環廃対第120315001号)自体の違法性
この通知では、1.2.の後段に「なお、受け入れ条件の検討や被災地とのマッチングを実施したものの、結果として災害廃棄物を受け入れることができなかった場合であっても、交付金の返還が生じるものではありません。」という記載があります。
環境省のこの間の国会での答弁や質問主意書への答弁を見ていると、この文言を一人歩きさせています。環境省が行った、がれきの広域化に対しての基礎調査(2011年に実施)で、市町村が、保有焼却炉の能力や、現状での余力などに答えただけで検討したなどと、解釈して循環型社会形成推進交付金(復旧・復興枠)を配って行った実態があります。
法令がこのように恣意的に解釈される事を当初から環境省が想定して、法令、通知を作成していたとしたら、この通知書自体法令に違反した行為といえます。この通知を作った環境省が、今回交付金をばら撒いたことを間違いだったことを認め、謝罪しない限り、この法令ー通知自体の違法性が問われることになると考えます。
この点についても、具体的に検討いただき、対処―交付金や交付税の支給の返還を求めるなどーを取っていただきたいと思います。
4)がれきの受け入れと関係ない整備事業への交付
さらにがれきを受け入れた市町村(一部事務組合を含む)でも、がれきの受け入れの条件を作るという意味で、関係のない施策への交付金の支給が行われていたことが、目に付きます。例えば、北九州市での受け入れの場合、元から計画していた基盤整備事業に交付しています。静岡市の場合、リサイクル施設。富山県高岡市の場合、受け入れたのは、高岡市の清掃工場で、交付金の支給対象とした事業は、高岡地区広域事務組合が行おうとした焼却炉建設への交付金=補助金支給です。高岡市と高岡地区広域事務組合とは、高岡市長が事務組合の管理者を兼ねていますが、自治法上も別の自治体であり、高岡市ががれきを受け入れたからと言って、事務組合の事業に交付するというのは全くの筋違いです。
結局、これらは、いずれもがれきの広域化政策に協力した「褒賞」としての交付金であり、被災地への協力という名目の下に、環境省の政策に協力した自治体に、交付金をばら撒いた法令上何の根拠もない流用化といえます。
この点の問題についてもあわせて監査、ご検討いただきたいと考えます。
3. その他
そもそもがれきの広域化が、宮城県では、2重計画、岩手県でも広域化の架空計上など行っていたことにも指摘しておきたいと思います。
以上
326政府交渉ネット 青木泰