以下、青木泰さんから届いたお知らせと講演会の報告です。
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2010年9月2日 11:42:26:JST
生ごみ100%資源化を目指すプロジェクトからのお知らせ
7月17日の「韓国でなぜ生ごみ資源化90%が可能だったか?」の講演会、暑い中ご参加御苦労様でした。
この講演会は、参加された方々が、ご自分のブログ(大塚恵美子東村山市議、脇晴代所沢市議)に報告され発表されています。(ブログでの発表ありがとうございます)。また小平氏の入江篤子氏も報告を寄せて下さり、「ごみ探偵団」に報告が載っていますhttp://gomitanteidan.blogspot.com/2010/07/717100.html
。あわせてご覧ください。・・・参加された皆様でご報告や感想を書かれた方は、当方か「ごみ探偵団」にお知らせください・・・
この集会報告は、大変な反響で参加された方が発表されたブログの検索数は、万を超えての検索数になっています。若干数字的な訂正箇所もあり、講演集会の内容は、下記のようにまとめました。
本プロジェクトは、第1回「生ごみで花一杯の街づくり」(戸田市吉田義枝環境室副主幹)第2回「日本における生ごみ資源化の状況」(NPO法人堆肥化協会会田節子事務局長)を開催し、「韓国でなぜ生ごみ資源化90%が可能だったか?」(鄭智允自治総合研究所)は、第3回目でした。この間以下の催しがあり、
8月6日 東京23区とことん討論会
8月23日 生ごみ全国交流会(NPO堆肥化協会主催)、生ごみ乾燥機実演展示(NPO環境保全協会主催)
8月26日 久喜・宮代衛生組合HDM見学交流会
これらのご報告と今後秋の予定―
* 食品リサイクル法についての学習会
* 戸田市と久喜・宮代への見学会
の進め方やスケジュールを下記のようにご相談したいと思います。
記
日時:8月6日(月) 18時30分~
場所:西東京市公民館(田無駅南口―西東京市役所隣―図書館と併設)2階集会室
内容:生ごみ100%資源化を進めるプロジェクトの打ち合わせ
以上
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2010.7.17 鄭智允氏講演会報告
― 生ごみ100%資源化をめざすプロジェクト主催 ―
「韓国でなぜ生ごみ資源化90%が可能だったか?」
20100725 まとめ 青木泰(&鄭智允)
梅雨明けが宣言され、うだるような暑さの17日、西東京市市民会館で地方自治総合研究所の鄭智允氏の講演学習会が行われた。暑さをものともせず駆けつけて下さった50余人の参加者の熱いまなざしに、鄭氏は、姿勢を崩すことなく、1時間15分の講演を水も飲まずに一気に行い、続いて参加者からの要点をつく質問に、一つ一つ丁寧に答え、講演会が終わった時には、韓国でなぜ90%資源化が行われたかの実態が、参加者に確実に伝わったのではと思わせる充実した講演会になりました。
1 講演の要約
1)韓国では、生ごみ92%再活用(資源化)が進み、ソウルでは2006年から3年連続100%再活用が進んでいる。
2)ソウルでの再活用は、2008年ベースで飼料化が約57%、堆肥化が42%となっている。
3)その他の家庭から出るごみも再活用率約6割である。
4)1990年代初期まで韓国における廃棄物処理は、8割以上を埋め立てていたが、1999年埋め立て禁止法が制定(2005年施行)される事によって、ごみの再活用率が上がるようになった。
5)さらに遡って1995年に従量制(有料化)を実施し、各自治体で分別収集を行うと共に、罰則制度(条例通りに分別しない時に、課徴金。違反を繰り返すと罰則金が倍々に増えるようにしているところもある。)も導入してきた。
6)民主化運動による政権交代で、環境問題への取り組みが強化し、環境団体も力を増してきて、子供への環境教育も増える等々,環境へのさまざまな取り組みが可能となった。
7)ソウルは東京都と人口が変わらず、1000万人を越す人口が在り、人口密度は東京より高い大都市でそこで生ごみ資源化ができていると言うのは、注目に値する。
2 韓国―そしてソウルの概要
韓国は日本の隣国であり、2002年には、日韓共催のワールドカップも行われているが、韓国の人口が約5000万人、首都ソウルには、約1000万人強の人が住み、ソウル市を含む、首都地域には、約2000万人以上、韓国の約半数が生活している。
つまり日本の首都圏と同じような地域に於いて、生ごみの資源化が行われている事が、報告された。人口密度を見た時、ソウルは、東京やニューヨークよりも高いことが、報告されたが、これは少し驚きだった。
私たちの認識の中にはいつの間にか東京中心の考えがあり、アジアでは、東京から離れるほど、田舎になる。という考えがあったようだ。最近でこそ中国の台頭があり、北京オリンピック、上海万博と続く世界的なイベント誘致によって、中国への注目は、高まっているが、中国の進んできた道は、東京オリンピック、大阪万博とかって日本が進んできた道を踏襲した範囲であり、今回の韓国の生ごみ資源化は、日本ができなかったことを実現した事例である。
ではなぜ国家レベルで生ごみ資源化90%という偉業が、実現できたのだろうか?日本でも生ごみ資源化は、地方の自治体を中心に進んできている。韓国は、たぶん田舎で、空き地も畑地も存分にあるから生ごみ資源化が可能だったのでは? なんとなくそのように考えていた事が、鄭智允さんの説明でのっけから打ち砕かれた。
世界の主要都市の中でもソウルは、パリについで、人口密度が、高い都市だったのだ。
3 韓国での生ごみ資源化の実態
<生ごみは、家庭系の1/3を占める>
ごみの発生量は、人口と経済活動の両方に関わり、規制される。韓国は、2000年以降順調にGDPを増加させ、2001年も600兆ウオンから2008年までに1000兆ウオンまで増加させ、経済成長率は、2%~7%の推移してきた事が、図表で示された。
日本の廃棄物の分類方法と略(ほぼ)同一で、
家庭系・・・・生活系
事業系・・・・事業場系
産廃・・・・・建設系(!?)
発生状況を見ると、それぞれの割合は、日本と結構類似していた。
生活廃棄物全体の約28.7%、3割が、生ごみで、この点も余り変わりが無い。
OECD主要国の一人当たりの発生量(2004年)は、一人一日当たりの重量(kg)
米国 2.00
ドイツ 1.62
イギリス 1.59
フランス 1.45
日本 1.12
韓国 1.02
となっていて、生活スタイルは、韓国は日本とよくにている。
<国の政策によって、再活用率を92%に>
都市部は韓国全体の人口の約半分を占め、廃棄物の処理は、大きな課題となっている。その点では日本と同様であるが、再活用率(=資源化)と言う面で見ると、日本との大きな違いが目立ってくる。
家庭系のごみ全体で見て、6割は再活用し、生ごみに至っては、92.2%の再活用率である。2005年度の生ごみ埋め立て禁止法によって、それまでの67.7%から一気に93.2%に増えている。
鄭智允氏の話では、6年前の1999年には、埋め立て禁止になることが、事前通知されていたと言う。ごみの処理は、TVや洗濯機のスイッチを入れるように、国や行政が決めたからといって、すぐに切り替える事ができるわけではない。だからといって、自治体任せでは、何時までたっても方向は見えてこない。日本の場合、政治や官僚機構に働きかけをできる業界や事業者が、バックアップして世界に冠たる焼却大国を作ってきたことは、周知の通りである。
韓国の場合、元々(1999年ごろには、)埋め立てが、過半を占め、再活用は、3割位だったと言う。埋め立て禁止法によって、生ごみも乾燥・減容化しないと埋め立てできなくなり、一気に再活用が進む、経過が説明された。
日本の場合法律は作っても、目標値を決め、いつまでどのように実行して行くかの面で、おざなりである事と比較して、韓国では、7~8年かけて準備し、実行に移して来たことが分かった。
<ソウル市は生ごみ100%資源化>
ソウル市でも、1999年ごろは、生ごみ再活用―資源化は、30%位だった。それが、生ごみ資源化は、2005年には、100%に到達する。
ごみの資源化は、行政がどのように旗を振っても住民の協力が無ければ進まない。
その点どのように市民の協力を得たのかが、気になったが、鄭智允講師の説明では、分別収集の方法を守らなかった時には、徹底して調査し、罰金を科すと言う方法を取ったり、ごみ減量化のために従量制―日本で言う有料化の方法を取り、徹底している事が、報告された。
たとえば、1回目の違反の時には、1000ウオンの罰金
2回目の違反の時には、2000ウオンの罰金
3回目の違反の時には、4000ウオンの罰金
と言うように倍々に罰則が科せられた自治体もある。
一方でごみ焼却は、全体では、15%くらいだが、エネルギー回収と言う言い方で、増えているのが、少々心配事項である。
<ソウルのごみは、半分以上は飼料化>
日量3400トン出る生ごみは、
500トンが直営
2900トンが民間
で処理し、その内
半分以上の1950トンが、飼料に
1450トンが堆肥に利用されている。
4 質疑
質問1:松本(逗子市)「市民による分別の様子、排出容器は?飼料化の実態について」
鄭: ① 水を切って袋に入れて出す。その際入れていいものなどの細かい指示は、自治体のホームページでパソコンから見ることができる。(韓国はパソコン教育が普及している)また環境美化委員が収集の手助けをしたり、重要な役割を、担っている。② 団地など集合住宅は、設置している容器に出す。臭いはないとは言えないが、許容範囲。収集回数は、自治体によってまちまち。週1回~3回の間。
質問2: 裏木(志木市)「どのようなものを飼料に?飼料と堆肥化の区別は?資源化したものの利用状況は?農家は使ってくれるのか?塩分については問題がないのか?剪定枝はどのようにしているか?」
鄭: ① 飼料化ー餌化は、学校やレストランなど出所がはっきりしているところ。家庭から出されるものは、大体が堆肥化。農家は信頼関係があれば使ってくれる。② 塩分については、堆肥にして問題ないという大学の先生の話もあるが、異なる意見もあり、化学的な検証が必要である。(注: 生ごみを堆肥化したときの塩分問題は、日本でも元東京農工大学教授の瀬戸昌之教授が、研究され、彼は問題がないとの発表を行っている。)③ 剪定枝は、自治体によってやっているところとそうでない所がある。
質問3: 浜田(青梅市)「司法と行政との関係は?韓国での行政訴訟の住民側の勝訴例は?」
鄭: ① 昔軍事政権の時には、行政に対しての意見は、抑えられた。② 住民運動は、やがて力を持ち、首長を代えるところまで力を持ってきた。③ 中央、地方共に、行政事案の処理システムが働き、裁判になるー司法案件になる前に、そのシステムで処理される。
質問4: 佐藤(目黒区)「民営化が多いのは?コストはあっているのか?」
鄭: ソウル市内におけるごみ処理関連の公共施設の建設は、住民反対運動が激しいため難しい、民営化が進んでいるのが現状である。また資源化は、焼却施設への持込が、建設時の協定によって、難しく、埋立てもできないため、(コストを度外視しても)進められている。また焼却よりは、値段が高くないと言う点もある。
質問5: 裏木(志木市)「生ごみ処理をなぜ選択?値段の点では合うのか?」
鄭: 韓国では、*自国の資源が少ない、*できるだけ再利用したい *燃やせば環境負荷が深まるなどの観点からと長期的に20~50年先を考えて、生ごみ資源化を選択した。値段については、正確な検証が必要。
質問6: 萩原(東村山市)「エネルギー回収(ごみ発電による)が広まってゆくと言う怖れは?それへの住民の反対は?」
鄭: ソウル市内には、4箇所の焼却施設があるが、住民反対運動が激しかったため、400回に及ぶ話し合いを行ったと言われ、近隣住民からもさまざまな条件が付加されました。そのため、今在る焼却施設も100%の稼働率ではありません。そのため、広まってゆくのは簡単ではない話だと思います。
質問7: 脇(所沢市)① 韓国の市民活動団体への窓口は? ② 法律の特徴は?③ 生ごみは、水にぬらさないように処理する方法もありますが、その点について」
鄭:① たとえば『ごみ問題解決のための市民協議会』という団体があります。韓国では~3万人の会員の団体と言うのが、多いです。② 法律については一言で説明できません。③ 生ごみについては、先に説明したように水を切って出しています。
質問8: 金成(西東京市)「生ごみは、行政が決めたからといって、きちっと分けて出しているのか?また罰則制度で分別の徹底化を図っているようだが、日本でそのような罰則規定が可能か?」
鄭: ① 市民の多くは分けて出したいますが、もちろん一部には分けて出さない人もいます。② 罰金だけが、市民への誘導策ではなく、何といっても大きいのは、学校での教育が大切。小学校では社会の中で、中学に行くと『環境』と言う科目が週に1回あり、夏休みには海辺のごみ拾いを実践させたりしている。分別の徹底化は子供に教えるのが一番早い。
質問9: 佐藤(豊島区)「韓国やカナダの話を聞いて、やればできると言う確信を持った。5年前に行ったカナダの堆肥化の機械は日本製品だった。結局このような資源化ができるかどうかは、国や行政のやる気と言う事か?」
鄭: 人によって異なる意見を持っているでしょうが、私は、民主化を成し遂げたと言う自信が、市民にはありそれが、環境問題への取り組みに大きな力になっていると思います。
質問10: 佐倉(日野市)「日本の場合正論を言う少数は、行政との話し合いができず、正論がなかなか大きな動きになってゆかない。結局政治的な民主化が必要と言う事か?」
鄭: 韓国では政治的な民主化によって政権交代し、その象徴的なものとして、『金大中』が大統領になった。そしてそれを受け継いだのが、盧武鉉大統領である。そのような政権交代の中で、法律的には、政策立案に当たり、住民の意見を取り入れる「協議会」を設置する事が義務付けれるようになってきた。日本の環境団体は、ネットワークを生かして、活動する必要があり、それが意見の異なる団体(たとえば経団連)なども説得する時に役立ちます。韓国でも集まって対立する事があるが、人をどう集め、その上で意見調整するかが大切と考える。また韓国の場合、地域・住民団体が、国に対して意見を言ってゆく、国のレベルの方針を考えてゆくと言う事をやっている。日本と大きく違っているように思う。
質問11 飼料化が多いのはなぜか?
鄭: この部分は専門家に聞いて欲しい。
5 まとめ
梅雨明けの猛暑に負けない熱い講演会だった。
韓国での生ごみ資源化が、全体で90%、ソウルでは100%進んでいたことは、本当に私たち日本の市民活動を行なってきたものにとって、大変勇気付けられる事実で、その点を確認できた事が大きかった。
日本の行政機関や市民活動の場合でも、先進自治体の事例を聞いたり、自分の目で確かめた場合でも、多くの場合、その自治体と自分の住む自治体との線引きを行う。その際その違いを、自分たちができなかったことの言い訳に使う人たちと、違いを克服する努力目標にする人たちがいる。
実はこれまで、前者の人たちが多かったと言える。
幸いにして今回の講演会の中では、後者の人たちが多く、韓国でできた秘密は何かを探ろうと言う積極的な姿勢が目立った。
私(青木)は、鄭智允氏の講演を聞いて、
* 韓国で資源化が実現した直接的な要因は、国家レベルで生ごみ埋立て禁止法成立させた事。
* 7~8年前に国として告知し、10年近くかけてその実現を準備した事。
* しかも従量制や罰金性に踏み込み、国の法律で決めたことを現場で着実に進めることができる準備を図ってきていたことが上げられる、
と考える。
丁度日本でも、同時期に3Rを基調とした循環型社会形成推進基本法が成立し、個別リサイクル法も成立させ,ごみを燃やしたり埋め立てたりする社会からの決別を謳っていた。ところが、循環型社会推進基本法の下に、国が政策の第1番目に掲げたのは、ごみ発電による熱回収策であり、基本法の理念の欠けらもない、ごみ焼却を進めるという姿勢だった。
建前と本音が余りにも違う日本。
韓国では、民主化運動を行ってきた人たちが、政府や行政の要職につき、環境政策や、環境教育も進めてきた。また住民活動を続けてきた人たちも、国や行政の環境政策の行方を監視し続けてきた。
今回の韓国での実践を、他人事にせず、日本で取り入れてゆくための出発とできるようにしてゆきたい。
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