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2010年11月1日月曜日

水銀関係〜資料「総合研究報告書」への疑問点


今回、水銀関係の資料をいろいろ参照しましたが、以下報告書の内容に関してずーっと気になっています。





「廃棄物処理等科学研究費補助金 総合研究報告書概要版 」


国の補助金を得た「循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 」報告であり、今回の水銀問題が起こってからしばしば参照、引用される環境省資料の基がこれです。

しかし、報告書に記されている推定方法の妥当性、そこから得られた数値と結論、すべてごくわずかな数の「実施設」での試験やラボ実験から出されたものです。どの程度信頼できる内容なのか、独立した第三者の専門家の意見を聞きたいです。

この研究がなされた期間は、都23区廃プラ焼却開始以前のものであり、「活動量は2002年度データを基本とした」とあり、また搬入ごみの質の変更も当然生じており、気をつけて使う必要があると感じます。

この報告書の疑問に感じられる点を以下、赤字にしました。

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出典: 廃棄物処理等科学研究費補助金 総合研究報告書概要版 
 http://www.env.go.jp/recycle/waste_tech/kagaku/h19/kagaku/data/K1940.pdf

研究課題名 = 循環廃棄過程を含めた水銀の排出インベントリーと排出削減に関する研究 

研究番号 = K1714、K1852、K1940 
  
国庫補助金精算所要額(円)=44,997,000  
研究期間(西暦)=2005-2007  
代表研究者名=貴田晶子(国立環境研究所) 
共同研究者名=酒井伸一(京都大学)、守富寛(岐阜大学)、高岡昌輝(京都大学)、平井康宏(京都大学)、 
高橋史武(九州大学)、安田憲二(国立環境研究所)

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「(1) 水銀の大気排出源と排出係数及び排出インベントリー水銀の大気排出量(E)の推定には、活動量(A)、排出係数(EF)、排ガス処理装置による排出低減効率(RE)を用いて、“E=AEF・(1REから求める方法が一般的であるが、推定精度を確保するために、3つのアプローチ(図1)によった。それらは①既往の報告値による方法、 ②実施設測定による排出係数等を用いる方法、③統計的な方法による検証である。排出源によってそれらを組み合わせて排出量推定を行った。活動量は2002年度データを基本とした。インベントリーは全水銀を対象としたが、化学形態別のインベントリーは実施設調査及びラボスケール燃焼実験から得られた割合及び既報の割合をもとに推定した。一般廃棄物焼却施設において、ダイオキシン対策による排ガス処理装置の更新が、排ガスからの水銀除去に対しても副次的に大きく寄与していることから、他の排出セクションへの対象を拡大し、排出量のトレンドを探ることとし、過去16年間(19902006)における水銀排出量の経年変化を推定した。 

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(2) 発生源の実施設調査、各種廃棄物のラボスケール燃焼設備による実験、及び原燃料の詳細分析による排出係数の精緻化 
インベントリーに必要な排出係数を求めるために、下水汚泥焼却3施設、一般廃棄物焼却及び溶融の1施設医療廃棄物焼却2施設、シュレッダーダスト焼却1施設、火葬場1施設、及び蛍光管破砕の1施設において、形態別水銀連続分析装置とJIS法による測定を行い、発生量と環境排出量の推定を行った 
各種廃棄物のラボスケール燃焼設備を用いた形態別水銀排出量の推定として、廃棄物として、廃プラスチック、木くず(以上2種類は建設系廃棄物から採取)、廃家電・廃車シュレッダーダストについて、2kg/Hの燃焼設備を用いて、形態別水銀連続分析装置とJIS法による測定を行い、発生量と環境排出量の推定を行った。また実施設調査が困難な鉄鋼・製鉄業については、原燃料の詳細分析によるからの最大排出量推定を見積もった。鉄鉱石54サンプル、石炭33試料(原料炭24、微粉炭(吹込炭、PC9)の測定を行い、排出ポテンシャルを求めた。

(略)
p9
結論=水銀の大気排出インベントリー(2002年)を完成させた。特に国内で寄与が大きいと考えられる排出源については、実施設測定や燃焼実験によって、排出係数及び環境排出量の精度を向上させた。その結果排出量として21~28トン/年を得た。海外で報告された日本の水銀の大気排出量144トン/年よりも110トン少ない。これを欧州、アメリカ、中国における水銀の大気インベントリーを比較すると、一人当たりの排出量としてはアメリカ・中国より少なく、イギリスと同等か若干高い値であった。水銀の形態別排出量を推定し、全水銀の推定量28トンのうち、Hg0が14.5トン、Hg2+が12.4トン、p-Hgが1.1トンと見積った。セメント製造では、既報の排出係数、実施設測定値、及び排出ポテンシャルと統計的に検証した排出低減効率を用いて排出量を推定した結果、妥当な推定排出量を提示していることを確認した。1990年以降の排出量トレンドは35トン/年から26トンと減少後29トンに漸増していることを示した。実施設調査では、日本の唯一報告された医療廃棄物焼却の調査による排出係数は海外諸国よりかなり小さい。本研究の調査結果からその値が正しいことを確認した。水銀のサブスタンスフローを作成し、国内需要量 
10-20トン/年に対して回収水銀量が80トンと多いことを示した。現在の使用製品では使用量の多い蛍光管について、その蛍光管のライフサイクル挙動から、大気排出量を見積もり、環境動態モデルを用いて水銀摂取量を推定した。更に環境動態モデルについては、USEPAのモデルを基本として形態別に排出された水銀の動態を推定した。排出持の形態によって、時間的(10年、100年等)、空間的(局所、日本、世界)な移動により、最終的にヒトが摂食する割合として示した。大気排出時の累積的な水銀の摂取比率は、Hg(0)排出時で約0.5%、Hg(II)排出時で約0.4%と推定された。また、排出後100年までの累積の摂取比率はいずれも0.1%程度と試算され、影響が長期間にわたって継続することが示唆された。排出後10年までの累積摂取比率は、Hg(II) 排出の方がHg(0)より早期に影響が出ると評価され、曝露の生じる地域は、Hg(0) 排出時よりもHg(II) 排出時の方が局所的になると評価された。」
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