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2012年3月6日火曜日

20120304 満田正さんの「福島原子炉包囲網日誌」3/4〜広域瓦礫処理

From  満田正
日付  20112012年3月4日 
Re:   広域瓦礫処理

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なお、このメール配信、私の判断で、勝手に送らせて頂いています。
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表題の件、連絡ありがとうございます。
情報の収集については感謝です。
http://www47.atwiki.jp/tsunamiwaste/
以下、「たまかんねっと」にも記載しておきます。
放射性物質を含む瓦礫処理については、3つの問題点があります。
その前に原子炉が不安定な状況下で除染そのもにどのような意味があるのかについては、別問題ですので触れませんが。
1)除染そのものがどこまで可能か。
2)除染という放射物質の拡散をどのように考えるか。
3)広域処理は可能か。
先ず、1)についてですが、除染方法そのものが未解決問題です。
1-1)除染はどこまでを線量を低くすることでしょうか。
大気汚染基準値は今、年間1mSvとしていますが、これとて暫定基準値です。
しかも、この基準値は達成できる目処があるのでしょうか。
確かに色々と除染方法が提案されています。
それは土で言うと現状の5割の除染すら難しいです。
1-2)土の影響を受けるのは大気汚染です。
これを5割程度の除染では、現在の大気汚染濃度0.2μSv/h以上である汚染濃度を0.1μSv/hにすることは難しいです。大気汚染濃度0.2μSv/hは東京都でも見られる大気汚染濃度です。
勿論、汚染は土だけでなく、大気、水や動植物も汚染されています。
しかも水質処理での目安はまだまだ除染率9割程度です。
その程度では、飲み水はもちろんのこと、海水汚染は防げません。
動植物、大気の汚染はその目処すら立っていないです。
例えば、人がいったん内部被爆を受ければ、生理機能以外による除染は相当に難しい問題です。
それは動植物全部に言えることです。
1-3)大気汚染についてはヨーロッパでも地面から1mの放射性物質の浮遊が問題になっているようです。
セシュームは極めて粒子が小さくで、空気中の浮遊は当然です。
花粉も充分小さい粒子で空気中に浮遊し、花粉症で悩む人も多いですが、今度は杉が内部被爆して、放射性物質花粉も考えられるわけです。
1-4)いずれにしても、除染は必須です。
しかし、除染方法は今後の技術開発が待たれるのです。
少しでも、安全を目指しての除染活動は賽の河原際ではあっても必要であることは言うまでもありません。
ただ、そのためには、最も大事な原則があります。
放射性物質を拡散させてはならないことです。
なぜならば、放射性物質を拡散させればさせるほど、その除去が難しくなるからです。
2)については、さらに複雑な問題が多いです。
2-1)いったん開放された放射性物質は、それを捕捉することが非常に難しい。
放射性物質を拡散させないことが原理原則ですが、とにかく原子炉は放射性物質を開放し、広範囲に拡散させてしまったのであるから、先ず、その拡散を止めようと言うのが、除染の基本です。
そうすると、除染と称して、放射能物質を拡散させる現在の除染方法は全く不合理なことということです。
ただ、除染方法で、もっともらしい方法としては、濃縮すると言う考えがあります。
放射性物質を含む瓦礫とかから、放射性物質だけを取り出すことです。
濃縮は、除染技術に含まれますが、瓦礫からどの程度の放射性物質を取り出せるかが濃縮率、除染率なのです。実はその技術が5割とか9割に留まっていることが最大の問題です。
2-2)除染率を高めることは今後の問題ですが、先ずは濃縮された放射性物質の扱いです。
除染率が5割とか、9割とかということは濃縮されたものをどのように扱うかということです。
1つの方法として厳重に箱詰めして保管することですが、例えば使用済み核燃料についてはそれが六ヶ所村であったり、福島原発4号炉であったりするのですが、ほぼ満杯といわれています。
要するに捨て場が無いのです。とりあえず、何処かに保管しておくしかない状態です。
六ヶ所村ではこうした廃棄物の再処理を目指したものですが、その技術開発は20年以上経ってもほとんど目処が経っていない。とにかく仮置き場は必要です。仮置き場としては、現在の原子炉敷地以外に無い。
もちろん、54機ある日本中の原子炉がそのような悩みを持ちつつ、敷地内に保管している現状です。
濃縮後の瓦礫についてもそのように言えます。
2-3)それ以上に問題なのは、放射性物質を一部取り出したとは、放射性物質を含む、瓦礫、土、水、大気、動植物の扱いです。決して100%除去されていない、それらの扱いは、基準値と政治的判断で扱われます。
大気については1μSV/h以下ならば良いというわけです。廃棄物ならば、8000Bq/kgならばよい。食物、水なら50Bq/kg、土ならば、500Bq/kgと色々と基準値が提示されいるわけです。
これは国際的には、国によっても違うし、どちらかと言うと、定まっていないと言うのが実情でしょうか。
もちろん、基準値を設けても守れなければ意味無いわけで、守れる範囲で、政治的判断が今後もなされるでしょう。
これら基準値については、身体影響との関係もあって、深い議論をするわけにはいかない。限られた情報の中で、議論を深めるほど怖いものは無いわけです。
放射性物質は、どのように除染されようとも100%除去はないのですから、生物体に何らかの影響が出ることを未来永劫に観察していく、そのためには、放射性物質の100%除去に向けて努力する以外ない。
2-4)それは、今まで観察されて来た、有毒物質、健康被害環境と同じに注意深く観察することが宿命付けられます。放射性物質が、初めて話題になることで、人々の注意が必要以上に喚起されたされたことは重要です。その他の有毒物質、健康被害環境について、放射性物質と同じに注意が必要だったわけです。
最近にも、廃棄物処理については、ダイオキシン、水銀、環境ホルモン等の有毒物質の廃棄物中の濃度が問題になり危険性は全く同じなんです。
2-5)放射性物質を含む瓦礫は有毒物質を含む廃棄物と同じに焼却処理が合理的であるとの方針が多く提案されています。焼却処理は、有機物を炭酸ガスに金属固形物を飛灰、残渣とに分ける、どちらかと言うと日本特有の技術で焼却炉建設で日本の独壇場と見てよいでしょう。放射性物質の除染でも有効技術として提案する人も居ます。
私は焼却炉は放射能物質の大気放出、排水炉への放射性物質の放出、建物、土中への放射物質の放出最大の拡散ツールだと思っているのですが、まだまだ議論は続くようです。廃棄物処理は、自区内処理を行う以外に放射性物資、有害物質の拡散を阻止する手立ては無いと思うものです。自区内処理であっても焼却炉ではなしに、自区内保管が原則です。
3)についてですが、放射性廃棄物、災害地の瓦礫処理については、急速に広域処理が広がりを見せています。
3-1)国の金を使うとして、政府が企業や地方自治体に強引に圧力をかけています。企業や地方自治体にとって、これほどのビジネスチャンスは無いわけで、とく東京都、神奈川県のように、諸手を上げて賛成する地方自治体も多いです。
いわば。火事場ドロボーのように復興ビジネス、除染ビジネスが始まったわけですが、放射性物質の被害怖さに尻込みする自治体もある。命あってのものだねと言う場合もあれば、濡れ手に泡と飛びつく場合もある。
もちろん、こうした危険を承知の賛同も、住民にすれば寝耳に水、税金を巻き上げられた上に、危険まで押し付けられたのでは適わない。原子炉発電所誘致以来の被災地瓦礫引き受け反対運動が起こっているのです。
3-2)これは、人々が廃棄物の広域処理に胡坐を書いてきたことの付けだと思います。その典型的なものが原子炉発電所誘致問題であって、危険を覚悟の発電所敷地住民と焼却炉周辺住民とは全く似て非なる社会構造なのです。原子力発電所で供給されてきた電力で、都会の人々は、世界先端の文化生活を味わい、原子炉周辺での危険を少しも感じることはなかった。広域処理として、廃棄物を自分が住む自治体の外に出し続けた住民は、その有害物質の影響を無視し続けた。幸いにも福島原子炉事故はこの問題を一挙に紐解いたのである。
現在の政治が広域処理という、権力を笠に着た、支配者だけに利益を齎すような、政治機構・産業構造の矛盾の一端を覗かせたのである。
3-3広域処理・自区内処理については、まだまだ住民の中には戸惑いがある。それは他人任せ、国任せの本質である。例えば、使用済み燃料の処理場については、砂漠地帯への輸送を考えている。砂漠にも多くの人々、生き物が存在する。そこに放射性廃棄物を捨てるという発想に、そもそもの原因がある。いわゆる、安易な方法で、自らのエゴを貫こうとするのである。明らかに、有毒物質、放射性物質の処理は当面、今世紀最大の技術課題である。それは避けて通れないのである。それを前提とした、暫定措置が必要である。その暫定措置にしても、将来より困難を齎すような拡散を伴う処理はご法度なのである。
(満田正)

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