ページ

2011年3月7日月曜日

報告:2011年2月26日講演シンポジウム「2013年国際水銀条約 検証! 焼却大国日本の水銀汚染」

2011年2月26日の講演シンポジウムの報告が、水銀汚染検証市民委員会の青木泰さんから届きました。以下に掲載します:
ーーーーーーーーーーー
差出人: 青木泰
件名: 水銀講演会-大変充実した講演シンポになりました。-ご報告です。
日時: 2011年3月7日 11:48:22:JST

皆様へ、

講演シンポジウム
「2013年国際水銀条約 検証! 焼却大国日本の水銀汚染」の報告
2月26日の講演シンポジウムは、約70名の参加の下に、密度の高い議論が、3時間余に渡って繰り広げられました。シンポジウム自体は、3つの点㈰水銀事故の原因究明、㈪対策、㈫国際的・国内課題に最終的に議論を絞る形で行われました。
原因究明については、シンポジウム開催の直前(2月23日)に起こった目黒清掃工場の水銀事故もあって、清掃一組自身、今後も事業者犯人説を言い続けるのか微妙なところにきています。
シンポジウムでは、水銀問題にそれぞれの立場から関心を持ち、かかわってこられたパネラーの皆さん、そして会場からの意見を含め、率直な意見交換ができ、市民委員会が今後見解を出してゆく上での大切な方向付けができました。

<講演で印象に残った点>
 貴田晶子氏: 水銀問題は、もうすんだ問題として取り扱われていたが、貴田氏らがプロジェクトを組んで、水銀の実態を解明しつつある。世界的にも日本国内でも生産量は、減少しつつあるが、世界の消費量3800万トンの内10%が、電池の生産に使われている。日本国内での生産方法は、苛性ソーダの生産や電池などを含め、水銀を使わない方法に切り替えつつあるが、輸入される水銀製品はどれだけ入ってきているかの調査はこれまで行っていない。
水銀の大気排出に占める廃棄物の割合は、1/3位だが、焼却炉のバグフィルターでは、90%以上捕りきれているという報告がある。しかし常時そのような状態が保持できているか調査は行われていず、分からない
有害物の管理方法として、3C(㈰クリーンな製品を作る。㈪サイクルする。㈫コントロールー環境中への排出を減らす適正管理)が必要。

 津川敬氏: 今回の水銀問題は、事故と言うより環境犯罪である。
足立清掃工場の場合、自己規制値の30倍もの水銀を計測した。触媒反応塔への付着状態を見ても、特にひどい。廃プラ焼却の前ねここでは事業者が不法投棄したのではないか。2億8千万円(後に3億3千万円に増額)以上かけて汚染除去しているが、水銀が付着したバグフィルターなどの処理に困り、焼却炉で燃やしたと言う話も聞いている。住宅地に隣接して清掃工場が建設されていることを考えても問題がある。

 池田こみち氏: 冒頭から国連水銀条約の作成討論で、日本の政府は、水銀製品は焼却炉で燃やしてよいと一貫して発言していると言う爆弾発言が、国際NGOの話として紹介された。 また日本では、水銀はばい煙の規制がなく、したがって発生源での排ガス中の測定が規制されていない。狭い国土に世界の2/3のごみの焼却施設があり、産廃系を含めて4千箇所もの焼却施設がある。これまでの調査では、大気中の水銀は、指針値を下回っているとされるが、発生源のそばは計られていない。松葉調査では、発生源のそばは、ほかよりも何倍も汚染濃度が違う。水銀問題を取り上げるなら野放しになっている焼却問題のチェックが大事。水銀を除去できる焼却炉など焼却炉に依存したままの動きに矮小化させてはならない。この際焼却自体を無くしてゆく事が大切。

<シンポジウム>
 水銀事故の原因について市民委員会の事務局としては、廃棄プラスチック焼却によって、分別の規律が崩壊し、水銀混入製品が燃やされ始めたことに大きな原因があると考えている。もし焼却炉で水銀が90%以上除去できると考えれば、大量の水銀の投入が今回の事故の原因となるが、除去装置が働いていなかったとすると1日で60~70gの投入があれば、起きた事故ということになり、家庭ごみ等からの投入が原因ということもあるのではと提案
貴田氏は、水銀がバグフィルター等の除去装置で取れない事もある点を認めましたが、津川氏は、足立の場合の触媒塔への水銀付着量の多さや現場職員の10kgを下らない量が処理されたのではと言う証言を引き合いに出し、事業者の関与説を述べた。事業者犯人説について見解が分かれましたが、昨年611日に足立清掃工場にしぼり、水銀の計測計の値を基に、投入水銀量を推し量る実証方法に手が付き始めました。(☆1)
また対策については、豊島区に出された(2011年1月21日)「有害ごみとしての分別収集の徹底」の陳情を資料に添付し、水銀混入製品等有害ごみの分別回収についての提案を事務局より紹介し、各パネラーも、水銀を焼却炉に入れさせないことがまず重要という認識を示しました。
また会場からは、23区は水銀計を取り付けていたから水銀事故が発覚した。他の自治体でも取り付ける必要があるのでは?と言う指摘が在り、津川氏は、水銀計が今回の東京23区ほか横浜市や名古屋市などを除いては、殆どの自治体で設置されていない実情を指摘しながらも、再発防止のために犯人の告発やそもそも入れさせない各区の取り組みを再度強調された。
池田氏は、焼却を止める事を、貴田氏は、有害ごみについても3Rを徹底することを指摘した。会場からはこの指摘に答え、狭山市の土淵氏は、狭山市で試算すると焼却よりもリサイクルのほうが約7億費用削減でるという結果がでた。自分たちが出すごみの処理は、堆肥化なども含めて、自分たちで決めてゆく、そのような取り組みが必要ではと言う意見も出されました。
 京都から参加された原氏は、3Rだけでなく、貴田氏が述べている3Cの視点(☆2)で活動してゆく事が重要と指摘し、その上で今蛍光管のリサイクルの仕組みづくりに入っていると京都を中心にした関西での取り組みを紹介された。池田氏は、これらの会場の意見に同調し、23区では有害ごみの分別収集が行われていないだけでなく、容器包装プラスチックの分別収集すらお金がかかるからと行わず、しかも他の区の焼却施設で燃やしている事例が在ると指摘。有害性や3Cの視点を欠いた行政の在り方に異議を唱えた。
水銀条約や今後の国内課題については、 貴田氏は、国が規制措置を計画しようとすると、そのことで経済的影響を受ける産業界からブレークが懸る。市民側は、それらの反対意見を越えてより説得力のある見解や意見を発表してゆくかが勝敗となる。津川氏は、23区は、今度の事故で痛い目にあった。大都市自治体で、連携してこのような事態が起こらないような対策を求める事が必要と強調。池田氏も過密都市でのごみ焼却炉の林立によって一番影響を受ける政令指定都市が連携して、大気の測定、発生源での排ガス測定を行い、その上で、規制措置を作ってゆく事が必要であることを訴え、シンポジウムを終わりました。
最後は集会アピール(添付)を事務局の佐藤れいこ氏が読み上げ、賛同を頂き、集会を終えました。
報告 青木泰


☆1:水銀計測計の数値「X(μ/Nm3)」に1時間当たり排ガス流量「P(Nm3)」を乗じると、煙突から排出される1時間あたりの水銀量「XP)」が分かる。その24倍が煙突から排出された水銀量(24XP(μg))となる。
一方通常の可燃ごみに含有される水銀量Z(g/kg)は、清掃一組の調査結果(☆3)から概略がわかる。(ただしこのデータでは、可燃ごみから乾電池や蛍光管は取り除いている。したがって実際増加する)
例えば、可燃ごみ中の水銀量の最大値は、0.01~1.0 mg/kg位にある。(☆4) 平均値は、その中間値にあると考えられる。
0.2 mg/kgで計算するとごみ1トン当たりの水銀量は、
0.2g×1000=0.2(g/t)となり、
足立工場の場合日量350トン処理なので、日量の水銀投入量は、
0.2×350=70g
となる。
以上のデータから考えると一般廃棄物として普段から廃棄されているごみの中に水銀がかなり含まれていることが分かる。
一方通常の可燃ごみに含有される水銀量Z(g/kg)は、清掃一組の調査結果(☆3)から概略がわかる。
例えば、可燃ごみ中の水銀量の最大値は、0.01~0.1g/kg位にある。(☆4) 平均値は、0.001g/kg~0.01g/kgの中間値にあると考えられる。
0.01g/kgで計算するとごみ1トン当たりの水銀量は、
0.01g×1000=10(g/t)となり、
足立工場の場合日量350トン処理なので、日量の水銀投入量は、
10×350=3.5kg
となる。
可燃ごみの中の水銀量が、この10分の1の0.001g/kgの時には、350gとなる。
もし当日350gが投入されて、煙突から60~70g排出されていたとしたら、除去率は、80~83%となる。
以上のデータから考えると一般廃棄物として普段から廃棄されているごみの中に水銀がかなり含まれていることが分かる。
*なお一般的には水銀の投入量をY1(g)とし除去率をα%とし、煙突から排出される水銀量をY2とすると
排ガス除去装置での水銀除去量:αY1
煙突に流れた水銀量Y2=Y1−αY1
したがって、除去率αが、「0」に近いと、投入量Y1と排出量Y2が限りなく同じになる。
ここから類推した今回の事故の原因は、環境行政改革フォーラムの研究発表会(2011326日)で報告する。
:3Cとは、㈰クリーンClean-クリーンな製品を作る㈪サイクルCycle-必要不可欠な物質は、循環㈫コントロールCntrol-循環できない物質は環境排出を低減させる。
:「東京23区清掃一部事務組合が実施した『廃プラスチック混合可燃ごみの焼却実証確認』についての評価報告書」(発行:23区廃プラ焼却検証市民実行委員会 編集:株式会社環境総合研究所)P23
修正版
https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=explorer&chrome=true&srcid=0BzopYmjFsal1NWJlODM5YmUtMjZhNy00NzJkLWEyZTctYjVjMWU2NDUyMDZl&hl=en
☆4:清掃一組のデータは、可燃ごみを性状(紙、厨芥、プラなど)ごとに分けて分析し、可燃ごみ全体としての分析値は示していない。しかし紙「4」:厨芥「3」:プラ「2」のように概略の構成が分かるため、データは予測がつく。  

参考
<講演シンポジウム式次第>
1部          報告と講演
「わが国及び世界の水銀使用・排出状況」貴田晶子(国立環境研究所)
「4清掃工場の水銀事故と背景」津川敬(環境ジャーナリスト)
「焼却大国日本の水銀対策と課題」池田こみち(環境総合研究所副所長)
2部 シンポジウム

<日時> 2011年2月26日(土)13時15分~16時30分 
場所> 豊島区勤労福祉会館 大会議室 
<主催> 水銀汚染検証市民委員会 連絡先 03-3915-1612 042-467-0061


---------
注:2011.3.9. 上記赤字部分訂正は以下の理由:




差出人: 青木泰
件名: 水銀講演会概略報告(完)訂正版.doc
日時: 2011年3月9日 16:52:06:JST
 廃プラ焼却検証市民実行委員会作成のパンフ(P21〜P23)の単位が間違っていました。ー環境総合研には通知済みです。
「g/kg」を[mg/kg]になおします。
それに伴い、先日の報告を訂正いたします。(訂正箇所は赤い印)
その部分を今回送った内容に書き換えお願いします。
 青木泰

0 件のコメント:

コメントを投稿